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第31話 お前はどこの料理評論家だよ


 よかった、よかった。テンプレだとあの3人が襲いかかってきてそれを助けてこの女の人とフラグが立つ流れだったからな。どんなに外見が良くてもここまで性格の悪い女はお断りだ。


「うう〜気持ち悪いのじゃ……」


「ったく、だらしないな。ほら、大通りまでは送ってやるから早く立ち上がれ」


「わっ、妾に対してなんて口の聞き方じゃ!それになぜ奴隷紋が効かぬ?」


「いや俺はあんたの奴隷じゃないし。あの場を乗り切るためにはあんたの奴隷と言ったほうが良さそうだったからな。あのまま話を合わせて謝ればあの人達は許してくれたのに面倒なことするなよ」


「ふん、妾があのような下賎な者共に頭を下げるなど死んでもごめんじゃ!貴様も妾の奴隷でなくとも誰かの奴隷じゃろう、そんな輩に礼など言えるわけがないじゃろうが!」


「……てい!」


「ふぎゃ!」


 なんかムカついたからチョップしてみた。ラブアンドピース?何それ美味しいの?


「貴様また妾に手をあげおったな!罰ごときではすまさん、死罪じゃ、絶対に死罪にしてやる!妾を誰と心得る、妾はこの街の……ふぎゃ、ふぎゃ!」


「ていっ、ていっ!」


 きゃんきゃんとやかましいので再びチョップ。


「うう〜、いい加減にせんか!許さん、貴様だけでなく躾のできていない主人にも相応の責任を……ひいっ!」


 残念だがそれだけは見逃すことはできない。俺だけでなく主人であるエレナお嬢様に危害を加えようとするならば俺も黙っているわけにはいかない。


「……それだけは取り消してもらおうか。俺ではなく、俺の主人に少しでも危害を加えようとするなら今ここでお前の口を塞ぐしか無くなる」


「うっ……わっ、わかった、わかったのじゃ。取り消す、貴様の主人には手を出さん、誓おう」


「……そうか、ならいい」


 いや口をふさぐなんてできないけどね。せいぜい記憶がなくなるまで頭をシェイクするくらいが関の山だ。


「うっ……ううっ、ひっく、ひっく」


 あっ、やべっ!やりすぎた、泣き出しちゃったよ。

薄暗い路地裏泣いている綺麗な服装をした女性とそこに立つ男。……誰がどうみても事案ですね。わかります。


「ごめん、ちょっと怖がらせすぎた!俺の主人は命の恩人で本当に感謝してるんだ。だから主人に手を出すと言われてつい殺気立ってしまったんだ。


 ほらっ、もう物騒なことは言わないし、手も出さないから泣き止んでくれって」


「うう……泣いてなんかいないもん!」


 もんって……キャラまで変わってるな。まあこっちの方が可愛らしくていいけど。


「そうか。ほらっ、家の近くまでは送って行ってやるから、なっ?」


「……さっさと案内せい」


 うん、こっちの性格悪いほうがこいつらしいな。


「かしこまりました、お嬢様」


 いろいろあったが無事に大通りの方まで戻ってこれた。このお嬢様の屋敷はこの地区の中心地にあるようだ。やっぱりかなりいいところのお嬢様だったらしい。そうだ、それならあれの味を見てもらおうか。


「そういえばお嬢様はどっかのいいところの貴族様なんだろ?」


「はっ、妾をそこいらの貴族ごときと一緒にするでない!いいか聞いて驚け、そして今までの行いを懺悔せよ!妾こそはこの街の……」


「ああ〜そういうのはもういいから。とりあえずえらいってことね、わかったわかった」


「ぐぬぬ、二度も妾の名乗りを邪魔しおって!」


「今度主人の知り合いの店で貴族用に高級なお菓子を売り出すことになってな。これが売れそうかどうかお嬢様の意見をくれないか?」


「はっ、奴隷に持たせるような菓子など貴族に売れるわけなかろう!よいじゃろう、普段は平民ごときが作ったものなど妾は口にせんが特別に味をみてやろう!」


 なんでこいつは上からいちいち人を罵倒するのかね?無駄に敵を作りそうなタイプだな。


「それじゃあこれを食べてみてくれ」


 懐にあった小さな箱から試作品を取り出す。これは試作品で俺のおやつであるとともに日中に持ち歩いても問題ないかのテストをしていたところだ。


 まあ自称かなり偉い貴族らしいしせっかくなら味を見てもらおう。それに泣かしてしまった罪滅ぼしの意味もあるな。


「……ほう、なかなかに色鮮やかじゃな。見た目は申し分ない。半透明な物の中に様様な果物が入っているようじゃ。じゃが問題は味じゃ、見た目が良い分味が悪ければ全てが台無しじゃ。ではいただこう」


 ……お前はどこの料理評論家だよ。いいところのお嬢様だから舌が肥えてそうだから頼んだんだが、大丈夫か?このあらいを作ったのは誰だあっ、とか言い出さないよな。


「……ふむ、外の半透明な物は飴じゃな。何度か食べたことがある。ほう、中にはしっとりとした果実の実か。むむっ、これはなんという甘さじゃ!そうか、外側の飴は甘さを控えめにしておりその分中の果実を大量の砂糖に漬けたのか。しかもほのかに香る酒もかなり良いものを使っておるな」


 どこの山○さんだよお前は!売れそうか売れなさそうかだけでいいんだよ!なんで一口で作り方までわかるんだよ、てかこいつ簡単に商品をコピーできそうだな。


「どうだ売れると思うか?」


「……くっ、悔しいが売れてしまうじゃろうな。味も良いしなによりも見た目が綺麗じゃ。こういったものは妾のような高貴な者たちに好まれやすい。砂糖もふんだんに使われており高級感がある」


