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とんだ事になりました③

1日ずれましたけど・・・何とか。

「あら、この会場に相応しくない方がいらっしゃるわね」


金色の髪をなびかせた水色に見える瞳が印象的な

絶世の美女が真打登場的な雰囲気で

舞踏会会場の入り口に現れた。


『・・・・だれ?』


私は、私と魔王様だけのダンスフロアに

コツコツと足音を立てて近寄って来る美女を見る。


腰の辺りまである黄金を溶かしたような濃い色の金色の髪は

軽くウェーブしていて、歩く度にフワフワ揺れている。

透き通る様な白い肌、赤い唇、

魔王様をジッと見据える水色の瞳が美女の意思の強さを

現すかの様にキラキラと光り輝いている。


しかも、美女っぷりを更に上げる衣裳も身に纏っている。


真珠のような光沢のあるオフホワイトの布地には、

透かしの様な金色の刺繍が施され、

布地が灯りに照らされると、光に反射してキラキラ光る宝石が

ドレスの至る所に散りばめられ、金糸で縫い止められている。


ラノベに良く登場する『聖女様』がいたら、

きっとこんなゴージャスな法衣を着ているんじゃないかな?

そう思わせる様な露出の少ないマーメイドスタイルのドレスは

美女の美人度を何割も増す役割を果たしていた。


『この人・・・・すっごく美人』


っていうのが、私の美女の第一印象だった。


そして更に目についたのは、

頭の上の王冠ティアラと胸元に光り輝く首飾りだ。


美女の黄金の頭の上には、

プラチナの地金にダイヤモンドで作らた花や葉のモチーフが

複雑に組み上げられた王冠が乗っていて、

その王冠の真ん中には見た事もない様な

黄金色に光り輝く宝石が存在感を示す様にドンと輝いていた。


そして、首元には王冠ティアラと同じデザインの首飾り。

その首飾りにも、小さな卵ぐらいの大きさの黄金色の宝石が

付けられていて、キラキラと輝いている。


『あの石って・・・・もしかして、ダイヤモンド?

 イエローダイヤモンドかな・・・・?それとも、

 ゴールデンダイヤモンドなんてあるのかな??

