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第83話 新しい約束

いつもこの小説を読んでいただきまして誠にありがとうございます。


大変申し訳ないのですが、投稿のストックが切れたのでこれからは2〜3日に一回の投稿になります。できる限りは2日に一回は投稿するように致しますので、そのままお付き合いいただけますと幸いです。


 王城での出来事から1週間後、俺は1人で第1工場のモラムさんの墓の前に来ていた。すでにアランさんとカーソンさんのお墓には寄ってきており、モラムさんのお墓が最後である。


「どうせ花なんかよりも酒を持ってこいって言うだろうからちゃんとお酒の方を持ってきたよ」


 モラムさんのお墓にお酒を備える。アランさんとカーソンのお墓には家族も来るから供えるのはお花にしておいたが、モラムさんはどうせ酒がいいと言うだろうからお酒を供えた。


「あの襲撃からもう1ヶ月か。今日はいろいろと一段落したから報告しに来ましたよ」


 あれからいろいろな事があった。


 まずはドルネルのことについてだ。これが目下一番の問題なのだが、なんとドルネルは城で拘束されたその日のうちに牢屋の中で殺されてしまった。翌日、つまりは俺達が城に行った次の日に城から連絡が入った。さすがにこれにはみんな衝撃を覚えた。


 この国の中心である王城の牢屋、もちろんそのセキュリティは並大抵のものではないと聞いた。そんな中、牢屋に入れられた初日に監視をしている人は一人も殺さずにドルネルだけを殺す事ができるなんて、敵はどれほど強大なやつなのか想像もつかない。


 死因は毒殺でやつの腕に真新しい傷があったことから、毒のある刃物で斬られたことが原因であるとされた。ちなみに牢屋への侵入はアルゼさんやリールさんでも無理だと言っていた。さすがに試した事がある訳ではないとは思うがな。


 そしてドルネルが殺されたことにより、ドルネルの裏に更に首謀者がいる可能性が非常に高くなった。屋敷のみんなと話し合った結果、あそこでドルネルが話すのを止めたファウラー様があやしいということで調査をしている。




「でもみんなの仇はほとんど取れたといってもいいかな」


 まだこの襲撃の裏に首謀者がいる可能性は高そうだが、ドルネルが今回の襲撃の全ての実行犯である事がほぼ確定した。


 ドルネルが殺された次の日、やつの屋敷を憲兵とアルゼさんとリールさんが調べたところ、今回の襲撃に関する証拠が山ほど出てきた。また、ドルネルの側近やドルネルが死んだことで自由になった奴隷達の証言から、ルーゼルを利用してアルガン家を襲っていたことは確定した。


 いくら黒幕がいたとしても、たった半日であれだけの偽の証拠や証言は準備できないだろう。そして黒幕が関与したことについては何ひとつ分かっていない。よっぽど証拠の隠滅が上手いのか、ほとんど関与していないのかわからないが、本当にドルネルを唆したやつがいるのかすら疑わしいほど何も見つかっていない。




「でもここからは良いニュースですよ」


 まずドルネルが死んだことにより解放された奴隷達はそのまま解放されることとなった。確認をしたところ、ドルネルの屋敷で働いていた奴隷に元犯罪奴隷はいなかったため、解放しても問題ないという結論になったそうだ。


 当然行く先のない人達がほとんどだったため、人手が欲しいアルガン家で雇うことになった。もちろん、奴隷とはいえ、元はドルネルの下で働いていた奴隷だからしばらくは重要な役職にはつけられないが、それでもやつの下にいた時よりもまともな生活ができることは間違いない。




「あとは工場が明日から再開されます。モラムさん達が命をかけてみんなを守ってくれたおかげです」


 閉鎖していた第1工場の修理と警備の強化がようやく終わり、明日からガラナさんやルイスやローニー達はここへ戻ってくる。もちろん警備は大幅に強化されており、たとえ今回の襲撃の倍の規模であったとしても余裕で防げる計算となっているらしい。




「そしてこれが一番いいニュースです」


 変異種討伐の俺の褒賞ということで数日前に奴隷制度による話し合いが行われた。国王様や宰相様、3人の領主様や上流貴族で現在の奴隷制度についての問題点を話し合ったそうだ。


 その結果、さすがに奴隷制度が即座に廃止するということまではなかったが、現状の奴隷制度についての見直しが入った。


 大きな変更点は主に二つ。一つ目は全ての奴隷商で奴隷契約を行う際に、犯罪行為の禁止が義務付けられることになった。主人への攻撃禁止や逃亡禁止と同じで自動的に発動するので、例え主人が命令したとしても、犯罪行為を行おうとした瞬間に奴隷紋が発動することになる。


 これに関しては今すでに奴隷となっているものには適用されず、新しく奴隷契約を行う者に対して行われることになる。


 そして二つ目は奴隷への過剰な虐待の禁止である。これに関してはまだ具体的にどこまで制限をするか難しいところであるが、少なくとも命に関わるような罰を与えることは禁止された。また、もしも奴隷を殺してしまった場合には主人が罰を受けることとなる。


 というよりも今までは所有している奴隷を殺してしまったとしても、その主人が罰を受けないというのがそもそもおかしい。完全に奴隷が物として扱われていた証拠である。


 残念ながら解放される期限は有限にならなかった。そして奴隷商が身元のはっきりとしない者からの奴隷の売買制限というのも難しいようだ。この世界にははっきりとした戸籍や奴隷の記録のようなものがないので、正式な身元を確認する手段がないというのが現状である。少なくとも国民の戸籍とかを整備しないと難しそうだ。


 それでも以前と比べれば奴隷の扱いは格段に改善されたと思う。


「これがもっと前からあれば、みんなが死ぬことはなかったのにな」


 今更言ってもしょうがないことだが、もし奴隷契約時に犯罪行為の禁止がすでにあれば、今回のような事態は起きなかっただろう。


 いや、今回のような出来事があったからこそ、奴隷制度の見直しが入ったのだ。3人の命と襲撃に参加させられたダラーさん達奴隷の命が、この国の奴隷制度の在り方を少し変えたのだと思うと、悲しくもあるが、少しだけ誇らしくも思える。




「本当に大勢の人がドルネルを追いつめるのに力を貸してくれたんだ。俺自身の手でみんなの仇を取ることができなかったのは残念だけど、少なくともみんなの力のおかげでモラムさん達の仇を取ることはできたと思う。


 もちろん更に首謀者がいるというならば、必ずそいつも地獄に送ってやる。こっちはまだもう少し時間がかかりそうだから、何か進展があったらまた報告に来ます。


 明日からはみんなこっちに戻ってくるからモラムさんも寂しくないですよ。


 そういえばガラナさんもローニーもこの国で一番うまい酒を作るって息巻いていましたね。俺がみんなで作ったお酒をうまいと思えるようになったら、その時はここでみんなで一晩中飲み明かしましょうね!新しい約束です!」


 モラムさんと交わした約束が守られることはなかった。だから新しい約束だ。みんなでこの国で一番うまいお酒を作って、俺が酒を飲めるようになったら、また前に工場で宴会をした時のように乾杯しましょうね。


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