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プロローグ

「よーし。それじゃあ出席とるぞー。」


3時間目は古典の授業。一番嫌いな教科である。いつもこの時間は隠れて寝ている。

しかしなぜか今日は眠れない。二時間目の化学の時間で既に寝ていたからである。

これは不覚だった。


「あーあ。早くこの授業おわってくんねーかな。」


そんなひとり言をつぶやいた瞬間だった。突如(とつじょ)なり響いた爆発音とともに廊下には爆風が勢いよく駆け抜けた。その衝撃で窓ガラスは全て砕け散った。


「今すぐ、運動場へ避難しなさい!」


先生はすぐさま生徒たちに指示を出し、みんなは一斉に火元とは逆の階段へとむかい走り出した。訓練では走ってはいけないというが実際はパニックとなり本能的に走ってしまうのだろう。自分も遅れまいと階段へ向かった。

そして運動場へと避難し、各クラスでの点呼を取る。訓練通りの流れであった。


「静かにしなさい!」


教師たちは指示を通すため静かにするように促すがほとんどの生徒がパニックになってしまいなかなか静まらない。


「こんな火事って実際におこるんだな。正直信じられねーよ。」


いつもクラスでつるんでいる三澄(みすみ)が話しかけてきた。


「ああ、俺もあんな爆発は初めてだ。」

「でも、なんであんな普通の教室で爆発が起きたんだ? 大体、家庭科室か理科室っていうのがお決まりだろ。」

「確かに。引っかかるな。」


一つの疑問が心の中に引っかかった。

すると遠くの方から声が聞こえた。


「中にまだ逃げ遅れたやつがいる!」


3年生の方から聞こえてきた声だった。


嫌な考えが脳裏をよぎる。

おそらく火元である教室は自分が密かに思いを寄せていた十朱(とあけ)先輩の教室なのである。

その途端、自分の身体(からだ)は無意識のうちに火元へ向かって走っていた。


東雲(しののめ)、何をしてるんだ! 戻って来い!」


先生は怒鳴り散らしたらしい。おそらく三澄(みすみ)も同じように止めようとしてくれていたと思う。だが、その時の俺は何も聞こえていなかった。ただ十朱(とあけ)先輩のことしか頭になかったのだ。2年生の教室は1階と2階にあり3年生のクラスは3階と4階にある。

俺は先輩のいる4階の教室へと全力で階段を駆け上がった。そして先輩のいる教室へとたどり着いた。熱気に包まれてはいるがまだ、かろうじて中に入ることができる状態だ。爆発があったためか教室内は最上階という事もあり天井が落ちてきて瓦礫がたくさんあった。


「だれか中にいたら返事をしてください!」


今までに出したことがないぐらいの声量で声を出した。

返事はない。もう一度声を荒げて呼びかけた。


「誰か中にいませんか! いたら何でもいいので合図してください!」


しかし、また返事はない。ここに長時間いるとこちらの身も危険なので、返事がないのなら大丈夫だろうと思い引き返すことにした。


「たすけて……」


その時、かすかな女子生徒であろう声が聞こえた。さっきまでは自分が焦っていたせいで周りの声を聞き取れていなかったのだ。とっさにもう一度呼びかけて何処(どこ)にいるのかを探った。廊下から反対側の窓の方から少し瓦礫(がれき)が動いたのとともに砂埃(すなぼこり)が上がったのが見えた。すぐに駆け寄り瓦礫(がれき)をのけようとする。


「もう少しで持ち上げれますから、がんばってください!」


必死の思いで瓦礫(がれき)をずらし下に埋もれていた女子生徒を助けることができた。どうやら瓦礫(がれき)瓦礫(がれき)で空洞ができており、上手くその中入り込んだらしい。けがこそはなかったが抜け出せなかったようだ。そして再び声を掛けた。


「大丈夫ですか? けがは無いですか!?」

「うん。大丈夫みたい。ありがとう。ゴホッゴホッ。」


その返事と共に顔を上げたのは十朱(とあけ)先輩だった。

普段なら二人きりのこんなチャンスはめったに来ない。少しでも距離を縮めるため小話でもするのが普通だろう。しかし今はそんな状況ではない。命の危機なのであり、それは俺も十分わかっていた。


「先輩! 早く避難しましょう。立てますか?」

「うん。立てる。」


無意識のうちに先輩に手を差し伸べてしまった。それぐらい必死だったのだろう。先輩は俺の手を取り立ち上がろうとした。その時だった。校舎の壁が崩れ落ち爆風が吹いた。

目も開けられないぐらいの砂埃(すなぼこり)が舞い、顔を伏せた。幸いにも、死んだじいちゃんの形見であるゴーグルをいつも首にかけていたのでそれをつけ先輩を階段まで誘導しようと顔を上げた。