 すっごい、あんなに大きくて金色に輝く

 ダイヤモンドなんて初めてみた・・・・

 あっ・・・でも・・・」


私は美女が身に付けている宝飾品に、

耳飾りと指輪が揃っていない事に気が付いた。


こういう会で身につける宝飾品は、

首飾り、耳飾り、指輪に同じ宝石をつけたセットものが多い。

ちなみに今日の私の宝飾品は、

グランツの入っている魔石の色合いに近いアメジストで統一されている。

蒼薔薇ドレスにアメジスト。

神秘的な感じが私もお気に入りだ。でも・・・


『宝石に似う服まで選んでって感じの人なのに、

 耳飾りと指輪の石が違うなんて・・・・。』


美女の黄金の王冠ティアラと首飾りが目立つだけに

同じ石じゃない耳飾りと指輪を見て

どうして揃ってないんだろう・・・・。

何故だか理由が分からないけれど、凄く気になった。


美女は魔王様の前まで歩いてくると魔王様の前でピタリと立ち止まり、

魔王様の瞳に自分の瞳の視線を合わせた。

私は至近距離に近寄ってきた美女の視線に入らない様に

魔王様の身体に隠れる様に背中に回って身を潜めた。


大体、こういう風に「遅ればせながら」的に登場してくる人物って

物語の展開的に嵐を巻き起こす事が多い。


万年壁の花だった私が魔王様とダンスを踊る事で衆目の的になったけれど

出来ればこれ以上目立つ行為だけは何とか避けたい。

気持ち的には


「あっ・・・・・では、私はこの辺りで・・・」


って、そそくさと退場したいところだけど、

残念ながらダンスフロアにいるのは魔王様と私だけだし

その場を離れるどころか、動く事すら躊躇う雰囲気が漂っている。


だから、出来る事と言えば

目の前の、背の高い魔王様の身体の影に隠れ逃げ込むしかなかった。

・・・壁にしてごめんね、魔王様。


「貴方がこの様な華やかな場所にいらっしゃるなんて、

 どの様な心境の変化かしら。

 話を聞く限りだと、ダンスを踊られる事などないと

 お聞きしましたけれど、珍しい事もあるものね」


美女が魔王様に語り掛ける。

その声も可愛いし、美しい。

うん・・・・鈴を転がすような声って、

きっとこんな感じなんだろうな。

まさにアニメでいう『ヒロイン声』


『『そう言えば、魔法少女セレス』のヒロインだったセレスも

 可愛い声してたよね。

 まぁ、私はアリィシア一筋だったから別に好きじゃなかったけど

 人気の声優さんが当ててたし、可愛い声は人気があったよなぁ。

 この美女の声って、セレスに似てるよ。

 でもヒロインの声って大体似てるし・・・

 ・・・それに、似てるって言えば、

 美女はセレスと同じ髪の色と水色の瞳だよね・・・。

 アクアマリンの色だっけ?透ける様な水色設定。

 普通、ヒロインってピンクだとか赤の戦闘服が多いけれど、

 セレスは水色だったんだよね。ちょっと変わってた。

 そういう意味では似てる・・・・けど、

 セレスは高校生で可愛い系だったから、

 目の前の様な美女設定じゃなかったけどね。

 私の見た目みたいに『アニメのまんま!若くなったっ!』

 って感じじゃないから、セレスとは別人なんだろうけど・・・

 でも、これだけ似てる要素があるんだもの。

 結構、親戚とか、そういう設定だったりして・・・・』


なんて、密かに脳内妄想へ瞬間的トリップをしていると

そのトリップした意識を呼び戻す

  

ドスンっ・・・ドスッ

 

という重いものが床に落ちる音が立て続けて耳に入り、

私は意識を戻してその音の方へと視線を向けると

フロアの周りに立っていた貴族が


「うぅっ・・・・」


胸元を掴む様に服を握りしめた状態で

膝を折って顔を歪めている姿が見えた。


『えっ・・・・・一体、何が??まさか・・・また?』


ふと、私の隠れ蓑にしたてた魔王様の顔を見上げると


『きっ・・・金・・・・・

 魔王様の瞳が、金色に戻ってるっ・・・・

 ど、どどどどうしたらいいの!!』


ダンスをしていた時は、魔力を押さえたと言って魔王様の

瞳は黒色になっていたのに、

今、美女を見る魔王様の目は威嚇する様な金色に変わっていた。


『この場合、私はどういう行動したら正解なの!

 えっと・・・・えっと・・・分かる訳ないよぉ。

 『鉄壁な微笑み』なんて、浮かべてる場合じゃないし、

 そもそも浮かべたって意味ないし!

 はっ!そうだ、リィドルフ兄様!兄様は!!』


動揺しつつ、答えを求めようとフロアの端にいる筈のリィドルフ兄様を見ると、

兄様は他の貴族とは違ってその場に立ってはいたけれど、

その瞳は私に向けられているのではなくて美女に向けられていた。

美しさに見惚れてポーッとしている・・・という感じではなく、

ジーッと観察する様な冷静な瞳だったけれど。


『・・・・兄・・・様?』


私がリィドルフ兄様を見つめていると、魔王様の


「ロゼリア・リル・ド・セレスティア」


言葉が耳に入った。


『ロゼリア?・・・・って』


私の視線が魔王様の背中に向けるのと同時に


「あら・・・私の名前を憶えていて下さったのね。

 悪魔と世に名高い貴方の記憶に留めていただけるなんて

 光栄・・・とでも言っておきましょうか、

 アルフレッド・エル・ヴァルディア王兄殿下」


魔王様の名前を口にした美女は、

フロアの方々で蹲っているギャラリーの様子を

全く気にする事もなく微笑みを浮かべて魔王様を見たけれど、

その美女の微笑みをみた瞬間、

私は何か薄ら恐ろしいものを感じてしまい、

背中をゾクリと震わせた。


『・・・なんだろう・・・寒気?・・・分からない。

 けど・・・嫌な感じ・・・・』


危ないものには近寄ってはいけないよ・・・


第六感的な感覚。

言葉では説明しにくいこの感覚。

でも、私には美女の湛えた微笑みを見ると

何故か身体に震えが走った。


今日、初めて魔王様に出合った。

恐怖の対象とか悪魔とか言われていたけれど、

私は魔王様に対して恐怖を全く感じなかった。


それどころか、私を励ましてくれる良い人だなって思って

もっとお話しをしたいなとも思っちゃったし、

気持ちよくダンスを踊らせてくれて最高!

