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アイガエシ  作者: LILY
10/12

進級


「じゃあ、、、加藤。これで本当にいいのか?」


夏休み前に、もう一回東のくそヤローに呼び出されて、俺は美容師という文字を書いた進路希望を叩きつけた。

前田さんの言ってることを思い出しながら、半分くらい無視して夏休みに入った。


夏休みはバイト、OC、たまに遊び。あっという間に終わった。夏休み明けたらすぐにAO入試。夏休み前の応募もあったけど東がめんどくさそうで辞めた。例年だと夏のおかげでみんな黒くなってるかで夏をどれだけ楽しんだかがわかるのに、受験勉強のせいかみんな全然焼けてなかった。


「三浦。来い」


新学期早々呼び出される三浦さん。いつになく怒ってる表情の東。


「三浦さんまたなんかやらかしたのかね」


順平が興味なさそうにスマホから目を離すこともなく言った。


『んーーー、、、わり、トイレ行ってくる』


別に、気になったわけじゃない。でもなんというか、、、少しの気持ちをわかり合おうとしたよしみというかなんというか、、、

決して野次馬というわけではない。


「お前!!!まずはいうことあるだろう!!!!!」


おーおー、、、廊下ですごいボリュームの声。


「、、、、心当たりありません」


「進路!!!!!」


「、、、、」


進路、、、確か三浦さんは行きたい学校のAO入試を学校側から止められてたはず


「お前が勝手に願書送って勝手に受けて合格内定もらったのはもうわかってるから」


!?


「あぁ、、、だって先生に止められてたから。親でもあるまいし私の進路に先生が関与する理由なく無いですか?」


勝手にって、、、いや、、それにしても、、、

すごい人だな相変わらず。


「、、、100歩譲ってもう勝手に受けたのはいいとしよう。でも合格したにしろ報告はするべきじゃ無いのか?流石に」


「なんでですか?わかってくれようともしてないのに?受けたいって言って意味分かんない理由で止められて、この先の私の人生の責任をとってくれるわけでも無いのに偉そうにして?学校のルールを守れてない私が確かに悪いかもしれないけどだからと言ってこの先の私の人生の足を引っ張ってるだけなのに口を開けば『お前のためだから』お前のためじゃなくて自分の評価のためでしょ?学校の評判のためでしょ?私が何をどう思ってこういう行動してるかなんて分かんないじゃんだって。」


この角度から三浦さんの顔は見えないけど、東の気まずそうな顔だけはわかる。


「そこは、、、すまん。お前の全てをわかってあげることはできない。でももちろん先生にも立場があるのは事実。わかってあげたくても言わなきゃいけないこともあるし、お前もわかって欲しいならやるべきことがある。学校の評判を大事にしなきゃいけない理由は、もしかしたら知らない間に知らない誰か他の生徒の進路を狭める可能性があるからだよ。有名大学に進学したい人もいれば、地域の学校に進学する人もいる。そしてもちろん、地域の企業に就職する人もいる。もし何かあった時に選択を減らしてしまうのは良くない。お前がその格好にプライドを持ってるのはわかるけど、その格好じゃなくても美容学校には受かるだろう。先生はいろんな人の夢を応援しなきゃいけない。」


「それに先生も人間で、君たち生徒と別に守るものがある。自分よりも大切な家族がいる。だから先生自身も先生を守らなきゃいけない。」


俺に意気揚々と進路を批判してきた東の顔を思い出した。

何回思い出してもムカつくけど東は東なりの考えで言ってたのかな、、、


「、、、それは申し訳ないと思ってます、、、私はプライドを持って好きな格好をしてるんじゃない。こういう自分が好きだからしてるっていうのは、、もちろんあるけど、、、コンプレックスです。この自分じゃないと外に出れない。人の目に映るのが怖い。でもそんなことをいってるんじゃなくて、、いやもうそんなことはどうでもよくて、、、もうわかって欲しいとすら思ってもなくて、、、、」


いつも自信満々で、先生にもものおじすることなく話す三浦さんが珍しくしどろもどろに口を開く。


「もう整形したい、、、ブスがメイクするのは許されなくて元々美人なら何もしなくてもいいわけなのに、、、なんで好きな自分になりたいだけなのにこんなに色々言われなきゃいけないの?夢すら応援されなくて、、応援されなくてもいい、邪魔されて。じゃあ自分で納得できるように行動してまた責められて。」


顔は見えないけど、多分泣いてる。


「、、、応援はしてるよ。だから成績証明書も渡しただろ?でもお前も組織にいるからには自分だけで生きてるわけじゃ無いんだから譲歩して欲しいなら譲歩しないといけなくないか?」


「、、、はい、すみません。」


「すまんけど俺は立場上みんなの前でお前のことを怒るよ。これは辞められない。俺も俺のことを守らなきゃならない。」


「、、、はい。すみません。」


「、、、まあひとまず、、、合格おめでとう」


「、、、ありがとうございます。」



会話が終わったのを見て、俺は急いで教室に戻った。

その日三浦さんは戻ってこなかった。








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