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星の欠片争奪戦

 敵対している部族。それはどんな敵なのだろうか。


「敵対している部族の目的はなんなのですか?」


 俺の問いに、男性が答える。


「星の欠片を求めている者達だ。奴らは、これを聖なる石として祀ろうとしているのだ」


 祀ろう? この隕石をなのか? なぜなんだ。


「何故、その部族はこの石を祀ろうとしているのですか?」

「それは、一年前だ。空からこの巨大な鉱石が落ちてきた。その時、大地から緑の光が現れて、巨大な鉱石を受け止めたのだ」


 大地から緑の光が現れて、鉱石を受け止めた? そんな事ありえるのだろうか。

 だが、この鉱石が落ちたらこの村落は隕石の余波で全滅していただろう。

 それを考えれば、本当にあった事なのかもしれないな。

 それにしても謎だが……。


「それを奴らは神の御業としてこの鉱石を神の石と評し、崇め奉りたいのだ」

「なるほど」


 恐らく、敵対している部族は聖歴と名を付けた部族だな。

 前世の世界だとキリストの生誕から西暦が付けられた。

 敵対している部族もそういう事なのだろう。

 だとするならばどうすれば良いのか。

 聖歴と、名付けられたのならば敵対している部族が勝ったという事。

 これを俺達が無理やり勝利させたら問題が発生するのではないか?

 そう、タイムパラドックスだ。聖歴が生まれない。その可能性はあるのではないだろうか。


「おじさん。敵対している部族に星の欠片を一部渡せば良いんじゃないの?」


 エイミーはそう尋ねる。確かにそうだ。そうすれば、戦いは起こらない。何の問題もなくなる可能性は高い。


「戦わずして、何とする!」


 一喝されてしまった。やっぱりこの人はアルバーンの人だな。村長そっくりだ。


「敵の規模とかは分かっているのですか?」

「敵の数は五百人だ」


 五百人! 多いな。明らかにこの村落で戦える人数ではない。


「因みに、この村落の戦える人数は何人ですか?」

「百人と少しだな」


 五倍の差か……。これはひっくり返すことが出来るのか?

 過去の世界だから、戦争はそこまで起きていないはず。

 戦争慣れはしてないはずだ。ならば、行けるか?

 それでも五倍の差は厳しいものがあると思うけどな……。


「分かりました。協力しましょう。お名前を聴いても?」

「ベン=アルバーン。この村落の長をしているものだ」


 手を差し出して、握手をする。


「俺はクリス。クリス=オールディスです」

「私はエイミー=ラバルです。こっちはアル」

「アルです」


 一通り、挨拶を済ましてから現状を確認する。


「魔法や弓矢を使える者はどれだけいますか?」


 その言葉に村長のベンさんは憤慨する。


「遠距離をする軟弱者など、この村にはいない! 剣のみが全てだ!」


 おいおい。これはマズイんじゃないか。明らかな脳筋だろ。

 敵に遠距離攻撃手段があったら、勝てないぞ。

 だけど、この考えを変える事は出来ないだろうし、今から弓矢や魔法を使えと言って、使えるわけでもない。

 と、なれば肉弾戦に持ち込むほかない。

 なんとかして不意打ちを狙う形じゃないと行けないな。

 そんな事出来るかはわからないけど。


「……ねぇ、これって勝てるの?」


 小声でエイミーが聴いてくる。


「正直、厳しい。だけど、やるしかないだろ」


 こちらは星の欠片が欲しいのだ。仕方ないが、やるしかないのだ。


 すると、そこに馬に乗った白い僧侶みたいな服を着た男性がやって来た。


「村長とお見受けする。我らはクライン王国の使者である!」


 クライン王国の使者! クライン王国ということは聖歴七百五十年の国王陛下の国の名前だ。

 この時代から存在したのか。


「ワシが村長のベン=アルバーンだ。使者よ何用だ」


 ベン村長は腕を組んで威圧している。


「王より、星の欠片を差し出せ。さもなけば、この村を滅ぼす! との事だ。明日の早朝に攻め入る。それまでに差し出すか、戦うか決めろとの事だ」

「ふんっ! 降伏などありえん。戦うのみ!」

「その言葉に偽りはないか」

「偽りなどあるか! さっさと去れ!」

「相分かった。そう伝えよう」


 使者は馬を翻して、走っていった。


「どうするのよ。クリス! クライン王国と戦うの!?」


 エイミーも不安そうな顔をしている。


「どうするかな……」


 クライン王国ということは、敵を倒して、万が一王様を討ち取ったらタイムパラドックスが起きる。それは、未来が変わってしまうという事。

 となれば俺達はどうすれば良いのか。

 どちらかが滅んでもいけない。どちらも生き残らなければいけないのだ。

 つまり、一番良い選択肢は痛み分けだ。

 それを目的として戦うしかない。


「エイミーはなにか良い案はあるか?」


 俺の問いに、エイミーは唸る。


「恐らく、これはどちらかが圧勝してもいけない。出来れば引き分け。両者痛み分けにするのが一番賢い選択なはず」

「俺と同じ考えだな」


 エイミーもその考えに思い立ったようだ。なら、その線で行こう。


「話は終わったか。クリスよ」


 村長から声を掛けられた。

 今までコソコソと話していたからな。気になっていたのだろう。


「ええ、とりあえず明日には参加します」

「おお! そうか。ありがたい。では、今日は家に泊って行くが良い」

「それは願ってもないですね。ありがとうございます」


 村長の家に入っていく。今日は寝床に悩まなくても良いようだ。ありがたいね。




 そして、次の日。


 村の前の平地にこちらは百人。相手は五百人が展開していた。

 クライン王国側は騎馬が百と歩兵三百に弓兵百と言った所か。


「圧倒的に不利だな」

「ええ、どうしようもないわね」


 クライン王国側は歩兵三百と弓兵を動かしてくる。

 じっくりと近づいてくる歩兵と弓兵。

 こちらは百人だ。しかも、全て歩兵。

 敵には遊撃の騎馬が百もいる。

 

「さて、どうしたものか」


 村長達は柵を用いて、防衛線に徹するようだ。

 だが、弓兵はいない。相手の弓兵に良い様にやられてしまうだろう。


「俺達で、弓兵と騎馬を何とかするしかないな」

「できるの?」

「時間があればなんとか」


 その時間を取るのが難しいんだけどね。


「兵よ! 星の欠片を求めし輩に鉄槌を与えるぞ!」


 百人が歓声を上げた。

 士気は上がった。だけど、人数差は歴然としている。

 


 そして、敵の歩兵と弓兵が目の先まで来た。

 相手から弓矢が雨あられと降ってくる。

 

「アル! 任せた。六十秒持たせてくれ!」

「任務、了承。背面装甲解除」


 ズシンと地面に装甲が落ちてそれを右手に持つ。

 弓矢をアルが全て盾で防いでくれている。

 この間に弓兵部隊にデカいのをぶつけてやるぜ!


「大空を満たす光よ、一条に集いて――」


 全身を膨大な魔力で発光する。

 体から魔力がごっそりと抜け落ちていった。

 膨大な魔力が敵部隊の弓兵の頭上に展開される。


「――神の裁きとなれ! 天罰の(パニッシュメント)雷鳴サンダー!」


 雷鳴が敵部隊の多くを襲う。

 裁きの雷が、敵の弓兵部隊が半分まで削れていた。

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