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第一話 Cyber Dark

「ちょっと! 聞こえてるの? いつまでも倒れてないで起きなさい。早くしないと先生たちが駆けつけてくるわ。」


どうやら俺は先輩の太ももの上で膝枕をしてもらいながら横になり倒れていたようだった。

またとないこんな状況。しかし、先ほどまでは恐怖のあまりそれどころではなく、今になりこの状況に気付いたのだった。もっと早く気付くべきだったと、俺は後悔の念に駆られた。

しばらくこの状況を堪能したいところではあるが、先輩の焦り具合を見る限りそんな余裕はないらしい。しぶしぶ身体を起こし先輩の指示に従うことにした。


「す、すみません。先輩。助けるどころか先輩に迷惑までかけてしまって。」


運動場とは逆に出る階段を下りながら先輩に謝った。


「いいのよ。今はそんなことを話してる場合じゃないわ。逃げることが先よ。」


先輩はさっきとはうって変わって、いたって冷静な様子だった。


「ホルホルきこえてる?」

「聞こえてるぞ。なんだ?」

「ウチらを人目につかない所まで案内して! 出来れば最短ルートで。」

「分かった。」


どうやら先輩のお姉さんらしい人は聞いたこともない名前のAIに道を案内させている。


「みんなこっち!」


指示に従い、何とか学校外にある人目が着かない所まで誰にも見つからず到着することが出来た。

到着するやいなや、先輩のお姉さんらしい人は着けていた仮面を脱ぐとほっとためいきをついた。

先ほどまで仮面の下に隠れていた顔は、先輩と瓜二つであるが少し大人びており色気がある感じであった。思わず見とれそうになってしまったが、その前に気になっていた事を質問することにした。


「十朱先輩。この人が先輩のお姉さんってどうゆうことですか?」

「あなたこの状況でよくそんな質問ができるわね。さっきまで動揺してたんじゃないの? いや、逆に冷静なのかしら。」

「ちいちゃんはいっつもきついんだから~。もっと優しくてもいいんじゃない? ほら、お姉ちゃんにもさ!」

「それとこれとは別の話よ! 茶化すならお姉ちゃんは黙ってて。」


いつものことなのだろうか。俺の質問一つで姉妹喧嘩が始まってしまいそうだった。


「まあいいわ。私たちは双子の姉妹なの。私が妹でこっちが姉。」

「ウチの名前は千歳(ちとせ)! よろしくね!」


二人とも全く違う性格なので、先輩とこの人が双子の姉妹なんて到底考えられない。

が、先輩がそういうのだからそうなのだろう。少し疑いの気持ちを持ったがぐっとこらえて次の質問をした。


「じゃあ、さっきのタコみたいな足が生えた生物は何だったんですか? 初めて見たんですが。」

「そりゃあ、初めて見るでしょ。普通の人には見えないんだから。」


今度は先輩のお姉さんが答えてくれた。


「え、普通の人には見えないんですか?」

「そうだよ、普通の人には見えないよ。」


どうやら普通の人間ではあの生物を見ることが出来ないらしい。だから他の生徒も教師も普通の火事だとしか認識していなかったのか。点と点が線で繋がったような気分だった。

しかし、ここで新たな疑問が生まれたのである。


「じゃあ、なんで僕には見えたんですか?」


これはこの状況におかれたら誰しもが思うことだろう。俺は他の人間とは違うのか?なにか生まれ持った才能があるのかもしれない。生まれてこの方、特にこれといった才能や特技が無かった俺は少し希望を抱いた。


「んー。なんでだろうね。正直ウチらもなんで見えるのかはわかんないんだよね。」


先輩のお姉さんは少し困った顔で笑みを浮かべながらそう言った。しかし、俺としては何か自分が特別な存在なのではないのかという希望を持っていたので、それを確信に変えたかった。


「だったら、僕は普通じゃないってことなんでしょうか?」


すこし含みをもたせて俺は先輩のお姉さんに再び質問をした。


「んー。そういうことになっちゃうね!」


確信を得たく、必死だった俺は少し大きな声で怒鳴ってしまった。


「はっきりしてくださいよ!」


その時の俺は、両手のこぶしを強く握りしめ、体中が強張(こわば)ってしまっていた。

束の間の沈黙であった。そして、ふと我に帰る。俺は何に固執していたのだろうか。

先輩たちを困らせてしまっているじゃないか。声を荒げてしまったことを謝ろうとしたが、それを遮るように、先輩が俺たちに声を掛けてきた。


「迎えが来たみたいよ。詳しい事は向こうへ行ってから話ましょう。人目につかないとはいえ、誰に聞かれてるかも分からないし。」


黒いスタイリッシュなスポーツカーのような車が目の前に止まった。

先輩のお姉さんは運転座席に乗り、先輩は後部座席へと座った。

俺が謝るチャンスは逃してしまったようである。


「さ! のったのった!」


その場に立ち尽くしていると、先輩のお姉さんは早く乗るよう促した。正直、俺としてはまだ消化不良であったので、なぜ俺には見えるのかはっきりしてほしかったし、他にも聞きたいことがあった。しかし、先輩が言うには周りの人間に聞かれては困るような事らしいので、言われた通りに車に乗ることにした。後部座席に先輩と隣あわせに座るチャンスではあったが、俺には当然そんな度胸はなく、助手席に座ることにした。


