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某ゾンビゲーが好きすぎてノリで書いた。α18バニラ基準
キャラがいるわけではないし二次創作ではない気がする
が、めちゃくちゃ影響を受けているから二次創作な気もする
そのへんのご指摘も歓迎します
規約違反なら消すか消される。消えてたらお察しください
ゾンビの蔓延により文明は崩壊した。廃墟となった町に一台の車が止まり、ひとりの女が出てきた。
「ここですわね」
「……何が、ここなんだ?」
「ひゃぁっ!? いつからそこに!? あなた、誰ですの!?」
「俺は四郎。この町に来たばかりだ。言葉が通じるのはありがたい。で、この町に何かあるのか? 随分と意味深な発言に聞こえたが?」
「わたくしはマリー。よろしくお願いしますわ。実は、ガス欠で車が止まってしまったのだけれど、気合を入れようかと思って。深い意味はありませんわ!」
「恥ずかしいやつだな。長生きしろよ」
「ちょ、お待ちになって! ここは協力してパンデミックを乗り切りましょう」
「嫌だよ。お前、美人だけど役に立ちそうにないもん」
「お役に立ちますわよ。それと、食事を分けてくださる?」
「前後がめちゃくちゃだぞ!? 言葉、通じてるよな!?」
金髪に青い瞳。透き通るような白い肌。上質な青のドレスを見事に着こなしている。おまけに巨乳で、尻もデカい。外国最高かよ。
場違いなお嬢様か。どこかに避難していて、物資が尽きて外に出てきたのだろう。1年前と今では世界は一変した。どう見てもお荷物さんだ。
「そんじゃ、あの家に入るか」
「あなたの家ですの? 他に生存者は……?」
「サバイバルの基本は、現地調達だ。まともな飯があることを祈るんだな」
どこぞの誰かの家は、バリケードで出入り口が塞がれている。石斧を取り出し、塞がれた木製扉を破壊し、お邪魔するとしよう。
「おいお前、これ持っとけ。松明だ」
「熱いですわ。燃えてますわ!」
「静かにしろ。ゾンビに気づかれる。それとも、お前がゾンビを倒すか?」
「荷物持ちはこのわたくしに任せて!」
「良い返事だ。腹が立つほどに」
木製棍棒を片手に、家の探索が始まる。目的は食料だから、台所を物色してさっさと家を出たいものだ。
「居ませんように居ませんように……」
「静かに……居たぞ。ゾンビだ」
台所の隅に、うなだれたまま座り込んだゾンビが居る。数は一体か。
屋内のゾンビのほとんどは寝ている。台所を漁れば、物音で気づかれてしまう。ここは静かに近づいて、奇襲攻撃をするのがいいか。
「抜き足・差し足・忍び足、ですわ――」
――カランコロン!
マリーが床に転がっていた空き缶を蹴り飛ばした。ゾンビがむくりと起き上がる。
――ア゛アァァァ……。
「ひぃぃ……怖いですわ怖いですわ!」
ゾンビが唸り声とともに、ゆっくりと歩み寄ってくる。狭い室内では、闇雲に下がったところで壁際に追い詰められてしまう。
「ふんッ!!」
ゾンビの頭を狙って、木製棍棒を振り下ろす。強い衝撃を受けたゾンビが倒れ込む。もう一度、本気の一撃を食らわせ、頭を吹き飛ばした。
「おい、終わったぞ」
目を閉じて震えていたマリーに語りかけるが、返事がない。へっぴり腰を平手打ちして気付けとした。
「さーて、何かあるかな。お前も手伝え。飯を探すんだよ」
「今日はシチューの気分ですわ! 何もないですわねぇ」
「ハズレか。こっちは水だけだ」
「はぁ、お腹が空きましたわ……」
「仕方ないやつだ。ほれ、チリ缶だ。食っていいぞ」
「辛いですわ辛いですわ!」
「人の秘蔵に文句付けやがって。探索の続きをするぞ」
歩くお荷物と一緒に探索をするのは大変だったが、ゾンビの数が少ないのが幸いした。この家の掃除は完了したと思っていいだろう。
「あら、こんなところに木箱がありますわね」
「お宝部屋だな。石斧で破壊すると中身を漁れる。俺は家の物資を片っ端から物色してくるから、お前はここで漁っていろ」
どこにゾンビがいるか分からない状態で探索するのはリスクがある。往復が楽な小さな建物は、ゾンビを片付けてから物色するのが安全だ。
「ふんふん~♪ お宝部屋、ねぇ。シャレた言い回しですわね……あぁ、四郎。ちょうど良かった。お宝の確認の時間ですわよ――」
足音がして振り返ったマリーが見たのは、ゾンビだった。
家の中を歩き回り漁っていると、マリーの悲鳴が聞こえた。急いでお宝部屋に向かう。マリーに襲いかかろうとしていたゾンビの後頭部を、木製棍棒で叩き割った。
「無事か? 感染してないか?」
「ひんひん……うぅ、ぐす……っ。怖かったですわっ!」
マリーが泣きながら抱きついてくる。あー、たまには悪くないな。温かいし、良い匂いも……んっ?
