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黒わんこグランツは『アリィを守るもの』でした。

次話は10月3日に変更になりました。

データが・・・・・保存する前に消失(T□T)

しばし、お待ちください。


『おう!オレはグランツ!アリィ、久しぶり!』


突然現れた黒わんこ。

右手をヒョイっと上げて、挨拶をするそれに

私は驚き過ぎてジィィっと凝視してしまった。


『アリィ・・・お~い、オレの声聞こえてる?』


私の太ももの上辺りで二本立ちしたワンコ?は、

私に向かって黒い毛玉の手をブンブン振っているけれど

目の前で何かが動いているという認識だけが私の頭の中で

グルグル回っていて、それ以上の思考がフリーズしている。

物体認識処理が上手く出来ていない。


それに、久しぶりって言ったけど、

見た事もなければ、会った記憶もないんですけど。

そもそも、こんなに小さなワンコ。

今まで実物としては見た事ない。

っていうか記憶の中にある似たものと言えば、

昔、テレビで見たコップにすっぽりとはまっちゃう程の

極小犬。

確かティーカップトイプードルって言ったっけ?

コーヒーカップの中に入る位の犬っているのかと

驚いたけど、明らかにそれよりも小さいっていうか

ほぼ、キーホルダーにつくぐらいの、ヌイグルミサイズ。

まぁ、テレビっていう媒体を通して見たという認識だから、

確実にココの世界の生き物じゃないよね。

・・・アードルベルグで見た記憶はない。


でも、この目の前のワンコ、

私に向かって一生懸命手を振ってるなぁ。

黒いモフモフの手がブンブン横に振られているよ。

ほんと、全体の姿を見るとワンコだけど、

黒い毛玉みたい・・・。

これをワンコって言っていいものなの?


んっ?あれ?・・・でもこのワンコの口

・・・うっ・・動いてなかった。

黒い毛玉のワンコの口・・全然動いてなかったよ。

なのに、なんで声っていうか言葉聞こえるの?

というより、そもそも何でワンコの言葉を

私・・・理解出来るんだろっ!!!


『アリィ・・・ねぇ・・ちょっと聞いてよ!』


このワンコ・・・もっ・・・もしかして、神様?

いや、神様じゃなくて犬神様か?

でも、アードルベルグに犬がいないのに犬神って変だよね?

・・・もしかして犬型妖怪?

いやいや、妖怪って日本的な発想だよね?

この国に妖怪っていたっけ??

じぁ・・・まっ・・・まさか、お化け??

いやいや、待ってよ。

私、ワンコに化けてでられる様な事は、

した事ないよ。

あ~・・・考えが纏まらないよ~っ!


『オレがお化けとかって、よく考えるよ。もう』


私、頭を打って幻を見てるのかな?

うん、そうだよね・・・きっと、そうだ。

だって、ワンコだったら二本足で仮に立ったとしても

片手をあげて、横にブンブン手を振ったりしないよね。

なんだろう。

可愛いけど、この得体のしれないワンコに

私は恐怖を覚えちゃうよ・・・。


『幻でもなんでもないよ~。もう、ほんとにオレの話を

 聞けっつーの!』


確かに、モフモフで人形みたいな姿だし、

大きさもギュッと抱きしめてみたいし、

可愛い。私の好きなものに似てる・・。

しかも、どこかで見た事ある・・・

あっ、そっか。

あの黒毛玉の姿・・・。

昔、私が飼っていたワンコの赤ちゃんの時みたいだ。

四角い顔に一文字の口、爺さんみたいな顔。

私、凄く好きだったんだよねぇ・・・って

可愛くて、本当に大好きだったって・・

駄目よ、アリィ・・・現実逃避しちゃだめ!

でも、手のひらサイズでこの形は、

凶悪なまでに可愛すぎる。

でもでも可愛い見た目で、口開いたら、

歯がギザギザとか?


『アリィ・・・まったく、全然、人の話聞いちゃいないよ!

 混乱してるのは分かるけどさ!ちょっと、おーい!!』


しかも、この黒毛玉の二足歩行が人間みたい。

犬の歩き方じゃないよ。スタスタ歩くって

見た目が可愛いぶん、ほんと、なんか怖い。


『もう、本当に駄目だ・・・。しょうがないなぁ。

 こうなったら、これしかない!・・・・・とぉぅ!』


あっ・・・なんか、また声が聞こえてきた。

私の耳まで、おかしくなったのかな?

やっぱり、階段から落っこちて頭を打った影響が・・・って

・・・・へっ、とぉぅ?


