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第81話 奴隷制度の在り方


「国王様、奴隷たる身ですがよろしいでしょうか?」


「おお、何か希望があるのか?よいぞ、とりあえず申してみよ」


「はっ。国王様にこの国の奴隷制度につきまして、御一考していただくことを私の褒賞としていただくことは可能でしょうか?」


「ふむ、奴隷制度の一考とはどういうことじゃ?」


「はっ。私は遥か遠くの国からこの国にやってきたところを盗賊達に攫われて奴隷商に売られてしまいました。そこでの扱いは散々なものです。ろくに食べ物も与えられず、汚くて不衛生な牢屋に下着一枚で入れられ、少しでも言うことを聞かなければ、鞭による罰を与えられました」


 まだエレナお嬢様の奴隷紋の力で国王様に嘘はつけない。元の世界の日本もはるか遠くの国で間違いではないはずだ。


「幸いなことに私はアルガン様に買われ、何不自由のない幸せな生活を送ることができておりますが、私のような例は非常に稀です。ひどい主人に買われてしまえば、奴隷商以上に扱いが悪く、何かあればすぐに奴隷紋による罰を与えられ、死ぬまで働かされ続けることもよくあると聞いております」


 あの時の奴隷商での扱いは本当に辛かった。俺はエレナお嬢様に買われたからよかったが、あのドルネルみたいなやつに買われてしまった奴隷はそれこそ、その時点で人生が終了してしまう。


「そして今回のアルガン家への襲撃に対しても多くの奴隷が無理矢理参加させられておりました。それも先程フローレン様が暴いた事実によりますと、その半数の奴隷は罪もなく捕らえられた村人であるというではありませんか」


 俺やアルゼさん達が斬った奴隷の中には元は罪のない者も大勢いたということを知ると少し思うところはある。


「もちろん、すぐに奴隷制度を廃止するということなどできないこともわかっております。ですが、今一度この国の奴隷制度を見直すことはできないでしょうか?


 例えば、奴隷契約をする際に期間を定めたり、奴隷商は身元がはっきりとしない盗賊のような者から奴隷を買えないようにしたり、そして何より犯罪に加担させることができないようにする必要があるかと思います。以上のことをもう一度みなさんで話し合う機会を作っていただくこと以上に私が望むことはございません」


 もう二度と、少なくとも奴隷を使っての襲撃などさせないようにしなければならない。奴隷狩りにあった農民の人達やダラーさんのような人達を絶対に出してはいけない。


「……なるほどのう。確かに奴隷使った犯罪は今までもあったが、これほど規模の大きいものは初めてじゃな。よかろう、この件について一度皆で話し合う機会を持とうではないか。それを持ってそなたの褒賞とする!」


「はっ、ありがたき幸せ!」


 よかった、俺が望んでいた一番の要求が通ってくれた。もちろん現状ではすぐに奴隷制度の廃止ということは非常に難しいだろう。すでに買われてしまった奴隷の人達も大勢いるし、今奴隷がいなくなれば経済が成り立たなくなるかもしれない。


 それでも物のように扱われる、使い潰されてしまう今の奴隷の状況が少しだけでも向上することを願いたい。


「それではこれにて変異種の討伐に対する功労の儀を終える。3人とも下がってよいぞ」


「「「はっ!」」」


 そのあとは俺も2人と同じように水晶をもらい、無事に功労の儀が終わった。そしてそのあとは国王様に領主様や貴族から様々な報告があり、そしてその全て終わったようだ。


「それではこれにて閉会とする。皆のもの半年間ご苦労であった。今後ともよろしく頼むぞ」


「「「「はっ!」」」」


 国王様と宰相が大広間から退出する。






「ふう〜」


 自然とため息が出た。なんとか無事に乗り切れたようだ。ドルネルを捕まえることができ、奴隷制度のことについても、今一度話し合いが行われるという理想的な結果に終わってくれた。


 あとはドルネルが言っていた黒幕が嘘であり、無事に死罪となることを祈ろう。そして奴隷制度の廃止に少しでも近付ければいいと思う。


「ユウキ、お疲れさま!」


 エレナお嬢様とアルゼさんも前のほうからこちらにやってきた。どうやら国王様が退出したことにより流れ解散となったようだ。すぐに帰る者、その場に残り周りにいた人達と談笑を始める者、それぞれだった。領主の1人であるファウラー様もすぐに退席したようだ。


「はい!エレナお嬢様もお疲れさまでした。ドルネルとの応答、大変お見事でした」


 いくら事前に打ち合わせをしていたとはいえ、まだ幼いエレナお嬢様が国王様の前でドルネルとあれだけ渡り合っていたのだ。国王様への報告も全く問題なかったし、これでこの前の領主の方が良かったなどと指を指されることはないだろう。


