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グランツの告白(1)

3日の日にちに上げたかったけれど、

4日まで、あと20分・・・。

だから4日にずれ込みました。そして、長いので2つに分かれてます。

『まぁ、分かったよ。もう少し教えてやるから

・・・オレに感謝してよね』


私の目の前に立つ黒毛玉はそう言って話を始めたけど


『あっ、そうそう。話を始める前に

言いたい事があるんだけど』


と思い出すかの様にグランツが私に言う。


「えっと・・・・・・・なに?」


『あのさ、アリィはオレの事を黒毛玉って言うけど

 黒毛玉って言うのはヤメテ欲しいんだよね。

 オレにはグランツって、ちゃんと名前があるんだ。

 アリィだって、アレとかソレとか言われたらやでしょ?

 オレもやだ。だから、ちゃんと名前を呼んで欲しいんだよ。

 もちろん、頭の中で考える時もだよ』


えっ?やっぱり私の頭の中の言葉聞こえているんだね?

さっきから、私が思っている言葉に反応が返ってきてたから

もしかして・・・?と思ってたけど。


「う・・・・うん。わかった。

 ちゃんと名前を呼ぶよ。そうだよね。

 確かにグランツの言う通りだよね。

 私も名前じゃなくて、『オイッお前!』とか言われてたら

 何それ、ヤダなって思うもん・・・。

 だから・・・名前の事については、本当にごめんなさい。」


私の素直に述べた謝罪の言葉に、グランツはウンウンと頷いて


『そうそう。わかってくれればいいんだ。

 名前を呼ばれる事は、オレがここにいる存在の証。

 ずっと誰にもオレの名前を呼んでもらってないから、

 名前呼んでもらえたら、嬉しいんだ。オレ・・・』


「そっか・・・嬉しいんだ・・・」


ギュッとしたい程の可愛い姿だけど、

グランツが何なのか、まだわからない。

突然現れたり、犬っぽい見た目なのに人間の言葉が

口が動いていないのに喋れたり、

不思議要素満載・・・だけど、

嬉しいっていう気持ちが、私の感じる感情と

同じ感じがして、ちょっとだけ存在が近くなった。

お化けかなとか、まだちょっと思ってるし

歯がギザギザだったり・・・とか想像すると怖いけどね。


『わかってくれたんならいいよ。アリィ・・・。

 でも怖いとか言われてる部分は、かなり気になるけど、

 まっ、今のところイイや。

 ちなみに、歯はギザギザじゃないけど、

アリィが望むならギザギザ歯にするけど?』


「いや!・・・・ヤメテ。今のままでお願いします」


ギザギザの歯を想像して、ブルブルと顔を振る私の

慌てぶりを見て、なんだかグランツは嬉しそうだ。

顔の表情は分からなくても、雰囲気で感じる。


『まっ、じゃぁ気を取り直して

 まず、アリィが知りたいのは、アリィの事だよね?

 その説明から行く?』


「うん・・・・・私は知りたいの。

 何で頭の中に、二つの世界の記憶があるのかとか

 私が誰なのかとか・・・」


階段から落ちて2ヵ月。

私の頭に過ぎる、忘れた頃に思い出したかの様に現れる

ここではない世界『日本』の記憶。

記憶にはあるのに、現実にはない・・・

あれがあったらいいのに・・・

これがあったら良かったのにという気持ちを何度も味わった。

でも何故か、日本の事は思い出せても、日本人だった時の

自分に関する事は、はっきり思い出せていない。


それなのに、どうしてこういう考えが浮かんでくるのか

ハッキリ理由が分からないからこそ、ずっとモヤモヤして

スッキリしなかった。

そんな心境を抱えてきて、これからも、

モヤモヤを抱えていくのかと思っていた所に、

それが解消されるという言葉。

期待も膨らむ。

スッキリ爽快感・・・便秘解消みたいな感じかなっ!


『わかった。じゃぁ、オレが教えてあげる。

 でもさ、スッキリすることを、お嬢様が

便秘解消とかっていうの

 あんまり言わない方がいいよ。

 そんな綺麗なのに、品が無くなっちゃうよ』


と言うグランツ。

・・・・そうだった。

今の私の姿は『アリィシア』だった。

いけない、いけない・・・。下卑た言葉を発するのは

気を付けよう。

私のアリィのイメージを、私が落とすなんて絶対に駄目だわ!

