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第72話 情報集め


「………………」


 気がつくともう何度目か分からないけどあの白い部屋にいた。今日は普通に寝ていたから死にかけたというわけではないはずだ。ちょうどいい、俺も神様に会いたかったところだ。


「今回は残念だったね、お悔やみを言わせてもらうよ」


 いつものように後ろから声をかけられる。振り向くとやはりそこにはちゃぶ台とそこに座る幼女の姿があった。


「……いえ、せっかく神様から忠告をいただいたのに役に立てることができませんでした」


「いやいや、ボクの方こそ具体的なことを言えなくてごめんね。それに勇樹くんは精一杯やったと思うよ。あれだけの規模の襲撃に対して被害がたった3人だけなんてすごいと思うよ」


 さすがに今日は空気を読んでか、全くふざけることなく俺を慰めてくれている。


「それでも俺がもう少し何かできたら3人も助けられたかもしれないです。それで神様、ひとつだけどうしても教えてほしいことがあります!」


「人を蘇らす方法ならないよ」


「………………」


 お見通しってわけか。


「この世界には伝説級の魔法や伝説級の秘薬みたいなものはあるけど、人を蘇らせることができるものはないんだよ。


 あったとしてもそれらはすべて偽物だ。既に3人の命はなく、3人が生き返る方法はない」


「そうですか……」


 魔法が使えるファンタジーな世界。もしかしたら3人の命を蘇らせることができる魔法か秘薬のようなものがあるのではないかと思ったが、そんなものはないらしい。神様が言うんだ、間違いはないのだろう。


「それと駄目だとは思うんですけど、今回の襲撃者の……」


「もちろん今回の襲撃者に関しての情報は言うことはできない」


「………………」


 やっぱりすべてお見通しか。こっちは前回教えてくれなかったから多分駄目だとは思っていたけど。


「ごめんね、こっちにも規則とかいろいろあって具体的なことは言えないんだ」


「いえ、さっきの質問だけでも教えてくれてありがとうございます」


「とはいえ、勇樹くんがずっとこのままの調子だと君の世界の漫画やゲームについて楽しく語れないからね。アドバイスというかボクの単なる独り言なんだけど、君達が探ってることをそのまま続ければいいんじゃないかな、と個神的には思うよ」


「っ!!」


 ルーゼルが自殺したとされていて、次に俺達が追おうとしていた奴はドルネルだ。やはりあいつはこの襲撃に関係がある!言い回しが微妙なのは、神様の規則的にいろいろあるんだろう。


「神様、本当にありがとうございます!感謝します」


「いいって、いいって。アドバイスは死にかけた時だけだから一つ貸しといてあげるよ、いつかちゃんと返してね!」


 それってまた俺が死にかけるってことなんだけど!ここまで嫌な貸しというのも他にないだろう。


「いやでも、さっき神様はアドバイスじゃなくて独り言って言ってましたよね。ということはこれはアドバイスではないので貸しということにはならないですよね?」


「うっ、痛いところを突いてくるね。推理ものやドラマの犯人か詐欺師の才能があるよ」


「探偵か弁護士のほうにしてくれ!」


 確かに犯人とか詐欺師とかこういう言い逃れはうまいけどさあ、せめて追い詰める側で反対の探偵とか弁護士側の方にして欲しい。


「しょうがない、今回はボクの独り言ってことでまけておいてあげよう、明智くん。じっちゃんの名にかけて、真実はいつもひとつ!」


「混ざっとる、混ざっとる!」


 有名な某推理漫画の名言が混ざっとるわ。じっちゃんそんなこと言ってない!


「うんうん、勇樹くんはやっぱりこうでなくちゃ。それじゃあぼちぼち時間だね。たまには勇樹くんの方からボクに会いに来てくれてもいいんだぜ」


「わざわざ自分から死にかけてたまるか!」


 何度も言うが、なんでわざわざ自分から死にかけにゃあかんのじゃ!


