卒業
それからあっという間に月日が流れた。
俺は第一志望の美容学校から無事内定をもらい体育祭マジックで同い年の彼女ができしっかりと童貞も卒業した。クリスマスもバレンタインもリア充して卒業旅行にディズニー行ったりして。オカンからは彼女できた瞬間にコンドームをもらった。なんて親だ。
そして、卒業。
将来について考えてみたり、夢が決まったり。
それなりにおもしろかった高校生活だけどやっぱり物足りなかった。
またいつか会おう!なんて言って、きっともう2度と会わないかもしれない友達もたくさんいる。そのうち記憶の中から薄れてクラスメイト全員の名前なんて言えなくなる。寂しい。でもそれでいい。
「卒業おめでとう!すごく大変な生徒が多かったけど先生自身も勉強になったしいいクラスだった!」
進級したての頃の熱血さが薄れた東が誇らしそうな顔でみんなを見た。
やっぱり好きになれないところばかりだったけど、東も人間なんだな、なんて思ったあの日からちょっとだけ好きだ。
「これから先、君たちの世界は広がって、新しい環境に身を置いて新しい人たちと出会う。そんな毎日を繰り返す中できっとみんなからしたら高校生活はすぐに思い出になる。でもそれでいい。楽しかったこれまでの毎日を上書きできるくらい楽しい人生を送って、ちゃんと高校生活を”思い出”にして閉じ込めておいてほしい。その思い出の一部でいれたことを先生は誇りに思うよ。」
何かあったらすぐ連絡するように、なんて思ってもなさそうなことを言いながら最後のホームルームも終わった。
「加藤くん。」
『三浦さん。』
戦友、、の三浦さんに声をかけられてパッと見る。自由登校の間にかなり垢抜けた彼女は、もはやピアスも結んで誤魔化していたインナーカラーも何も隠さずに開放感に溢れた顔で見てきた。
「これからお互い、頑張ろうね」
みんなの寂しさにすすり泣く声をBGMにして、彼女はやっと終わった、と誇らしげにつぶやいた。
足枷がなくなった彼女は、これからどんな人生にしていくのだろう、、、
『俺も、負けないようにがんばるよ』
春が来た。