私はそう思いながら目線をグランツに合わせた。

もっとも、私達の視線が合わさっているのかは分からないけど。


『まず、アリィの事だけど・・・。

 アリィは「アリィシア・フォン・アードルベルグ」だよ』


「うん・・・・それは・・・・知ってるけど?」


あれ?なにそれ?

期待していた謎解きとは違うんだけど・・・。


『んっ?何その反応・・・。

 だって、アリィは自分が誰なのか

 知りたいって言ってたじゃん?

 だから説明してあげたんだけど・・・。』


「いやいやいや・・・私が知りたいのは、

 私の名前とか、そういう意味じゃなくてですね。

 なんていえばいいのかな、グランツが言ってた

 私であって私じゃないといか。

 何で日本の記憶があるのかとか、そういう事で・・・・』


グランツに、『私は誰』と問いかけたら、

あなたの名前はと言われて自分の名前を告げられたら、

どう思う?

グランツに私の聞きたい事が上手く伝わっていないのかと

私が慌てて説明しようとすると


『・・・・っていうのは、冗談です。

 ふふっ、アリィ、慌ててるね』


ニヤリという雰囲気を醸し出すグランツ。

あのね・・・グランツさん。

今、冗談のいうタイミングではありませんが・・・


『ごめん、ごめん。

 冗談はさておき、本題にはいるね。』


よいしょっと・・・とグランツは私の太ももの上にピロー

・・・つまり、枕を持ってくる様に私に指示をして、

自分はその枕によじ登り、私の視線のさっきよりは

近くに寄せた。

筒状の足がブラブラしているのが・・・

悔しいくらいに可愛い。


『さっきも言ったけど今のアリィは

 『アリィシア・フォン・アードルベルグ』。

 アリィのお父さんとお母さんから産まれた、

 れっきとしたこの世界の住人だよ。

 でも、アリィがさっきから知りたがっている『日本』の記憶も、

 夢じゃなくて体験したものなんだ。

 でも、その記憶の持ち主は『アリィ』であって

 『アリィ』のものじゃないんだ。

 正確にいうと、アリィの魂の器だった地球人・・・

 日本人の女の人の記憶なんだよ』


「えっと・・・・つまり、どういう事?」


私の魂の器?私であって、私じゃない?

グランツの説明に、私は一生懸命思考を

フル回転させてみたけど私の器が日本人とか、

頭にハテナマークが浮かぶだけなんですけど。


『・・・・あれ?これじゃわかんないの?

 ・・・じゃぁ・・・なんて、説明しようかなぁ・・・』


グランツは、右手を顎付近にあて考え込んだ姿をする。

でも、ほんと。どこもかしこも真っ黒。

目の色が身体と同じ色だから、こうやってジッとみても

目線が自分に向いているのかは分からないな。

ふふふっ


『アリィ・・・今は目が何処についているとか、

 そんな事を考える必要はないからね』


「はい・・・・すみません」


私の緊張感のなさに、ちっこいグランツがプンとする。

プンって・・・可愛い・・・


『あのね、オレに対してちっこいとか可愛いとか

 ホワホワしながら生暖かい目で見てる場合じゃないよ。

 さっきまで、不気味とか得体の知れないとか言って

 怖い~なんて言ってたのに・・・もう忘れてる。

 先に進まないから・・・オレの言葉を真剣に考えなよ。

 真剣に聞かないんなら、説明はこれで終りにするよ!』


グランツの顔の表情が良く分からないけど、なんだか

ズモモモモって吹き出し文字が背中あたりから

見えそうな気がする。


「・・・ご・・・ごめんね。グランツ・・・

 いえ、グランツ先生・・・しっかり考えますので

 お話の続きお願いします!」


話を途中で切られたら、目的は達成しない。

私は慌てて、グランツをグランツ先生と呼んで、

機嫌を取りつくろう。


『グランツ先生?・・・・

 うん・・・先生かぁ・・・先生っていいね。

 よし、よろしい。

 最初からそうやって、真剣に聞くのだよ!アリィ君』


案の定、グランツ先生の機嫌は復調した。

調子に乗ったグランツを見ていると

”お嬢様、褒められるとすぐそんなに浮かれて・・・。

また転びますよ!”と調子にのった私をたしなめた

パティの声が頭の中に甦ってくる。

確かにね、私が産んだとか言って何を言ってるのとか思ったけど、

おだてられると、すぐに調子に乗るところは、私に似てるかも・・・


そん事を考えていると

『そうでしょ?』

と言わんばかりに、グランツがニヤリと笑った雰囲気を伝えてきた。


「・・・・私の器だった日本人って・・・

 一体、どういう意味かな?