人の噂なんて全くアテにならないって思った。


でも、同じく今日初めてあった美女を間近で見ると、

何故か私の頭の中に危険信号が走る。

早く逃げろって叫ぶものがある。

心臓がドキドキと鋼を打つ・・・。


綺麗なものには毒があるよ・・・。


そんな声が耳元で囁かれる感じがして

私は『恐怖』を感じた。

一体何故なのか分からないけれど。


私は無意識に『恐怖』から逃れようとしたのか

バングルを嵌めた右手をギュッと胸元で握りしめると、

私の想いに反応するかの様にグランツの宿る魔石が一瞬、

キラリと光る。


『・・・・グランツ?』


私が一瞬煌めいたその光に視線を落とした時、

 

「セレスティア王よ・・・・争いはこの場では止めて頂きたい」


玉座に座るザルシュ王の言葉が耳に入った。

王様を見ると、王様は魔王様の威圧の影響を受けずに

堂々とした姿を見せていて、

その隣にいる父様も厳しい瞳でこちらを・・・美女を見てる。


「まぁ、ザルシュ王よ。

 可笑しな事をおっしゃいますのね。

 勿論、私は争いを起こす為にこの場に参ったのではありませんわ。」


心外だわという表情を浮かべる美女。

私はザルシュ王の言葉を段々理解すると


『えっ?セレスティア王?

 ええっ!美女は王様!!!

 しかも、あの、セレスティア王国の!!!

 嘘でしょ!まさか、いや、本当に女王様なの!!』


自分以外に『魔法少女セレス』の登場人物に近しい存在が

この世界にいるなんてと、

魔王様の身体の影に隠れている事も忘れて

美女をマジマジと見てしまった。


『たっ・・・確かに、セレスに似ているとは思ったし、

 もしかして親戚かも?なんて冗談でも思ったけれど・・・

 まさか、本当に?この人が女王様?

 グランツが異世界だって言ってたけど、アニメの世界なの?

 ええっ!』


平行線にあるかも知れない異世界転生ならば、まぁ、あるかもって

今は思う。

実体験してる途中だし、パラレルワールドの世界とか、

地球にいた時の記憶にも、そういう言葉があるくらいだし、

あまり詳しくはないけれど・・・。

だけど、アニメの世界だなんて・・・。空想の世界でしょ?

実在しない世界じゃないのに、なんで??

って、私の頭の中は、ちょっとパニッくっていた。


でも私の動揺なんて周りは全く関係なく物語は進んで行く。


「私がこの国に滞在をしているこの時に、

 王主催の舞踏会が開かれるというではありませんか。

 聞けば、ヴァルディア王国に嫁がれたヴィオラ王妃様が

 一時帰国されたお祝いの席であると。

 ならば、この国に立ち寄らせて頂いている私は、

 ご挨拶に伺わなければと思い参りましたの。

 隣国、セレスティアの王として。」


「しかし・・・・・貴殿の国セレスティア王国と

 ヴィオラのヴァルディア王国とは

 同じ場に居合わせない事が我が国、そして三国の間での通例。

 王も知っての通り、我が国は二国との争い事を望んではおらぬ。

 故に、敢えて貴殿にこの会への招待を出す事はしなかった。

 しかし、何故にそれを無視しこの場に参ったのか。

 この場がこの様になった理由を、是非ともお聞かせ願いたい」


「あら?ザルシュ王。

 私がここいる理由なんて、ただ一つですわ」


美女こと、セレスティア王国の女王様は魔女の様な微笑みを浮かべた。


「ザルシュ王の仰る通り、私達わたくしたちセレスティア王国の者は、

 ヴァルディア王国の方がいらっしゃる場に顔を出す事はありません。

 ですが、ヴィオラ様は、幼少の頃から知っている方。

 いくら友好を結ぶ手段とはいえ、あの野蛮な国に嫁がれたのです。

 どの様にお過ごしになっているのか常日頃気にかけておりましたから

 直接、自分の目で確かめようと思ったのです。

 それに・・・・・」


ザルシュ王に向けていた目を魔王様に向けると


「悪魔と呼ばれるこの方が、

 まさか、この様な華やかな場所にいるとは思いませんでしたもの。

 知っていたら、命の危険を感じて身を隠しましたわ。」


綺麗な顔した女王様の瞳がギラリと光り、

魔王様と静かな睨み合いが続く。

そしてその影響は多くの貴族の方々に伝わっていき、

私の耳には小さな呻き声と小さな悲鳴が入る。


人々の乾杯のグラス音の代わりに、

ダンスフロアを明るく照らすシャンデリアのガラスが、

魔王様と女王様の、空気を震わす得体のしれない何かに反応して

カチャカチャとガラスがぶつかる小さな音を響かせ始め、

先程までの華やかな場所とは、まるで違う場所になって・・・

私はその様子をゴクリと喉を鳴らしながら見た。


『ヴァルディア王国とセレスティア王国は国同士の争いがあって、

 それが原因で今もお互いの顔を見たら

 一触即発な雰囲気になりかねない。

 だから、フィリアリブン王国で開かれる社交界の場には

 どちらか一方を招いた時は、もう一方の国は別の日に声を掛ける。

 つまり二つの王国が同時にこの国にいる時は、

 社交界は二度開かれる事になっているという暗黙のルールがあるんだって

 クリスベル姉様が言ってた。

 