 おおっ、この口が悪いお嬢様がここまで褒めてくれるとは思わなかった。もっと理不尽なことを言われていると思っていたから意外だ。なんだちゃんと評価してくれているしいいところあるじゃないか。


「じゃが持っているやつが最悪じゃ!顔も悪いし口も悪いし、妾に暴力を振るう。これではせっかくの菓子の味も半減以下じゃ、よって落第じゃ!」


 ……前言撤回、もう手出さないといったがやっぱり殴りたい。顔は関係ないし、そこまで悪くないはずだ!イケメンでないことは認めるが中の中くらいはあるはずだ、たぶん。


「俺の顔のことはおいといて商品としては合格ってことでいいんだな?」


「ふん、知らんな」


「……ちゃんと教えてくれたら違う味のやつをもう一つあげるぞ」


「まあ見た目も味も悪くないから問題なく売れるじゃろうな。あとはこれを入れる器にも気をつけるがよい。妾のような高貴なる者達はそのあたりも気にさわる。例えば美しき芸術品を眺めながら食事するのと貴様の顔を眺めながら食事するのは天と地の差があるじゃろ?」


 ……やっぱりこれは殴っても許されるレベルだよね?精神攻撃を受けたということで正当防衛成立するよね?


 まあ後半は理解できないが、前半は理解できる。個別包装くらいにはするつもりだったが、もっと外の箱や装飾にも力を入れるべきかもしれない。一応はいいアドバイスではあった。


「ほれちゃんと答えたぞ、さっさともう一つよこすがよい」


 ……物凄く嫌だが約束は約束か、しょうがない。


「ほら、さっきとは違うやつだ」


「どれどれ。……ふむ、今度のは果実のモレンじゃな。ほう、これは外側の飴の甘さとモレンの酸味が実にあうな。先ほどのものとは異なるがこれはこれで悪くはない」


 ふむふむ、こっちも及第点か。モレンの実は少し酸味の効いた味なのでこちらはあまり甘くつけなかったのもよかったのかもな。


「ちっ、まさか貴様のような奴隷ごときがこれほどのものを持っているとはな」


 うーん、試作品は褒められているけど、またそれか。いくらこの世界の奴隷の扱いが酷いとはいえ、さっきから奴隷のことを酷く下に見ているな。


「なあ、さっきから奴隷ごときとか平民ごときとかあんまりそういうこと言うなよな。お嬢様が偉いのはわかったけど俺らだって同じ人間なんだしやっぱりそういうのは結構傷つくぞ」


「はっ、何を言っておる。妾達貴族がいてこその平民や奴隷であろう。なぜそんな奴らに気など使わねばならん?」


「俺としては平民や奴隷あっての貴族だと思うけどな。別に貴族がいなくなっても街は問題ないけど平民や奴隷がいなくなったらすぐに立ちいかなくなるだろうし。貴族達は金はあるけど生活能力低いだろう?」


「ええい、屁理屈を言いおって!妾達は国や流通を動かしておる。細々したことになど構ってられん、それのどこが悪い!」


「いや別に悪くはないよ。自分のことしか考えていない貴族も大勢いるだろうけど、国や市民のことを真剣に考えてくれている貴族もちゃんといるだろうし、適材適所って奴だろ。ただまあ奴隷や市民がいないと国が回らないってことも理解はしておいてくれよ」


「……ふん」


 何も言い返さないのは少しくらいは思うことがあるのかな。素直に認めないのはこのお嬢様らしい。


「じゃあほら、残りの飴も全部あげるから少しだけでいいから他の奴隷や平民に優しくしてあげてくれよ。さっきも言ったけど名前を呼んであげたり労をねぎらってやるだけでだいぶ嬉しいからさ!」


「……ふん、気が向いたら気まぐれに前向きに善処してやらんこともない」


 政治家の言葉の10倍以上に信用できないな、おい!まあいいさ、このお嬢様様もこれでほんのわずかであっても奴隷や平民のことを意識してくれるだろう。奴隷解放への道はこういう些細なことからコツコツとだな。


「見つけました、お嬢様!皆さん、こちらです!」


 中央の公園までもう少しというところで執事服やらメイド服やら甲冑やらを着た集団が前方の道から走り寄ってくる。


 どうやらこのお嬢様のお付きの人達のようだ。おっと長居は無用。お偉いさんに手をあげたことがバレたらいろいろ面倒になりそうだ。


「よかった、無事にお付きの人達に合流できたようだな。それじゃあ俺はもう行くから約束ほんの少しでいいから守ってくれよ!ほら、残りの飴だ。外装も言われたとおりもっと豪華にするから買ってくれよな。

あともう一人であんな危ないところに行かないようにな」


「待て!リールとか言ったな。お前の主人の名前は何という?そこそこ名のある貴族なのだろう」


 そういえばリールさんの名前を語ってたんだっけ。さすがに迷惑がかかるかもしれないし正直にエレナお嬢様のことは言えないな。


「それは内緒だ!じゃあなお嬢様、元気でな!」


「こらまて、リール!止まらんか!」


 ここは逃げるが勝ちだ。そういえば名前聞くの忘れてた。まあもう会うこともないだろうし別にいいか。

なんだかんだで時間がかかってしまったのでその後はそのまま屋敷に戻った。


 後半はいろいろとあったけどなんだかんだでいい息抜きになった。異世界の街も楽しく回れたし、休日の大事さを改めて感じたな。さて、また休日をもらうためにも明日からまた頑張りますか!


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます^ ^


【評価】と【ブックマーク】を何卒よろしくお願いしますm(_ _)m


誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けると非常に嬉しいです( ^ω^ )

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