「……何の匂いだ?」
「あぅ、これは……違いますのよ! 決して、ゾンビが怖くて漏らしたわけではなくって……ぐすっ」
「まぁ、元気だせよ。代えの着替えは見つけてきたから。着替えて何もかも忘れろ」
「後ろ向いてくださる……?」
「あぁ、悪かったな。まだ物色の途中だから、着替え終わったら呼んでくれ」
「お、お待ちになって! またゾンビが来るかもしれませんわ。だから、その……近くに居て欲しくて……」
まじ? 俺にも春が来たな。背後で美女が生着替えかよ。おいおいおい、始まったなァ!?
「もう振り返ってもよろしくってよ。どうかしら……?」
ドキドキしながら振り返り、マリーを見た瞬間……盛大に吹いた。ショッキングピンクのジャケットに、くたびれた青いスカート。面白いコーデだ。
「あはははは……だっさ!」
「仕方ないでしょ! 他に服がなかったの!」
「いやいや、ぶふっ、ごめん。笑っちゃ……ぶはぁ、悪いよな……ククッ」
「バカバカ! もう知りませんわっ!」
「笑って悪かったよ。どこにも行くな」
「な、何ですの? 今更優しくされたって……」
「いや、もうすぐ夜になる。夜は危ないぞ」
昼間は歩くゾンビたちだが、夜になると一斉に走り出す。ほとんど全力疾走なので、スタミナが切れて追いつかれると終わりだ。
夜は出歩かず、屋内でじっと息を潜めて、朝を待つのがサバイバルの基本だ。
「ねぇ、せめてここから移動したいですわ。その、匂いが……」
「いや、この部屋で一夜を明かす。ここは家の中心だから、少しくらい物音を立てても外のゾンビに気づかれない。一番安全なんだよ」
「でもっ、そのっ、匂いがっ」
「死にたくなければ我慢しろ。腐敗臭に比べれば大したことない」
「うぅ……四郎のばか……」
「俺は死にたくないからここに居るが、お前はどうするんだ?」
「の、残りますわ……」
「まぁ、悪かったよ。片付けたと思ったが、まだスリーパーゾンビが残っていたとは思わなくてな」
「四郎は、このパンデミックでも冷静ですのね」
「慣れた。お前も割り切ればいい。何をしたって文句を言うやつもいないし、笑われることもないんだ」
「思いっきり笑われましたわ!」
「あれは服を笑っただけだ。漏らしたことは笑ってないぞ」
「その話は止めてくださる!?」
「あまり大声は出すな。外のゾンビに気づかれる」
「気づかれると、どうなりますの?」
「木で出来た家の壁なんて、あっという間に壊される。なだれ込んで来るぞ」
「そ、想像しただけで恐ろしい。気をつけますわ」
何事もなければ三が日くらいには終わります