「じゃあ、ホルホル。本部まで走らせて。」

「了解。」


先輩のお姉さんはそうつぶやくと車が走り出した。


「さっきから言ってるホルホルってのは、もしかして先輩のお姉さんのAIの名前ですか?」


うすうすAIの名前だろうと感づいてはいたが、初めて聞く名前のため確認してみた。


「そうだよ! ウチのAIの名前。小学校の時につけたんだー。可愛いでしょ!?」

「は、はい! 可愛いです!」

「ほんと~? ほんとにそう思ってる~?」


先輩のお姉さんは顔を近づけながら疑い深く俺に迫ってきた。


「ち、近いですよ!」

「ん? なにが?」


どうやら気付いていないらしい、自分の身体がいかに魅力的であるのかを。さっきまでは先輩と瓜二つな顔にばかり目が行っていたためか気付かなかったが、改めて見ると、とてもスタイルが良いのである。

簡潔に言おう胸が豊満なのである。顔がとても近いイコール、胸がとても近いのである。


「ほら、お姉ちゃん! 顔が近すぎるってこと!」


先輩も頬を赤く染めながら言っていた感じ、胸が近いことに気付いていたらしい。

しかし、遠まわしにお姉さんに伝えてくれたようだ。


「あ! ごみん! ごみん! つい、弟みたいな感じだから近づきすぎちゃった!」

「い、いえ。僕は大丈夫です……」


なんて罪深い人なんだ。健全である高校生がこんな状況で冷静さをたもてるわけがない。

俺は動揺を気付かれまいと必死であった。車内は変な空気感であったが、先輩のお姉さんはそんな空気を一切読むことはなく、いたって普通であった。一方、先輩はまだ頬赤くそめているようであった。


「あ! そういや、ウチのこと、お姉さんじゃなくて千歳でいいよ。」

「そ、そんな下の名前で呼ぶなんて。十朱先輩のこともまだ下の名前で呼んでないのにできないですよ。」

「いいのいいのそんな堅苦しいこと! しかも、その十朱先輩ってのもどっちのこと言ってるのかわからないでしょ!」


確かにその通りだった。


「じゃ、じゃあ、千歳さん。」


憧れの先輩のお姉さんを下の名前で呼ぶなんて少し恥ずかしい気持ちはあったが、思い切って呼んでみた。さっきの色々と近かったのと、年上の人を下の名前で呼ぶ恥ずかしさもあり、未だに動揺を隠せなかった。


「なになに? 緊張してるの?」

「そんなことないです!」


そう俺は緊張しているのだ。


千尋(ちひろ)のことも千尋ってよんでもいいよね?」


千歳さんは後部座席に座る先輩に尋ねた。


「かまわないわよ。」


先輩の名前を下の名前で呼ぶ日が来るなんて、昨日の俺が考えていただろうか。

答えは否である。恐る恐る先輩の下の名前を口に出した。


「ち、千尋先輩。」

「なんで千尋の時は先輩なのさ! ウチは先輩じゃないの!?」


千歳さんが突っかかってきた。どうやら、先輩として慕われないことに不満があるらしい。


「僕の中では千歳さんは千歳さん! 先輩は先輩なんです!」

「んー。まあいっか!」


正直自分でも何を言っているのか理解できないが、千歳さんはそれで納得してくれたらしい。なんとも大雑把(おおざっぱ)な人だ。何度でも言うが、顔が似ていること以外は本当に先輩と双子とは思えないほどである。

そんな、会話をしているうちに車が止まった。


「お! 着いたみたいだよ! みんなおりて!」


千歳さんがそういうと自動でドアが開いた。そのまま車から降りるとあたりは真っ暗で周りがよく見えなかった。どうやらここは室内らしい。


「千歳さん。真っ暗で何も見えないんですけど。」

「ちょっとまっててー。」


千歳さんがそう言うと、スイッチのカチッという音と同時に周りが急に明るくなった。


「ようこそ電子怪獣特(でんしかいじゅうとく)別対策組織(べつたいさくそしき) 通称Cyber Dark(サイバーダーク)へ!」


どうやら俺はよくわからんところへ来てしまったようだ。


自分としてはもっとシリアスな感じで行きたかったのですが、この調子でいけばラブコメ路線に行ってしまうのではと少し思っていたりします笑。なかなか難しいものですね。

伊吹のセリフの「はっきりしてくださいよ!」というのを流行らせたいです笑

次話以降は少し期間が開いてしまうと思われます。申し訳ありません。

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