「う、嘘だろ…… 何だよこれ。」


目の前には動物なのが機械なのかわからない見たこともない巨大なタコのような足が生えた生物が集まっていた。状況をうまく飲み込めず、未知への恐怖の余り腰が抜けてしまった。

この状況で目を開けられるのは俺だけだ。先輩を助けようと必死だった。


「先輩! 目を(つむ)ったまま真っ直ぐ走って逃げてください!」 


砂埃(すなぼこり)がすごいのもあったがこんな腰が抜けた恥ずかしい姿を観られたくなかったのだ。


「む、無理よ! そんなこと言ったって。」

「なんで、早く逃げないと! 先輩だけでも早く!」

「だから、無理なの!」


どうやら先輩の足は二度目の爆風によって飛ばされた瓦礫(がれき)の下敷きになってしまっていたらしい。どうにかしてその瓦礫だけでもどかさないと。でも、俺の足は力が入らない。正面に見える生物への恐怖で震えているのだ。


「くそ、何でいつもこうなんだ……」


もう俺の心は折れてかけていた。しかし、そんなことは未知の生物には関係がない。三度目の爆発を引き起こそうとしていたのである。三度目は未知の生物が視認できるためいつ爆発するのかが分かった。先輩だけでもと思い先輩の上に(おおい)いかぶさるようにして爆風から守ろうとした。


ああ、まだ死にたくない。


爆風と同時にそんなことを心に思ったのである。

そして、かすかに温もりを感じた。これが死後の世界ってやつか。とても優しい温もりだ。まるで小さい時を思い出す。よみがえる母親との思い出。


これが走馬灯ってやつか。何かこえが聞こえてくる。誰の声だろう。


「……て。……きて。起きて。早く目を覚まして!」


目を開けるとそこには先輩の顔があった。どうやらさっきの声は先輩の声だったらしい。


「なんで、生きてるんですか?」

「ばか! 何で私なんかかばうのよ!」 


先輩は怒っているようだ。


「だって、女の子を助けるなんて当たり前じゃないですか。」

「そんなの最初から死なないわよ! ばか!」


え、言っている意味が分からない。確かにかばった俺が死んでいないのだから先輩をかばわなくても助かったのかもしれない。でも、こんなことはまぐれだろう。このように俺も身体(からだ)が動かなくなっているわけだし。そんな疑問を抱きながらもまだ、未知の生物はいるのではないかと思い窓の方を観た。

そこには黒いスーツを着た人が立っていた。頭にはマスクをかぶり男か女かの区別はつかない。一見少し変わったコスプレにも見えるが、両手には拳銃を二丁持っていた。

「せ、先輩。この人は誰ですか?」

「あなたは大人しくしてなさい!」


聞いただけなのに、またなぜだか怒られてしまった。まあ、身体(からだ)に力が入らないので大人しくしておくしかないのだが。


「さあ~て。いっちょいきますか!」


そのマスクの下からは女の声が聞こえた。どうやら女だったらしい。

その一言と同時に地面を力強く蹴り未知の生物の方へ向かって突っ込んでいった。猪突猛進(ちょとつもうしん)というのはまさにこのことだろう。身体(からだ)を守るという考えは一切無いように見えた。


「ホルホルいつものお願い!」 

「任せな! ちと!」


彼女の右目が青色に光り輝く。


「狙いをさだめて~。ワン! ツー!」


彼女の掛け声と共に強烈な炸裂音(さくれつおん)が鳴り響く。


「キュイイイーーン!」


未知の生物の鳴き声だろうか機械音のような奇妙な甲高(かんだか)い音が鼓膜(こまく)を震わせる。

そして、緑色の液体が吹き出す。どうやら未知の生物の血のようである。


「それじゃ、そろそろ決めるよ!」


元気よく掛け声を上げると親玉であると思われる最後の一体の頭部に乗り、脳天めがけて拳銃を突きつけた。


「スリー!」


二丁の拳銃が同時に発砲された。

三体目は校舎に倒れこみ勢いよく頭部が破裂(はれつ)した。


「あちゃー。またやっちゃたか!」


黒いスーツを着た彼女は当然のこと、校舎内から観戦していた俺と先輩にまで血飛沫(ちしぶき)が降りかかった。


「お姉ちゃん! いつもその戦い方辞めてって言ってるでしょ!」

「えへへー。ごみん! ごみん!」


今までいろいろ起きすぎて頭の中が全く整理できない。思考が追いつかない。はてなマークで一杯なのである。

何とか考えがまとまった所で、一番心に引っかかった疑問がつい口から漏れてしまったようだ。


「てか、お姉ちゃんってどゆことーーーー!」


そう、何を隠そう俺は根っからの年上のお姉さん好きなのである。


はじめまして。小徹と申します。

自分の日頃考えてることを題材に書いてみました。

これから不定期で連載していきますのでブックマークの方よろしくおねがいします!

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