 えっと、だからつまり、私は日本人だったって事と

 理解してもいいのかな?」


グランツの言葉を思い出しながら、考えをまとめて伝えると


『ブッブー!違います!でも、一部はニアピンで正解。

 さっきから言っている言葉を良く思い出してよ。

 アリィの魂の器が日本人だって言ったけど、でもオレは

 アリィが日本人だったとは言ってないんだよ。』


「・・でも・・・魂の器って言われても

 意味が分からないんだもん」


『あのね、つまり、日本人の女の人はアリィの器だったの。

 地球にいた時、沢山の地球人の身体をもった。

 でもその地球人の魂は同じ。

 だから、アリィは地球人の魂の中にずっと隠れていたんだ。

 地球での最期の姿は日本人だった。そしてアリィの魂は

 その『日本人の器』の中にいたんだ。

 アリィが自分が体験したと感じたものは、

 日本人の女の人が体験したもの。

 アリィ自身が経験した記憶じゃないだよ』


わかった?と言いたげな雰囲気のグランツに


「えっと・・・・えへへへっ。

 もう少し、私でも分かりやすく言ってくれると嬉しいな」


と答える。私は、ますます混乱していた。


『えっ?その言葉のまんまなんだけど?

 アリィが何が分からないのかな?

 うん。分からない事が、分からないよ?』


とグランツが首を傾げてるけど、いやいや、

魂の器とか言われても、意味分かりませんよ。

例え、二つの世界の記憶がいったりきたりしてても

どっちの世界でも、

魂の器なんて言葉聞いた事がないし・・・

理解が出来ないんですけど・・・

そんな私の頭の中を覗き込んでいるらしいグランツは

仕方ないなぁ・・・って頭をポリポリと掻いている。


『・・アリィはさ、『器』って何?って聞かれたら、

 なんて答える?どういうものを連想する?』


「器・・・だよね?

 う~ん・・その言葉だけを切り取ると、

 何かを入れる物・・・かな?」


『それは分かるんだ。エライエライ・・・』


なんだろう・・・この子供扱いの褒め方は。

ちょっと馬鹿にされてる?

ヌイグルミに年齢があるのかは分からないけれど

グランツは明らかに私を子供扱いしてるよね。


『あっ?分かる?

 まぁ、オレからしたら

 今のアリィは子供みたいな感じだから

 ・・・つい、出ちゃった。

 わりぃ・・・わりぃ・・・』


「何だか・・・・・フクザツな心境です。」


『まっ、そこんとこは気にしないでいこー』


今度は『むぅ』っと唇を突き出した私に

グランツは励ますみたいな事を言っているけど

そもそも、フクザツな心境が生れて原因は

グランツの言葉なんだけどね!


『まっ、そこはおいといて。話をすすめるよ~』


完全に話題を変えたよ、この黒ワンコはっ!


『えっと・・・んじゃ、もっと具体的にいうと、

 さっきも言ったけれど、

 アリィの日本での生活の記憶は、

 アリィの魂を入れていた日本人の女の人の記憶なんだ。

 意識がなくても魂の中から

 一緒に体感していたみたいな感じだから、

 アリィの魂の記憶にも刻まれたんだと思う。

 でも、実際に体験しているのは、その日本人。

 だから正確にいうと、

 純粋にアリィが経験したものじゃない』


「うん・・・そこは分かったけど・・・

 あの・・魂をいれてた器って言う

 意味が分からないんですけど。」


『そこの所から?

 ちょっとは頭を動かして物事を察してみるとか、

 考えてみるとかしなきゃ駄目だよ、ほんとに!』


グランツさん・・・なんでしょうか?