”ぎゃぁぁぁ・・・・”


『あっ、今のアリィの悲鳴、外に漏れてないから。

 夜対策、バッチリだから大丈夫だよ』


いや、なに自慢げに言ってるんだろ、このワンコは!

グルグル考えながらジーッと考え込んだ私に

黒毛玉がエルボーしてきた。

私の筋肉痛でめちゃめちゃ張ってる太ももに、

エルボーをかましてきたよ!

手のひらサイズなのに、

太ももに突き刺さる様な痛みは一体なんでなのぉ?

手のひらサイズのワンコの肘なのに痛すぎる・・

この痺れ具合・・・衝撃が大きすぎるよ。


『だから、人の話を聞けっていったのに聞かない方が

 悪いんだよ。

 それに、今のオレの身体サイズだと大した重みないから、

 ちょっと空気の力を利用したりして、操作してみました。』


”空気を利用”って・・・

この世界では空気の話なんて聞いた事がない。

黒毛玉の言葉には日本での生活での知識が

垣間見える気がする・・・て、そんな事より、

今日の私は、歩くのさえままならないんだよ。

脚がカクカクなぐらい、めちゃくちゃ痛いんだよ!

今、すっごくジ~ンてきちゃってるんだよ?

そこんとこ、わかってるのかな!!”


『分かってるよ。

 でも、アリィはオレの話を全然聞こうって気に

 ならないでしょ?さっきから、何回も声をかけたのに

 頭の中でグルグル色んな事、考えちゃってさぁ・・。

 だから、強硬手段を用いたって訳。

 そしたら一発で、振り向いてくれた。

 オレってば、ナイスアイデア!

 いやぁ~、結構、サクッと決まっちゃったね』


黒毛玉は私の太もも付近で、エルボーをかました格好のまま、

そのまま横向きになって、頭を片手で支えて寝っ転がってる。

何だか、休日のおやじくさい。

大体、なにそれ、普通のワンコに足を組むなんて出来ないよ。


『うん、だからさっきから言ってるけど、

 オレはアリィの考えてる『ワンコ』・・・

 つまり犬じゃないから。

 見てわかるでしょ?

 普通、犬がごろ寝なんかできないし、

 一発アタックなんて出来ないでしょ?

 考えなくても分かると思うんだけどねぇ。

 まだ頭ん中が落ち着かないって言うなら、

もう一発エルボーを・・・』


と言いかけた黒毛玉に私はプルプルと首を振って

イヤイヤをしながら


”分かったからヤメテ。ホントに・・・。

 痛いんだよ。

 ヌイグルミサイズなのに本当に激痛なんだよぉ。

 半端ないんだよ!

 凄すぎるんだよぉぉぉ”

『もう。最初っからそうしてくれてれば

 そんな涙目になる事なかったし

しなかったんだよ。わかった?

 じゃぁ、声を出してあげるね。』


どう見ても、肉球のありそうな手なのに、

黒毛玉は指をパチンと鳴らした様に見えた。


『どう?もう、声出せるでしょ?』

「あっ・・・・本当だ・・・」


声が出た。

なんだか、ホッとした。

こんな手のひらサイズのモフモフ黒毛玉人形なのに、

与えられた衝撃力は本当に半端なかった。

考えられない・・・。

ますます不気味に感じちゃうよ。


『不気味って、ひどいね。

 この体だってさ、

 アリィが好きだった可愛いものの中から選んで

 作ってみたのに。不気味って・・・。

 もう、この反応は予想外で、めっちゃガッカリだよ』


おやじのごろ寝スタイルをとっていた黒毛玉は

ムクっと体を起こすと、胡坐をかきながら

両手を広げて『ヤレヤレ』と

非難めいた態度をとる。


なに?その非難するオーラは・・・。

真っ黒な毛で目が何処にあるかわからないけど

めっちゃ、私が悪いって責めてる雰囲気伝わってくるんですけど。

可愛い格好だからこそ、得体の知れないもの・・・怖いよ。

それなのに、私が悪いとか・・・

う~ん、納得いかない・・。


「あの、ワンコさん?・・あなた、何?」


得体の知れない存在?だから、

とりあえず「さん」をつけてみた。

ワンコって呼び捨てて、噛みつかれちゃ怖いもん。


『そんな、噛みついたりしないよ。

 ワンコじゃないんだから。

 さっきから何回も言っているけど、

 オレはグランツ。

 覚えててよ、久しぶりに会ったっていうのに、

 名前すら憶えられていないなんて・・・。

アリィの薄情もん!?』

「いや・・だってグランツなんて知らないよ?」

『酷い・・・アリィ・・酷すぎるよ。

 久々の再会なのに、他人行儀すぎる・・』


ワァッと泣く黒毛玉、グランツ。


「えっ・・・とあの・・・ごめん・・・」

『・・・・・ていうのは、冗談だけど・・・』


黒毛玉・・・・泣きまね???