 確かに、こんな睨み合いの様な感じが毎回あったら、

 主催者の王様だって気が気じゃないよ。』


魔王様と女王様の睨み合いの結果、フロアでは今も呻き声が聞こえてる。

でも、これは魔王様の気に当てられたものだと思う。

だって、さっきと同じ状態だから。


『私は何故だか平気だけど、他の人があんな感じじゃ

 私がもし主催者側だったら、絶対、

 同じ場所に合わせない様にするよ。


 あっ!そう言えばさっき、クロムリード公爵夫人と

 リィドルフ兄様との会話で、今日は、『魔王様』だけじゃなく

 『女王陛下』もいるからって・・・なんて言ってたけど、

 この事だったのかな?

 だから、リィドルフ兄様が父様が必要だって言ってたのかな?』


この二人の揉め事でザルシュ王に何かあったら大変だもの。

側で武闘派の父様が控えて守るって言う意味、私、今、実感してるよ!


でも・・・と私は思った。


3つの国の王や王族が集まるのが、

いかに危険っていう意味を、

私は今日知ったけれど、社交界に常に顔を出している

噂好きの貴族達が知らない筈がない。

むしろ、もし相対したらどうなるかなんて

予測がついていた筈。


だから、王様だって二人を合わせない様に配慮していた訳だし・・・。

それに、魔王様と女王様・・・どちらが自分にとって危険な存在に

なり得るのか彼らは分かってる。


女王様を見つめる魔王様の瞳の色が、どんどん濃くなっていく。

完全に威嚇の瞳に変わってる。

女王様も、魔王様を見る目に殺る気が漂ってる・・・。


でも、女王様の瞳には周りの貴族を脅かすものは溢れ出てない。

その証拠に、恐怖の根源として、みんなが魔王様を見てるじゃん!


『このままじゃ、魔王様だけが悪者になっちゃう?』


幾ら後から登場して、問題に火に油を注いだのが女王様だったとしても

この状態のまま続けば場の雰囲気を壊した人よりも

命の恐怖を与えた魔王様に貴族の怒りが向かっていくんじゃない?


・・・・・そんな考えが頭に過ぎると、

私の中での女王様を見てゾワゾワしていた感覚が消えた。


【・・・・は、恐ろしい人ではないのです。

 誤解を生んでしまうけれど、本当はとっても優しい人なの。

 だから、怖がらないで受け入れて欲しいの・・・】


『んっ?なに、今の・・・・・・・』


頭の中に過ぎった映像。

昔の記憶を思い出したかの様な、それが何だか分からないけれど、

今の状況に似たような事があった様な・・・そんな気持ちが過って・・・


『なんなのぉぉぉ』と叫びたい気分だったけれど


「女王陛下ロザリア様、お久しぶりでございます。

 高い所からのご挨拶、申し訳ございません」


その場の雰囲気を変える為に発したであろう

王様の隣に座っていたヴィオラ王妃様の声に

私はハッと我に返った。

危なかった・・・・叫び出すところだった。


「ビオラ様。

 悪魔のいる国に嫁がれたとお聞きして、

 私、大変心配しておりましたの。

 ですから、貴女が帰国されたと聞き、

 大変な苦労をなされている貴女に慰めをと、

 ザルシュ王が言われている

 二国の王族が一つの場所に集らないという通例を破って

 来てしまいましたわ。

 でも、まさか、ヴィオラ様が

 悪魔公を従えてお帰りになられているなんて。

 他国に嫁がれてしまうと、その危険性を忘れてしまうのかしら。

 ほら、周りの皆様は、その被害を被って苦しんでいるわ・・・」


女王様の言葉は蹲る貴族達の耳に届く。

どんどん魔王様が悪者にしたてられていく・・・

自分達が苦しい思いをしているのは、悪魔のせいだと。


私の心が


【・・・彼は違うわ・・・】


と訴えていたけれど、女王様の言葉と自分の身に起きている事で

フロアの隅にいる貴族達の魔王様に向けられた目が恐怖に染まっていく。


「ですが女王陛下、ヴァルディア王国はとても良い国で

 女王陛下が心配される事は何もないのです。

 気候も、風土も、この国によく似ていて

 王も王兄殿下も民も、皆、私に大変良くしてくれます。

 今はこの様な・・・・ですが、陛下も、王兄殿下も

 私にはとても優しい方で・・・」


ヴィオラ王妃様が女王様に真っすぐに視線を向けていうけれど


「そうかしら?