その呆れてる雰囲気は。

だってさ、魂とか器とか中世ヨーロッパの雰囲気漂うこの世界に、

突然オカルト発想の展開なんて、予想もつかないじゃん。

そもそも、魂とかって形も分からなければ目にも見えないでしょ?

それなのに、なんで器に入れられるわけ?

大体、人間の魂を魂の器にするって、一体、どうやって?という

私の心の声に


『そろそろ、理解して欲しいなぁ・・・。

 何度も説明するの疲れるよ』


と言うグランツの声が耳に入る。

結局、疲れてメンドクサイのが嫌なんだな・・・と理解した。


『それでさ、最初に言っとくけど

 「アリィ」の魂は、この世界のものじゃないよ』


「はっ?どういうこと?」


私の魂・・・?そんな形の見えないものが

私のどの辺りにあるかは分からないけど

この世界のものじゃないって事は、

じゃぁ、私の魂はどこの世界のもの?


『だから、この世界・・・つまり、アードルベルグがある

 ここで生れた訳じゃないんだ。

 まず、”人の魂”はね、

 その人の人格的な存在を作ってるもので、

 記憶だとか生命だとか、そういうものを形作っている

 言わば、データーベースみたいなものなんだよ。

 身体が作られて、その中に魂を入れると初めて人になる。

 魂はさっきも言ったけど、人の存在の証、そのものなんだよ。

 アリィの魂は、アリィを体を現す。

 姿形がかわっても、その肉体の中にアリィの魂があれば

 それは、アリィなんだ』


ムムムッ・・・難しい・・・


「えっと・・・・でも、さっきグランツは、私の事を

 アリィシア・フォン・アードルベルグだって言ったよね?

 という事は、アードルベルグって名前がつくぐらいなんだから

 この世界で生れたって事でしょ?」


『うん・・・身体はね。』


「・・・・・・・・・・身体、だけ?」


『そう。

 さっきも言ったけどアリィの魂が生れた場所は、

 ここじゃない。

 でも、地球で生れたわけでもないよ。

 アリィの生れた世界は、この世界とは隣り合わせにあるけど、

 でも行けないところにある』


「・・・そんな世界があるの?」


『あるよ。自分が知っている世界が、この世の全てではないよ』


「そっ、それはそうだけど・・・」


『そして、次に、アリィは身体がもう動かない。

 機能を停止している』


「あの・・・・私の身体、筋肉痛だけど、こうやって動くし

 触ったら温かいので死んでないと思います。」


私は自分で自分の身体をギュッと抱きしめる。

私の手のひらには、確かに人のぬくもりを感じるよ。

生きる屍、ゾンビじゃない・・・はず・・。


『今のアリィが死んでるとは、オレは一言も言っていないよ?」


確かに言っていない。けど、身体の機能が停止って・・誰の?