「はは、その意気だよ。それじゃあ頑張ってね、陰ながら応援しているよ」


「はい、神様と話してて少しだけ元気が出ましたよ。本当にありがとうございました」


 いつもと同じように意識が薄れてきた。神様といつものくだらないやり取りをして少しだけ元気が出たような気がする。





 神様と話をして目が覚めた後、エレナお嬢様とアルゼ様と相談し、すぐに行動を起こした。


 まずは被害の大きかった第1工場はいったん封鎖し、従業員達は全員第2工場へ移動してもらった。さすがにこの規模の襲撃の後にすぐ次の襲撃が来ることはないと思うが、第2工場の壁と門を強化し、門番を更に雇った。


 冒険者ギルドや商業ギルドでの情報集めはアルゼさんとリールさんに任せて、俺はローラン様に会う連絡を取りつけた。みんなと話したところ、アルガン家を襲撃するメリットがないことから、ローラン様が襲撃の犯人である可能性はほぼないという結論となった。この町で情報を得るにはローラン様に聞くのが一番手っ取り早い。




「聞いたぞ、聞いたぞ、アルガン家に大規模な襲撃があったそうじゃな!だがそれもたった数人の犠牲ですんだと聞いておるぞ。なかなかやるではないか!」


 応接室に通され、ローラン様が部屋に入ってくるなり騒ぎ立てる。後ろには護衛のルーさんもいる。


 一連の襲撃については既にローラン様の耳に入っているらしい。確かに普通ならあの規模の襲撃が3人の犠牲で済んだことは僥倖とも言えるだろう。


 元の世界でもそうだが、ニュースで『大規模火災発生!死者3名』と聞くとたった3人で済んでよかった、被害は少ない方だ、などと思ってしまうが、その3人を知っている人からしたら、よくもないし少なくもない。もちろんニュースを見ていた人やローラン様に悪気がないことも分かってはいる。


「……いや、その数人は俺の親しい人達だったから」


「そっ、そうか。それは残念じゃったな……」


 さすがにローラン様も察してくれたのか、声のトーンがいくばくか落ちる。こういうところでちゃんと気を使ってくれるのは気分が落ちている俺にとってはありがたい。あるいはよっぽど俺が浮かない顔をしていたかのどちらかだ。


「そのことでローラン様にお願いがあってきました。今回のアルガン家への襲撃に関する情報が欲しいんです!」


「なるほどのう、それで妾のところに来たということか。うむ、その判断は正しいじゃろう。この街で妾以上に情報を集められるものなどおらぬじゃろう!じゃが、当然タダというわけにはいかんなあ」


「もちろんわかっています。お金なら払います、その他でも俺にできることなら何でもします!ですからどうかお願いします!」


 両手とひたいをテーブルの上に擦り付ける。俺にはプライドなんてものはないし、必要もない。


「……ああもうわかった、わかった。まったく、少しは躊躇するかと思えば、お主というやつは。もうよい、見苦しいから顔をあげよ。それと面倒だから口調もいつものに戻すのじゃ」


「……手伝ってくれるのか?」


「この街の領主が狙われたとなると妾も他人事ではないからのう。それにこうしていつも新作のケーキを持ってきてもらっているから、少しくらいは手伝ってやってもいいじゃろ」


「本当にありがとう、ローラン様!」


「べっ、別に構わん!いいから顔をあげよと言うておる。それにこれは貸しじゃからな!いつか必ず返すんじゃぞ!」


「ああ、必ず借りは返すよ!」


「ふん!」


 顔を少し赤くして顔を逸らすローラン様。こういう仕草をこの綺麗な顔でするのは、うっかり惚れてしまいそうになるからやめてほしい。見た目だけなら本当にパーフェクトなんだよな、この人。


「それで、まずはどんな状況だったか説明してみよ」


「ああ、まずは俺ともう1人が森にいた時に……」


 俺はローラン様に俺の知っている限りの情報を伝えた。


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

執筆の励みとなりますのでブックマークの登録や広告下にある☆☆☆☆☆での評価をいただけますと幸いです。

誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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