泣きまねまでするの?この黒毛玉!!


『冗談はおいといて・・・・』

「冗談って・・・・」

『まぁ、最初にアリィと出会った時のオレの姿は、

 もっと大きかったし、カッコ良かったから、

 思い出してもらえないのも分からないでも

 ないけどね。

 でもねぇ、中身は変わってないんだから、

 雰囲気で察して貰えると思ってたのになぁ』


私の答えにむぅっとした『グランツ』と名乗る

黒毛玉は、よいしょっと身体を起こすと、

私の太ももからお腹に向かって

二本足でスタスタと歩いてきた。


やっぱり、凄く違和感がある。

わんこの姿で二足歩行・・・

確かに、二足歩行するわんこはいたけど

こんな風に歩かなかったよ。

あぁ、そうそう。

昔、黒いわんこと白いわんこのヌイグルミの

テレビ見た事あるなぁ・・・・あれも、人間みたく

歩いてたって、あれ、モーションアニメだったよね。

はははっ・・・現実逃避していたら、

どんどん変な記憶を思い出しちゃうね?

確かに・・・

私の好みのモフモフ感で可愛いけれど、

口動いてないのに、言葉が聞こえるとか、

何なんだろう・・・・・・


ワンコのグランツを私はどこか

現実逃避の目で見ていると


『アリィさ。まぁ取りあえず落ち着こうよ。

じゃなきゃ、いつまでも堂々巡りで

先に話しが進まないし』


私を落ち着かせようとする黒毛玉。

原因であるワンコの方が冷静って、何それですよ!


「あの・・・・えっと、『グランツ』さんだっけ?」

『そう。オレは「グランツ」だよ』

「そっ・・・そうですか・・・で、そのグランツさんは、

 一体、何処からこの部屋に入って来たんですか?」


そうだよ、驚き過ぎて忘れてたけど

自分の言葉で、ハタっと思い出した。

この黒毛玉、一体どこから入り込んできたんだろう?

さっきまでパティがいて、その時には

この部屋の中にはいなかった。

いたら、パティだってわかるはず・・・。

でも、全然騒いでなかったよね・・。

うん、真っ黒毛玉わんこはいなかった。


『入ってきたっていう表現は、適当ではないかな?

 現れたって言って貰った方が、しっくりくるかも』

「現れた?ですか・・・で、何処から?」

『アリィの中から・・・・』

「・・・・・はっ?・・・私の中?」


黒毛玉が私の胸の真ん中を指さし


『そう、アリィの中から、シューンッて現れたの・・・』

「えっと・・・・私、わんこを産んでませんけど・・・」


はっ、私、なに馬鹿な事言ってるの・・・と自分の言葉に

突っ込みを入れると、案の定


『産む?はははっ。面白いね、その言い方。

 産むかぁ・・・・

 まぁ、ある意味、アリィに産み出して貰ったのかもね』


真っ黒毛玉は笑った。


「でも・・・・いつですか?・・・

 私、全然覚えありませんけど。痛いとかなかったし・・・」

『痛み?ある訳ないじゃん。馬鹿だなぁ・・・

 そうだね、何時産まれたのかかって聞かれたら、

 オレ、『今』って答えるね』

「・・・・・今?」

『うん、『今』』


ますます、意味が分からない。

黒毛玉は、

『そうだよ、オレ、やっとアリィに産んでもらったんだよ。

 本当に感動だね。それに、長い眠りだったし・・・・』

と言っている。


「えっと・・・・グランツさん?」

『なに、アリィ?』

「あの・・・私が産んだって・・・本当?