『動かない身体は、アリィの魂が生れた時に一緒に出来た身体・・・

 という意味です。」


「っていう事は、私のって事だよね?」


『うん・・・。正しくは最初のアリィのだね・・・。

 今のアリィじゃない。

 だって、同じ魂をもっていたとしても、

 今はもう別の身体があるし、人生を歩んでる・・・

 そういう意味では、アリィは転生したって事になるね。

 そう考えると・・・最初のアリィとは、もはや別人だね』


「・・・・・つまり、えっと・・・・結論からすると

 日本人から、この世界に生まれ変わった『転生者』って事

 なるんでしょ?」


どこかの漫画じゃないけれど、

この世界とあっちの世界である地球に行ったりきたりした、

転生者。多分、それが正解だっ!という私の心のつぶやきに


『半分当たってるけど、半分は間違ってる。

 さっきも言ったけど、アリィは日本人になった事はないんだ。

 あくまでも日本人の身体と魂は、

 アリィの魂の器としていただけ。

 アリィはその器の中にいたの。アリィのままで。

 だから、アリィは日本人の中にいる時もアリィのまま。

 日本人はアリィの魂だけじゃなくて、

 もともとあった日本人の魂を使って生きてきたから、

 アリィの魂が日本人の女の人を直接動かしたりは

 してないんだ。

 この世界に戻って来たのは、日本人の身体に異変が起きたから。

 そして戻ってきたのは、日本人の魂の器の中にあった

 アリィの魂だけ。

 アリィの魂は、戻ってきた後

 この世界の身体と一緒になったんだ。

 だから、アリィは日本人からの転生者じゃないんだよ。

 オッケー?』


これでわかったでしょ?とグランツは言うけれど、

私はう~んと頭を悩ませて、考えを整理する。


「えっと・・・グランツが教えてくれた事をまとめると

 私は、アリィシアで、この世界に生まれた人間って事だよね」


『そうだね』


「でも、私の魂は、この世界で生れたわけじゃない?」


『うん・・・。』


「で・・その魂が、理由は分からないけど地球に行った」


『はい。当たり』


「で、地球に転移した時の私の居場所は、

 日本に住む女の人の・・・えっと・・・魂の中で、

 その日本人の身体には日本人の女の人の魂があって

 女の人はその魂で動いていた。私の魂じゃなくて。」


『そうそう・・・いいよ・・・』


「その後、理由は良く分からないけど、

 地球からこの世界に戻ってきたんだけど

 その時の魂は私の魂だけで、日本人の魂じゃない」


『そう・・・日本人の魂じゃない。アリィの魂・・・。』


「そして・・・・私はこの世界で身体を得て、魂が入って

 今の私になってる・・・・。私の記憶に断片的に出てくる

 日本での生活とかは、日本人の女性のものであって、

 私じゃない?」


『うんうん。よく理解してるじゃん』


「それで、最初のアリィの身体は動けない状態にあるけど、

 まだあって・・・・って事だよね・・・。

 うん、やっぱり理解が出来ていないみたい・・・」


まとめてみたって、分からない事は一緒だった!


『はぁ?・・・・そんだけ纏まって分かっているのに

 分からないなんて・・・・

 やっぱり、階段から落ちた時にどこか打ちどころが・・・・』


「いやいやいやいや・・・・普通、分からないでしょ?

 だって、魂とか、器とか意味わかんないし。

 ここで生れた記憶だけしかないのに、

 ここじゃない所で生れただとか、

 しかも日本人の記憶まであって、私の前世は日本人なのかな?

 と思ってたら、その記憶は私のものじゃなくて、

 私の魂の器だった日本人のものです・・・

 って言われて、これでわかったら、もの凄く天才ですけど。

 ええっ!私、めっちゃ天才少女ですよ!

 大体、なんで器だけだった日本人の記憶を、

 私のものの様に感じるの?

 『魔法少女セレス』が大好きだったのが、

 もし日本人だけだったのなら

 こんなにハッキリ覚えている筈ないと思うのに・・・・・・。

 もう、もう、あ~、モヤモヤするぅぅ~」


と私が力説していると、


『何が分からないの?もう、答え出てると思うんですけど』


グランツの体から何やら呆れた雰囲気が漂ってきた。


「だって、グランツ先生!

