藍返し
夏。溶けるような日差しが教室の窓から入ってくる。2年生になって仲良くなった龍弥とスマホゲームをしながら放課後ダラダラするのに最近俺たちはハマっている。
「藍生は進路どうすんの?」
問いかけつつも、お互いスマホから目を離すことはない。
『ん〜』
高校生になってからというもの将来について考える機会がめちゃくちゃ増えた。18歳で将来決めるなんて18歳の選択重過ぎだろ。普通に。
『なりたいものなんてねぇよな〜なんか勉強とかしなくていいもんねぇのかな、、、』
つか18歳で選択するわけじゃなくて16歳で方向性固めて18歳になる頃には各々の進路に向かって挑まないといけないわけだし。なお若いとか無理だろ。俺らこの世に生まれて16年だぞ。生まれたてだわ。
「ギャハハ。なりたいものはないけど勉強するのも嫌ってもうこの先終わりじゃん。適当に就職すっべ??」
『18で社会に出るとか無理。遊びてぇし、お金欲しいし、あーーーなんかないかな』
「ま、適当な大学行くのが無難っしょ。俺らレベルでも受かる感じの。大学生なんて人生の夏休みって言われてるくらいだしさ。サクッと勉強してるフリしてチャチャっと受験終わらせて遊ぼうぜ。」
『ん〜そうだよな、、、、』
そうだよな。そうなんだけどさ。
ーーーーー
将来、、か。
やりたいことはない。でもどうせ人生のほとんどを費やすならなんか面白いことやりたい、、よな。
”なりたい職業ランキング”
スマホをスクロールさせる。
”1位 エンジニア”
いや、無理だろ、、、理数の脳みそねぇよ。俺みたいにチャランポランに生きてるやつ大抵文系だぞ、、、なし。
”2位 公務員”
無難だよな、、、無難、、なんだよな。でももうちょっと、、こう、、、
”3位 学校の先生 4位 看護師 5位 医者 6位 薬剤師”
いや、、、世の中頭よすぎ。どれもピンとこねぇ、、、
やっぱ俺みたいな無難なタイプは大学行って適当に遊んで就活して一般企業に入って、、、みたいな感じがいいのかな、、、
当たり障りないんだよな俺って。容量はいいんだけど不器用というか、、、中学までやってたサッカーも上手いけど群を抜いてはないし、勉強も馬鹿ではないけど頭良くもないというか、、、普通よりちょっと上。努力しても、しなくても、いつもそんな感じ。
「藍生〜ご飯よ〜」
母親の呼ぶ声が聞こえてため息を吐きながらスマホを閉じた。