表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうも、前世で殺戮の魔道具を作っていた子爵令嬢です。※Web版  作者: 優木凛々
第一部 子爵令嬢、婚約破棄騒動に介入する
10/47

10.【Another Side】王都のティーサロンにて


本日3話目です。

 

 クロエが隣国へ旅立った、数日後の王都。


 石造りの背の高い建物が並ぶ中心街にある、洒落たティーサロンの中にある、

 マホガニーの家具が並んだ広々とした個室にて。


 ピンク色のふわふわ髪の娘と、目立たないが上質そうな服を着た三人の青年が、丸いテーブルを囲んでお茶を飲んでいた。


 娘は、コンスタンスを嘘で陥れようとしたプリシラ・ライリューゲ男爵令嬢。

 青年三人は、金髪碧眼のナロウ王子と、その側近、眼鏡の青年と、大柄で筋肉質な青年だ。



 眼鏡の青年が、高価そうなティーカップを上品に置くと、申し訳なさそうに頭を下げた。



「あらゆる場所を探したのですが、クロエ・マドネスは見つかりませんでした。どうやら数日前に王都を出たようです」



 ナロウ王子が眉をひそめた。



「それは確かなのか」


「はい、調べた者の話だと、彼女の兄のテオドールが、『どこに行ったかは分からないが、妹が王都にいないことだけは確かだ』と断言したそうです」



 ナロウ王子は、忌々しそうに舌打ちした。



「この手際の良さはソリディド公爵家の仕業だな。先手を打たれた」



 そして、隣に座っているプリシラの頭をなでた。



「すまない。聞いての通り、クロエ・マドネスは王都を出てしまったようだ」



 プリシラが両手を胸の前で組むと、潤んだ目で王子を見上げた。



「ええー、残念です、せっかくちゃんとお話しして、誤解を解きたかったのに……」


「そうだな。『北の廃校舎』と『東の廃校舎』を間違えただけだというのに、あんな言い方、許せない」


「クロエさんは悪くないです! わたしが言い間違えたばっかりに……」



 涙をこぼすプリシラを、どこか虚ろな目で同情するように見る青年三人。


 そのとき、ノックの音がして、にこやかに笑う恰幅のよい貴族男性が入ってきた。



「失礼いたします」



 貴族男性を見て、青年三人が笑顔で立ち上がる。


 ナロウ王子が嬉しそうに両手を広げた。



「ライリューゲ男爵ではないか! 邪魔などではない、座ってくれ!」



 それは、このティーサロンの持ち主でもあり、プリシラの父親でもあるライリューゲ男爵であった。

 彼は恭しくお辞儀をすると、にっこり笑った。



「ありがとうございます、殿下。ですが、若い人たちの中に入るなど、無粋な真似はできません」


「なにを言う、貴公と私の仲ではないか。そうそう、貴公からもらった茶葉、母上にも非常に好評であったぞ!」


「そうでしたか、それは光栄でございます」



 ニコニコしながら揉み手をする男爵に、眼鏡の青年が頭を下げた。



「男爵、ご助力感謝いたします。あなたがいなければ、我らは周囲の者の反対を受けて、今日この店に来ることすらできなかったでしょう」



 ライリューゲ男爵はニコニコと笑った。



「いえいえ、大した話ではございません。私はただ単にお茶にお招きして、お話しさせていただいただけですよ」



 そして、何気ない風に口を開いた。



「そういえば、でたらめな証言をした娘が見つかっていないそうですね」


「ああ、クロエ・マドネスか。先ほど話していたところだ。どうやら王都を出たらしい」


「そうですか……。残念ですなあ、魔道具の天才と聞いていたので、ぜひ一度話をしてみたいと思っていたのですが」



 ナロウ王子が鷹揚にうなずいた。



「我らが捜しているのだ。王都にいなくとも、直に見つかる。男爵とも会わせようじゃないか」


「それは楽しみでございます。見つかった暁には、ぜひともご一報ください」



 ニコニコ笑う男爵。そして、ふと心配そうな顔をした。



「あまり長くなると、ご家族に心配されますぞ。そろそろお戻りになった方が宜しいかと」


「……そうだな、名残惜しいが、そうしよう」



 残念そうな王子。



「ああ、私たちは、このティーサロンがすっかり気に入ってしまいました」


「茶も美味いし、ここに来ると落ち着くしな!」



 眼鏡の側近と、大柄な側近も口々に言う。


 それは光栄です、とニコニコする男爵。

 廊下に出て、部屋のドアを押さえながら、頭を下げた。



「表で馬車を待たせております。足元にお気を付けて」



 四人が、次はいつ集まるかと話をしながら出ていく。


 若者たちが立ち去ったあと、男爵は、笑顔を張り付けたまま頭を上げると、ゆっくりとドアを閉めた。






誤字脱字ありがとうございます! 大変助かっております。


本日は、あと1話投稿します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓5月30日書籍発売!『ブチ切れた公爵令嬢、勢いで悪魔を召喚してしまう』
お手に取って頂けると嬉しいです(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ。:.゜ஐ⋆*

★各書店サイトはこちら★ 【Amazon】  【楽天ブックス】  【Book Worker】 
ie52c7gqa2qc87vji1om5l509wjf_jrc_f2_lk_7xlx.jpg
― 新着の感想 ―
[良い点] んんん? 怪しいぞぉ? 茶に何を混ぜてんだぁ? んん? まさかアヘアヘなお茶だったり!?
[一言] うまそうなお茶みたいですね…。 宰相の息子、騎士団長の息子もか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