 今、説明して貰ったけど何にも解決してないです。

 っていうか、私、説明前よりも余計に混乱してます。

 もう、ほんと、お嬢様の言葉遣いなんか、

 どっかに行ってます。

 こんな喋り方をしてるの家族がみたら、

 きっと驚いちゃうくらい、

 私、思いっきり日本人口調で話ししてますけど。

 でも、この日本人体験は自分じゃないって・・・

 もう、はぁっ?ってな感じですよ!」


『・・・・たしかに、言葉遣いだけは

 『日本人』だった頃の様だね』


グランツの言葉も何もかも、分からなくなってきた。

本当・・・・泣きそうな感じだよ。


『泣かないでよね。

 オレ、泣かれたって、どうしたら良いか分からないし。

 分かったよ、アリィが分かる様に、

 もっとも~~~っと優しくオレも考えてしゃべるから』


これでいいでしょ?というグランツに、

最初からそうしてくれればいいのにという

私の心の小言はスルーされた。


それじゃぁ・・・とグランツは話を始めた。


『結局のところ、アリィは、アリィなんだ。

でも、地球人じゃない。

 記憶は体験したもの。アリィの器だった人間がね。』


グランツはブツブツと、自分でも確認しながら

私に説明する。


『最初のアリィは死んじゃってる。

 さっきも言ったけど、身体がって事が。

 でも、魂は残った。今はアリィの身体の中にいる。』


「・・・・・・・・・・う・・・ん?」


聞きたい事はあるけれど、取りあえず黙って続きを

聞いてみよう。


『この世界や異世界だった地球で生れた魂は、

 身体を持って生れてきて、その身体が役目を終えると

 魂は消滅しないで、また、次に生まれる為の準備を始める。

 生まれ変わる為にね。そこまでは理解した?』


「うん・・・・わかった。」


『でも、アリィの魂が生れた場所の人達は、

 ここの世界の人達とは違う。生れ変わる事がない・・・。

 でも、消滅もしない。一つに溶けあうんだ・・・』


「・・・・・・・?えっと・・・溶けるって?」


『言葉通りだよ。

 アリィがもとの世界の人は死ぬと光と溶け合って、

 一つになった後、また新たに生まれてくる。

 前に生きていた人生は完全にリセットされる。

 ・・・特別な事をしない限りね。

 アリィの身体がその動きを止めた時、

 アリィはアリィの魂が生れた世界の人達と

 同じ様に光の場所へと行く筈だったんだけど

 それが出来ない状況になってたんだ』


「えっ?・・・それはどうして?」


『それは・・・・アリィの身体が奪われたから』


「奪われるって、誰に?」


『相手の名前は、まだ言えない・・・

 けど、アリィの敵にだよ。』


「私の敵・・・・・なんで名前、言えないの?」


『だって、もし名前とかわかったら気にするでしょ?

 もしヤツラと出会ったら、

 自分の敵だって思ったら緊張するかも知れない。

 せっかくマスターが、この世界に戻ってきたアリィの魂を、

 なんとか隠そうとしてるのに、無駄なものになる。

 だから、誰かを今は知らない方がいいと思うんだ。』


そう言えば、グランツは最初に自分の事を『私を守るもの』だって

言っていた。そして、何から守っているのかと聞いたら、

私の敵からとも言ってた。

という事は、私の敵の人達は、

最初のアリィさんの身体を奪っていった人達・・・って

事になるのかな?

そして、その人達から私の魂を守っていたって事?


『うん・・・・・・そうだよ』


グランツ先生が、辛そうな雰囲気を出して小さく、頷いた。

でも・・・・死んだ身体を閉じ込めちゃうとか・・・

ちょっと常軌を逸っしてない・・。

なんか、変な事につかわれてるのかな?

自分じゃないけど・・・・自分の事だっていう

何だか、本当なんだろうかって疑っちゃうけど・・・

でも、勝手にされてるのは、あまり気分が良くない。

その動かない身体に、どんな意味があるんだろう?


『そうだね。オレも気分が良くない。

 でもアイツらは、アリィにもっと酷い事をしようとしたんだ。

 だから、マスターがアリィを守るために、アリィの魂を

 異世界に転移させたんだ。』


「でもさ、素朴な疑問なんだけど私の身体、

 死んじゃってるんだよね。

 しかも魂を切り離して動けない状態。

 そんなアリィさんに、相手の人達にとって、

 どんな価値があるのかな?

 もし、捕まったままでいたらどうなるの?

 魂は、もう私の中にあるんだから・・・・・・。

 私が生きているうちは、私の身体の中に

 アリィさんの魂がある訳でしょ?

 簡単に奪う事って出来ないじゃない?

 だから・・・・大丈夫なんだと思うけど」


『違うよ!魂だけだった時の方が捕まえ難かった。

 でも、今、アリィの魂は形をもっちゃった。

 アリィの身体の中でね。

 最初のアリィの身体を取り戻さなきゃ駄目なの。

 ヤツラから身体を奪い返さなきゃならない。

 そうじゃなきゃ・・・・今のアリィが・・・』


「んっ?私が、どうにか何かなるの?」


『・・・・・・・・命をずっと狙われる。』


「えっ・・・・・何?」


『アリィの身体を使う為に、今のアリィ・・・

 君の身体から、始まりのアリィの魂を

 奪おうとするものが現れる。

 そして、もし奪われたら・・・・

 マスターが最も恐れている事になる。

 だから・・・オレはアリィに会いに来たんだ!

 君の命が危ない・・・その事をアリィに忠告をしにね。』


思いがけない告白の様な説明に、私は言葉を失った。





そろそろ、アリィの相手を出したいなぁ・・・。

グランツは、アリィの相手にしては、小さすぎるし・・

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