 グランツさん・・・・・って、なに?」

『何って・・・だからオレはグランツって、

さっきから何度目なの、このやりとり?!』


やれやれと黒毛玉は撫で肩をすくめる。


「いや、名前はさっき聞いたよ・・・そうじゃなくて。

 そういう事が聞きたいんじゃなくて・・・・」

『んっ?あっ、そっか。

 オレの存在が一体何かっていうのが聞きたいんだね』

「うん・・・そう!」

『だったら、最初から言えばいいじゃん。

 オレ、名前を聞かれてるのかと思って、何度も言ってるのに

 おんなじ事ばかり聞かれてるからさ、

 アリィの頭、本当に心配しちゃったよ』


良かったよ、とホッとしている姿は、何だか

凄く失礼だよな・・・と感じる私。


『そうだねぇ・・・アリィの求めている言葉で説明するなら

オレは『アリィを守るもの』だね』

「えっ?・・・私を『守るもの』?」

『うん。オレはアリィを「守るもの」です。』


どうだ、凄いだろうと言わんばかりに胸を張っている

黒毛玉わんこだけど・・・


「えっと・・・あの、私を「守るもの」って・・何から?」


という私の質問に、途端に呆れた雰囲気を漂わせ始めた。


『何からって、「アリィを守るもの」っていうぐらい

なんだから、アリィの敵からに決まってるじゃん。』

「えっ?・・と、私の敵?・・・

 あの~、意味がわからないんですけど・・・

誰かと間違っていませんか?」

『あのね、アリィ・・・・・・

 誰かと間違っていたら、アリィの中からオレ産まれないし、

 それよりもさぁ、オレ、結構、命張ってきたのに

 守ってる相手に『全然知りませんよ』とか言われて、

 守りがいがないっていうか・・・凄っごくフクザツ~』


あっ、黒い毛玉がふてくされてる・・様な気がする。


「ごっ・・・ごめんね。

 だって・・・本当に敵とか言われたって、

 私、全然、思い当たる節ないから・・・。

 えっと・・・・私を『守ってくれる』って

 例えば、天使とかそういう感じのもの?」


目の前の黒毛玉の背中には羽も生えていないし

頭に光る輪っかもないけど。


『天使?オレが?

 はははっ、天使なんてものの発想は、

 本当に地球人的発想だよね。まぁ、しょうがないか。

 いままで、地球での生活長かったし・・・・。

 残念でした。オレは天使じゃないよ。』


んっ?

今、この黒毛玉は地球とか言っちゃってたよね。

地球・・・この世界ではそのフレーズ自体がないのに

えっと、どういう事??


『あっ、そっか。うん、確かに・・・。

 アリィの頭ん中、今、めちゃくちゃ混乱してるもんね。

 無理ないよね。ごめん、ごめん』


黒毛玉は、一人で何やら納得しているご様子。


「えっとグランツさん・・・今の話の内容からすると、

 今の私の状況を何かご存じですか?」

『アリィの状況?あ~、たとえばココにはないものの

 記憶があるとか・・・そういうこと?』

「そうそう!

 何だか夢見ているみたいというか。

 私はココでの生活とか記憶とかめちゃくちゃハッキリ

 覚えているのに、

 日本にもいた事あるみたいな記憶もあったりするし、

 しかも18歳なのに、アラフォー手前の記憶があるとか

 意味わからなくて・・・。

 しかも、考え方が18歳というより、

どちらかというとアラフォーになってる・・。

 本当に、何がなんだかで混乱中なの・・・」

『そうだよね・・・・まぁ、分からないでもないか。

 前の人生で自分の存在が消える瞬間が突然訪れたりすると、

 自分で納得する間もなくだから、混乱するよね。

 自分で、消えていく時を静かに感じていくのと、

 突然じゃ、全然気持ちの整理も出来ていないし。

 うん、わかるよ。

 でも、18歳なのに・・・頭の中身が大人って、ほんと

面白い状態だね。』

「面白いって・・・全然面白くないよ。

 だって、若いだけの感覚がもう全然分からないって

 何だか、凄く損している感じなんだもん。

 感動している部分の沸点が、10代の女の子じゃなくて

 40歳間近の感覚って分かる?

 箸が転がってただけでも『いや~ん。楽しいぃ』

 とか言っていた感覚は、もう、全然ないんだよ?

 お父様やお母様に近い感覚なんだよ。

 思わず、椅子から立ち上がる時も『よっこいしょ!』とか

 言いたくなっちゃうんだよ?