 でも・・・・

 周りの方々はそうは思っていないのではなくて?

 貴女も、その胸元に光る魔力阻害の石を身に付けていなければ

 ここにいる貴族達と同じ様になるという事は、知っているでしょ?

 ザルシュ王や、そこにいらっしゃるアードルベルグ辺境公爵様とは

 違い、貴女は戦いの場に立った事はない。耐えられない筈・・・。」


「そ・・・それは・・・・」


女王様がフロアを見渡す。


「この様な華やかな場所に似合わないものを発する者など

 穏やかなこの国には似合わないのです。

 ヴィオラ様は、ヴァルディア王国を良い国だと仰いました。

 けれど、国王の兄である悪魔公がなされていること見ると、

 私、とてもそうは思えません。

 

 金色に光り輝く瞳。他の方々と違う風貌。

 多くの口さがない方々はおっしゃっているでしょ?

 悪魔公は『呪われた』人だと。

 御覧なさい、彼がしている事を。

 貴女も、そしてザルシュ王もよ。

 ヴァルディア王国を信頼なさっていると、

 きっと後悔する事になるわ。

 私の国が、かつてヴァルディアにより被害を被った様に。

 平和な国を蹂躙するなど悪魔の所業。

 ヴィオラ様、貴女も本当は嫌なのではなくて?

 いつも魔力阻害の石を身に付け、

 気を使わなければならいなど、気の毒としか言えないですもの。」


「いえ、・・・・決して、その様な事はありません」


「でも、こちらにいらっしゃるフィリアリブン王国の方々は

 どうかしら。

 ヴィオラ様と同じ事を、この様な状況でも言えるかしら?」


「・・・そ・・・それは・・・・」


「怒りを止められない野蛮さ。

 その心を持ち続けている限り、私達も、

 この国も安心してはいられない。

 悪魔公に関しては、ヴァルディアにおいても

 同じことではないかしら。」


女王様は、見た目が聖女でヒロインなのに、

口から発言される言葉は辛辣で、まるで悪役ヒロイン。


女王様とヴィオラ王妃様との会話を聞きながら


『女王様・・・・もしかして、ここに来たのは

 魔王様の事を多くの人に恐怖の存在として

 植え付ける事が目的なの?

 そうとしか・・・思えないよ・・・・』


私は蹲る多くの貴族達の視線を見ながら、

魔王様の後ろでそう思った。

だって、この場が恐怖に支配され始めているのを

私だって感じたから。


・・・どうしたらいい・・・。

どうしたら、魔王様は悪魔じゃないって伝える事が出来る?


私がそう考えている時も、

魔王様の怒りが膨れ上がって、

フロア中に広がっていくのが分かって、私は焦った。


どうしたら・・・。

どうしよう・・・。

・・・・えっと・・・もう・・・


どんどん膨れ上がる魔王様の怒り。

そして、目の前の女王様の口の面白そうに歪んだのを見て

私は焦って・・・・・そして


ギュッ


気が付いたら、魔王様の腕をぎゅっと掴んでいた。

すると、


パチンっ


音がしたかと思うと、

さっきまで膨れ上がっていた魔王様の怒りが嘘の様に消えた。



「へっ?」


私は一体何が起きたのかと、気が抜けた声を出すと、


「・・・・君は・・・・」


魔王様の右手を両手でギュッと握りしめている私を見下ろした魔王様が

驚いた声でそう呟くと


「・・・・・これは・・・一体どういう・・・」


突然の闇の気が離散した事に当てが外れた女王様の目が

ギュッと私に向き


「・・・・これは、そなたの仕業か?」


と、仕組んでいた罠を暴かれた苛立たしさが

滲み出た声で私を見る女王様の視線を感じて


『しっ・・・・しまった。何か分からないけど、

 やっちゃいけない事・・・・したっぽい!!』


という動揺を


「えっ・・・・と、いえ、私ではなくてですね・・・」


どう返答をして良いのか分からずに、しどろもどろで答えるのと同時に


ピカッ!!!


女王様の胸元の黄金のペンダントが光ったかと思うと、

女王様の前に、青銀髪の女性の姿がフワっと現れた。


もっと早く展開を回したいです。

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