進路
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『先生、やっぱり美容師って稼げないんですか?』
最近俺は、休みが合えば美容学校のOCに行ってワインディングを巻いている。やっとセンターが巻けるようになってちょっと楽しい。友達もできた。
「まあそうだね。今は少し給料も上がってきてるけどアシスタントの給料は大体18〜20万。ボーナスはもちろん無いし、社会保険も最近やっといろんなサロンが入るようになってきてるけど、健康保険、厚生年金無いところもまだ全然あるよ。都内の有名店で働きたいと思ったらお店から自転車で通える範囲内で住まないといけない場合もある。そうなってくると家賃は安くても6万円はするね。」
正直現実的な数字を言われても、しっくりこない。18ー6=12
12万もあれば生活できないか、、、??
「、、、、まあでもスタイリストになれば月30〜多くて100万以上稼ぐ人もいるから自分次第だよね。」
ってことは俺は早くスタイリストになればいいんだな!
ヨユーヨユー!!
ワインデングのブロッキングを取りながら100万円稼げるようになったらモテたりするのかな、なんてあほなことを考えていた。
「もしかしたら今はまだ、言ってることがわからないかもしれないんだけど先生は情熱には賞味期限があると思ってるんだよね。」
先生はポツリと言った。
「なりたい自分に対する熱、それを叶えようとする努力、そしてそれをサポートする体力。全ての条件が揃ったまま永遠を生きることはできないと思ってるし、その全ての条件が揃ってる時間を生きれる人もそんなに存在してないと思っている。」
「だからそれを持ってる時間は全力で向き合った方がいい。それがのちの自分の財産になる。お金の話はあまりしたくは無いけど、もちろん年収にも繋がる。特に、美容師という仕事は全てを賭ける価値がある、、とは思う。」
先生の顔を見た。
『先生、そこまで言い切るのに美容師になんでならなかったんですか?』
高校3年生、俺は素直で無邪気で社会を知らない。
「美容師だったんだ。アシスタントでやめちゃったけどね。熱は持ってたんだ。でも、努力、いや、、努力も自分なりにはやったんだけどねもちろん。体力は、、、俺には足りなかったと思う。でももっと足りなかったものが俺にはあったんだろうな。」
ちょっと考えるようにして先生はしゃべるのを辞めた。
「でも美容が好きでさ、なんだかんだ。どこかで美容というものと繋がってたかったんだと思う。だからこうやって、美容学校の先生をやってる。将来美容師になる君たちのサポートと、夢を叶えるお手伝いを少しでもできたらなって。」
OCに来始めて真摯に相談に乗ってくれた先生。俺はこの田中先生という人が好きだ。それはもう、東のくそヤローの何十倍も。夢を叶えると決めて進むこの場所は、高校みたいに生徒を”子供達”という認識で話して無いように感じる。高校で聞く先生の話は”大人からの教訓”。でもここに来始めて聞く先生の話は”1人の人間へのアドバイス”のように感じる。俺はまだ高校生だけど、すごく大人になった感じがして、というより大人として認められてる感じがして、この場所が好きだった。
だからこそ。
ーーーなんだ、この人は夢を叶える前に諦めちゃった人か。
『ふぅん。』
そうなんですね。
俺は、絶対に諦めないけど。