「そんなことないわよ。さすがにものすごく緊張したわ!ユウキも国王様にしっかりと想いを伝えられていたじゃない」


「いえ、間違いなくエレナお嬢様以上に緊張していましたよ。それに国王様がとても優しそうな人で本当によかったです。奴隷である俺にまで気を遣ってくれていましたよ」


「そうね、私も父から領地を引き継いだ時にとても気を遣っていただいたわ。父からも、あの国王様になってから今まで以上に国が豊かになったと聞いているわ」


 どうやら有能な国王様でもあるらしい。たまに漫画やアニメなどで見る、自分さえよければそれでいい自分勝手な王様じゃなくて本当によかった。


「アルガン様、この度は大変でしたな。亡くなった3人にお悔やみを申し上げます」


「これはガードナー様!お心遣いありがとうございます。そしてこの度はアルガン家へのご協力、誠にありがとうございました」


 冒険者ギルドマスターのガードナーさんがこちらにやってきたようだ。冒険者ギルドには不審な魔法使いの調査依頼についてを調べてもらっていた。それに商業ギルドのランディさんと一緒にルーゼルやドルネルへの金の流れも調べてくれたようだ。


「ガッハッハ、冒険者ギルドも変異種の討伐戦ではアルガン家の者に世話になったからな、これでおあいこだ」


「ガードナー様、本当にありがとうございます。おかげさまでドルネルのやつを捕まえることができました」


「おう、ユウキか!なあに、変異種の時はこっちが助けてもらったから気にしないでくれ。おかげで俺まで褒賞をもらえることになった。王城とかはガラじゃねえから副ギルドマスターに任せたかったんだが、さすがに断られてしまってな」


 いや、そりゃ断られるだろ!というか国王様からの呼び出しに代理人をよこそうとしちゃ駄目だろ。副ギルマスも本当に大変だな。


「……相変わらずだな、ガードナー。お前は昔から変わっとらん」


「おう、アルゼか。そういうお前はだいぶ変わっちまったな。今じゃあ立派な執事をやってるいようじゃねえか」


 えっ!?なに、アルゼさんはギルドマスターと知り合いなのか?そういえば最初に会った時にガードナーさんはアルゼさんのことを知っている感じだったか。


「えっと、ガードナー様はアルゼ様とお知り合いなのでしょうか?」


 思わず聞いてしまった。


「ああ。なんだ話してなかったのか?アルゼは俺が現役で冒険者をしていた時に組んでいたパーティーメンバーだ」


「冒険者!?」


「当時は俺以上にギラギラして周りの奴と喧嘩ばっかりしていたな。いきなり仕えるべき主人を見つけたとか言いだして、冒険者を引退して領主に仕えると言った時には俺ら全員で必死で止めたんだぞ」


 アルゼさんが冒険者!?初耳なんだけど!それで執事なのにあんなに強かったのか。


「だがまあ、今では立派に領主の執事をやっていると聞いている。知ってるかユウキ、こいつはまだ若い頃なんかは……」

 

「おっと、そこまでだ!これ以上話すならば私も貴様の昔の事を話すしかなくなる」


「おっと、冗談、冗談!まあ何にせよ主人が代わっても元気そうで何よりだ。それじゃあ俺は副ギルマスにさっさと戻るように言われているから帰るとするか。アルガン様、また何かあったら冒険者ギルドも頼ってくれていいからな」


「ええ!ガードナー様、本当にありがとうございました。また改めてお礼に参りますね」


「おうよ、その時はあのケーキってやつも一緒に持ってきてくれると嬉しいぜ。ありゃあ本当にうまかったぜ」


「ふふ、忘れずにお持ちしますね!」


 そう言いながらガードナーさんは冒険者ギルドに帰っていった。


 しかしアルゼさんの冒険者時代のことをもっと聞きたかったな。こんど冒険者ギルドに行ったら聞いてみよう。


「ふふ、じいがガードナー様と知り合いなのは知っていたけれど、よっぽど仲が良かったのね」


「……たんなる腐れ縁でございますよ。私もまさかやつがギルドマスターになると思ってもいませんでしたがね」


 どうやら二人の仲はだいぶよかったみたいだな。


「アルガン様、少しよろしいでしょうか?」


 おっと、今度はローラン様がこちらに来たようだ。ルーさんもラウルさんも一緒だ。


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

執筆の励みとなりますのでブックマークの登録や広告下にある☆☆☆☆☆での評価をいただけますと幸いです。

誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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