 体が上手く扱えないのは・・・・感覚的には違和感ないけどさ。

 ・・・・まぁ、ここまで体が鈍り過ぎてたのは予想外で驚いたけど

 でも、18歳なのに、若者の感覚が分からない私・・・・。

 グランツさんは、どうして、私がこうなのか

知っているんでしょ?教えて下さい!」


目の前の黒毛玉に必死に言うと、黒毛玉は答えた。


『はははっ。確かに今のアリィのものの考え方は

 どちらかというと大人の部分が色濃く残っているよね。

 でも10代の若さも全くない訳じゃないよ。

 可愛いものだとか、『魔法剣士』に憧れちゃうとか

 無鉄砲に色々やっちゃうところとか・・・

 そういうのって若いからじゃない?』


何か問題でも?という風に。


「いや・・・若いって言われている時点で、

若くないんですよ。

 だって、若い子には若いって言葉使わないじゃない。」

『ははははっ、確かに言えてるね・・・・うん。うん。

 でも、問題ないよ!全然オッケー』


グッて親指立てている意味が分かりませんけど!

 

『そうだね。うん、勿論、オレは『アリィを守るもの』だから

 アリィが混乱する記憶が何で混在しているのか知ってるよ』


黒毛玉が『教えて欲しい?』とニヤリと笑った感じがした。


「えっと、グランツさん。

 お願いします。是非、教えて下さい!!

 私は・・・・一体、誰なんですか?!」


強く懇願した。

だって、階段落ちしてからココの生活と

日本にいたらしい生活の記憶が

階段落ちからの数か月間、行ったり来たり

頭の中でモヤっと出てきて、

ずっと変な感じがずっとしていた。


それが今、スッキリ解消されるかも知れないんだよ!

スッキリ・・・。

うん、便秘が治るみたいな期待感?


『便秘って・・・例えがねぇ・・・。

 公爵令嬢じゃないよね・・・。

 その部分は確かに・・・

 でもアリィ、自分が誰かわからないなんて・・・

 めちゃくちゃヤバいんじゃない?』

「いや、そういう訳じゃなくて。

 自分が何のか、自分の記憶の分だけはわかりますよ。

 でも、今はその自分の記憶に変なものが混じって

 混乱してるんです。

 何で私がアラフォーとか思っちゃってるのか・・・とか、

 テレビだとかこの世界にないものを知っているのか・・とか

 ・・・・はっ!

 そう言えば、私が頭の中で考えただけなのにグランツさん

 みんな返事してましたよね!

 という事は、ほんとは私が口に出さなくても分かっているんでしょ?

 私のグルグル加減。その事ですよ!」


黒毛玉の体が小さいから、黒毛玉の肩をもって

ブンブンと振りたかったけど

それも出来ずに、ただ両手を握りしめて上下に振ることで、

私の混乱ぶりをアピールしてみた。


『あのね・・・・自分の状態を言葉で説明することを

 やめちゃったら、脳みそ、退化するよ。

 自分の言葉で、相手に何を知りたいのかとか

 何を感じているのかとか、

 自分の気持ちを伝える事をしなきゃ。

 言葉では説明しないけど、

 私の事、理解してくれるでしょ?とか出来ないから。

 相手の事なんて完全に理解できない。

 だから自分の思っている事をちゃんと説明する努力が必要なの。

 相手に自分を察しろなんて無理だし、それって傲慢じゃない?

 ・・・・。まぁ、オレは分かるけどね・・・』


黒毛玉に諭される私。


「すっごい前振り長い上に、叱られた気がするのに、

 結局分かってるって・・・。もう。

 でも、グランツさんが私のこと良く知ってくれている事、

 凄くわかる!言わなくても理解している事も。

 そして、今、私に色々教えようとしてくれるって事、

 私に教えたくて、しょうがないって事も!」

『うん・・・そうだね、

 アリィが今、オレに対してヨイショ作戦に切り替えて、

 気分を乗せようとした事もちゃんと分かってるよ。

 だって、オレはいつでも『アリィを守るもの』だからね。

 でもさ、オレの事全然覚えてないってのがなぁ・・・・』


ショックだよなぁ・・・と黒毛玉が言っている。


『でも、もう、しょうがないね。

 何時までもこのままじゃ話進まないし、

 それにアリィの事、オレ、凄く分かってるしね。

 そして、知りたい事も・・・。

 今も興奮しちゃって、自分の伝えたい事が

 上手く説明できないもの分かってる

 だから、しょうがないか・・・・』


黒毛玉がヤレヤレと言った風に、私を見上げて来て

教えてくれた。


『そうだよ、アリィが考えている通り、

 アリィは日本に住んでいた事がある。

 分かるでしょ?日本の事を覚えていること』

「やっぱり・・・・私、日本人・・・だったんだね」


だから、こんな記憶があるんだ・・・と私が思っていると

”違う違う”と言わんばかりに、手を振る。


『正確にいうと、日本人ではなかったよ。っていうか、

 地球人になった事はない』

「えっ?でも、日本に住んでいたんだったら日本人でしょ?」

『日本に住んでた事があるからって言ったって、

 日本人であるとは限らないし、そもそも地球人であった事も

 ないよ』



ん?・・・・意味がわからないですけど?


