表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

愉快犯と共同生活

飼い主サイドの話です。

運命の出会いをした。


ある日私は恋に落ちた。


本来私は爬虫類派だ。


蜥蜴や蛇のフォルムにそこ魅力を感じる人間だ。


仕事でよくマウスやモルモットと触れ合うが実験動物以上の感情は湧いた事がない。


実際姉が保護した母猫、子猫に全く興味がなかった。


姉に無理やり家に連れて行かれ、あの子と対面した瞬間


頭に雷が落ちた感覚がした。


潤んだ瞳、小さな身体、柔らかそうな毛、何もかも私を捉えて離さなかった。


頭で考えるより早く口から先に言葉が出た「この子、私が引き取って良い?」


姉としては友達に情報を広げてくれただけで儲けもんと考えていたようでひどく驚かれた。


決して実験体に使わないと誓約書を書かされた。


もう少し自分の妹の良心を信じても良いのでは?とは思うが数ヶ月前に解剖した鶏の脳の写真を嬉々として見せた前科があるので何も言えない。


そのまま姉の家から猫を引き取り家路に着いた。


そっとゲージを置き扉を開けてみたが出てくる様子がない。


姉の話だと家に来たばかりの時はそっとしておくのが良いそうなので猫を置いて一旦家から出る事にしよう。


なんせ、突然引き取ってしまったので生活に必要なものが足りない


姉からゲージと餌皿は貰ったがそれ以外にもトイレやベッドなんかも必要らしい。


取り敢えず近くのペットショップへ行くとした


初めてペットショップへ訪れてみたがなかなか楽しいな

あれもこれもと買い足して行き最終的に合計金額が万を超えた。


明らかに買いすぎた。


大量の荷物を抱えて帰ると家の中は静かで


まだケージの中に居るのかと思い覗くと中は空っぽで


一瞬嫌な予感がして、すぐ様窓の施錠を確認したがしっかりと鍵はかかっていた


ひとまず脱走の線は消えたが一体どこに居るのだろうか


我が家は必要最低限の物しかないので隠れる場所は多くはないはずだ


それから捜索し数十分どこにも居ない


ベッドの下や机の下なんかも見たがいない


もしや、私が扉を開けた際に逃げてしまったのだろうか


なんて事だ。引き取って初日で迷子だなんて


血の気がさぁっと引いていく感覚がする


とにかく姉に連絡しよう


震える手でコールボタンを押し、姉の応答を待つ


その時ふと冷蔵庫に目を向けると見慣れない紐が見えた


いや、見慣れないがどこかで見た事がある何かの装飾だったか


それが冷蔵庫の裏から生えていた


片付けは頻繁にしているはずだがあんな所に放置されていたとは盲点だった


「もしもし?どうしたの?」


「ごめん、姉さん実はー」


姉からの応答に意識を戻しつつ紐を片付けようと冷蔵庫に向かうと紐が上下に動いた


驚きすぎて思わず携帯を落とす所だった。


そうっと近づいて紐が続いている先を見た。


電話の向こうで姉が何かあったのかと叫んでいる


「姉さん、貰った子が冷蔵庫の裏に入り込んでるんだけどこれって大丈夫なの?」


私が見たのは紐ではなくあの子の尻尾だった。


いくら小さいとはいえまさか20㎝あるかどうかの隙間にすっぽり収まるとは思わなかった


自分では完璧に隠れていたつもりなのだろうか私と目があった瞬間ビクッと反応しさらに奥まで進んだ。


それでも尻尾の先は見えていた


頭隠して尻隠さずならぬ尻尾隠さずというべきか


なんともベタな行動をする子だ


因みに姉は電話で爆笑していた


よくある事だと


猫はよくこっちの想像を超えた行動を起こすと言われた


つまりこれから色々こんな事が起こるという事だ


私は今日からこの子と生活するのだ


私はこれからこの愉快犯と暮らしていくのだ。


年甲斐もなくワクワクしてしまう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