「じゃぁ、なんで地球人じゃないのに日本に住んでたの?

 私、宇宙人だったわけ?」


頭の中に、銀色の目が大きい、いかにもな宇宙人の姿を

思い浮かべると


『プッ。なに、その銀色の宇宙人・・・

 さっきの天使も同じだけどさ、

 地球人から見たら、地球以外の生命体を宇宙人って

 言いたいのはわかるけど、アリィの考えている宇宙人じゃないよ。

 ・・そうだなぁ。しっくりした言葉でいうならば

 ・・・・『異世界人』?』

「えっ?異世界人??

日本に異世界人として、私、生活をしていたって事?」

『あ~、う~ん、それもちょっと違うんだよなぁ・・・、

 でも、日本人とか宇宙人とか言うよりも、近いかな』


黒毛玉の言葉は意味不明な事ばかり。

日本人でもないし地球人でもないし宇宙人でもないのに

日本に住んでて、異世界人だけど異世界人に近いって・・・

・・・・はぁ?


「説明を受けたら、ますます混乱してきました。

 日本人だったって言われた方が、よっぽど理解できます」

『うん・・・・

 日本人ではなくて、異世界人として日本に日本人として

 いたんだ。』

「異世界人なのに、日本人?・・・・また理解不能な状態が」

『そうだなぁ・・・アリィの分かる言葉で説明すると・・・

 何が一番いいかな・・・・・

 あっ、そうだ、似た言葉でいったら「取り憑く」みたいな?』

「取り憑くって・・・・私、おっ・・・お化けだったの??」

『あれ?そういう反応されると、違う気がする。」

「えっ・・・でも、取り憑いていわれたら、

 私の体がなくて、日本にいた時の自分の姿を思い出せない

 意味も分かる気がするけど・・・ということは霊魂?」

『ん?なにそれ?違うよ。

 アリィが日本にいた時の姿を思い出せない理由は

 身体がなかったという事じゃなくて、

 アリィの記憶に問題があるんだよ』

「えっと・・・・それは、どういうこと?」

『理由は簡単。

 アリィが頭の中に強く想い描いた姿は、

 日本にいた時の日本人の器としての自分じゃなくて

 ”アニメのキャラクター”なわけ。

 その『人の形』の記憶が、死ぬ間際に

一番強烈な記憶として強く印象に残ったからね。

アリィの記憶から、日本人の姿が消えちゃったんだと思う。

 日本にいた時は、今のアリィとは違う姿だったよ。

 もっとも、オレもアリィの目を通して認識した

 アリィの”姿”でしかないけど』

「そっか・・・。

 やっぱり、日本にいた時の私は、今の姿とは違うんだね。

 ・・・という事は、転移してきた訳じゃないって事だよね」


私が良く読んでいた、「異世界転移」の物語であるなら、

姿形はそのままで、世界を渡るけれど、

姿が違うなら、私の体は元の場所に残ったままって事になる。

つまり、私・・・死んじゃったって事だよね。


『死んじゃった・・・って言ったら、死んじゃってるけど。

 でも、日本にいた時から考えると死んではいないよ。

 そのまんま。アリィのまんま』

「死んでるのに、死んでないって・・・ますます意味が・・・」


黒毛玉の言葉はなぞかけの様で、

日本にいた時の私は、なぞなぞは苦手だったから

その言葉の裏側を読み解く事は難しい・・・。逆に、

モヤモヤし始めて、気持ちが悪い。

スッキリ教えて欲しい。


「分かる様に・・・・そこのところを、もう少し詳しく。」

『え~、でも、なんだか、だんだん面倒くさくなってきたよ』

「いや、だって、まだそんなに話してはいませんが・・・」

『面倒な事だったら、気分を変えちゃえ・・って言う

ものの考えはアリィの考えでしょ?

 さっきも言ったけど、今のオレは『アリィに産み出された』

 ものだから、アリィの性格に似ちゃうの・・・。お分かり?』


私・・・そんなに、面倒くさがりなの?

黒毛玉を見て、客観的に反省した。


『まぁ、分かったよ。もう少し教えてやるから

 ・・・感謝してよね』


黒毛玉はそう言って、話を始めた。



グランツのイメージ、

途中から、サイズがガ◯パールに

なりました

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