表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/37

聖剣の鍛冶師

 なにか頬を突かれている感触がある。なんだろうか。

 鬱陶しい。寝かせてくれ。昨日は疲れてへとへとだったんだ。今日くらいのんびりさせてくれても良いだろう。

 だが、頬を突く感触は無くならない。

 ええい、なんだよ!

 俺が目を覚ました時、エイミーが俺の頬を突いていた。


「エイミーだったのか。もう少し寝かせてくれよ」


 俺のうんざりした声にエイミーが答える。


「あら、もう朝も遅いわよ。そこまで起きるのを待ってたんだから感謝して欲しいわ」


 そうなのか。もう、そんな時間だったのか。立ち上がり、窓を覗いて太陽を見る。

 確かに、早朝とは違って太陽は結構昇っていた。


「うーん。寝たりん。もっと寝かせてくれ」

「えー、そろそろ朝ご飯食べに行きましょうよ」


 朝飯か。そう言われると、腹が空いてくる。仕方ない。朝飯を食べるとするか。


「言われたら俺も腹減って来た。行くか」

「はーい」


 俺達は食堂に向かって、歩いていく。

 

 そして、食堂に着いた。

 するとこちらに向けて視線が一斉に向いてくる。


「え、英雄殿だ!」

「まじか、英雄殿か!」

「俺、握手してもらおうかな」


 と、大騒ぎである。いやぁ、有名人は辛いね。

 とりあえず、良いから朝飯を食べさせてもらおう。

 配膳を頂き、手ごろな椅子に座って朝飯を食べる。


「なんだか、今までとは雰囲気が全然違うわね」


 エイミーがそう言う。確かにそうだ。周りを見ると、楽しそうに会話している兵士やカードで遊んでいる兵士もいる。


「戦争が終わったから、気が緩んだのかもな」

「そっか。そうよね」


 それもそうだ。なにせ、四日間も戦争は続いていたのだ。

 その時の兵士達の顔は、死んだ魚のような目をしていた。

 誰もが顔に死相が出ていたしな。

 それを考えれば、やっと落ち着いたと気が緩んでも仕方ない。

 俺もそうだしな。大戦果を上げたという喜びよりは、寧ろやっと戦争が落ち着いたという安ど感の方が強い。

 それだけ、張り詰めた糸のような四日間だった。

 だって、そうだろ? 攻城塔を破壊しろ! みたいなニュアンスの命令を受けたり、ハッキリとカタパルトの的になれと言われたんだぜ。

 いつ、死ぬか分からなかったよ。本当にな。


「みんな楽しそうね」

「ああ、本当にな」


 これが日常。これが普通なのだ。誰もが安心している。

 そして、それを終わらせる事が出来た。その実感がどんどん沸いてきた。

 俺がタータルハードを倒したんだな。俺が、戦争を終わらせる決定打を打ったのだ。


「あの! 英雄殿! 握手をお願いします!」


 俺と同年代がそれくらいの若い兵士が、俺を尊敬の眼差しで見つめてくる。


「はいよ。お疲れ様」

「ありがとうございます! 英雄殿!」


 若い兵士は嬉しそうに去っていった。


「人気者ね」


 くすくすと笑うエイミー。それに苦笑する。


「本当にな……」


 皆の不安を取り除くことが出来た。希望を与えることが出来た。

 そう考えると、こんなパンダみたいな扱いも悪くないかもな。そう思った。



 朝食を食べ終えて部屋に戻ると、扉をノックされた。


「英雄殿! 国王陛下がお呼びです!」


 胸が高鳴った。遂に来たか。俺達の本当の目的。さて、聖剣エクスグラスについてなにか知っているのだろうか。少しでも情報が手に入れば御の字だが……。


「はい! 承知しました!」


 エイミー達を見て、頷く。行こうか。

 扉を開けると豪華な鎧を着た騎士が立っていた。

 その鎧も少し、血に濡れて黒ずんでいる。

 彼も戦ったのだろう。そして、生き残った。

 あの地獄を戦い抜いたのだ。何故か、親近感が沸いた。

 階段を上がり、豪華で大きな扉の前に進む。また見ることが出来たな。謁見の間を。

 前回同様、騎士が両脇の兵士達と軽い問答をするや、俺達の身元確認も無しに扉を開けた。またか。警備がザル過ぎ! と言いたいが、国王陛下が良いなら問題ないのだろう。前もそうだったしな。

 扉の先は赤い絨毯が敷かれた床や、一段高い玉座に座る男性と女性の姿が確認できた。

 王と王妃だ。

 その両側には十数名の豪華な鎧を着た騎士が待機している。


 謁見の間に進み出て、先導してくれた騎士が玉座から四メートル程の位置にて止まる。

 そこで、護衛の騎士は脇にそれて跪いて頭を下げた。

 流石に二回目なので迷わずに、直ぐに脇にそれた騎士と同じように跪いて、頭を下げた。

 

「面を上げよ。また会う事が出来たな。クリス=オールディスよ」

「はっ! また、お目にかかることができて光栄です!」


 国王陛下は嬉しそうに笑っていた。

 だが、その目には隈が出来ている。国王も王妃も兵一人一人を労っていた。

 それに、情報が集まる所だ。心労も大きかっただろう。


「此度の戦もクリス=オールディスが、四魔将が一、タータルハードを討ち取ったおかげだ。感謝するぞ」

「勿体なきお言葉です」

「そう、謙遜するな。クリス=オールディスが戦争に終止符を打ったのだ。さて、ではあの時と同じで褒美を授けようと思うのだが、何か希望はあるか?」


 きたか。つい、エイミーを見てしまう。エイミーも頷いている。


「では、聖剣エクスグラスについてお教え願いますでしょうか」


 その声に部屋が静まり返る。


「聖剣エクスグラスは折れた。腰抜けのイアンの手によってな。それを承知で聴きたい、と。そう申すか?」


 腰抜けのイアン。久しぶりに聴いたな。イアンはそんな奴じゃない。だけど、周りから見たらそうなんだろうな。


「はい。出来れば、誰が聖歴何年に創ったのか。材質はなんなのか。他にも些細な事で良いのでお教え願います」


 国王は溜め息を吐いた。


「……それを聴いて、何が目的だ?」


 どうする? ここは言った方が良いか? 分からない。だけど、嘘をつく程のペテン師でもないのだ。

 ここは、目的を言ってしまった方が良いだろう。


「聖剣エクスグラスを鍛え直す為です」


 俺の声に皆、驚きの声を漏らした。


「聖剣エクスグラスを鍛え直す、と申したか」

「はい。その通りです」

「その目的はなんだ?」


 ハッキリと目を見て答える。


「魔王を倒す為に」

「魔王を倒す為か……」


 国王は唸る。そして。


「あい分かった。では、聖剣エクスグラスについて教えよう」

「ありがとうございます!」


 良し! ついに情報を手に入れる事が出来る。心音が高くなった。


「聖剣エクスグラスは聖歴五百五十年に創られた」


 聖歴五百五十年。ということは今から二百年前ということか。


「そして、聖剣エクスグラスは材質については分からない。すまんな。それは、伝えられていないのだ」

「いえ、問題ありません」


 材質は分からなかった。だけど、聖歴五百五十年に創られたのだ。それが知ることが出来ただけでも収穫は大きい。

 なにせこちらにはタイムマシンがあるのだ。聖歴五百五十年なら行く事も出来る。そこで聴けば良いのだ。


「それで、誰が創った者なのですか?


 国王は呟くように言った。


「……ルバーン」

「はい? もう一度お願いします」

「グラス=アルバーンだ」


 グラス=アルバーン。それが創った人の名前か。

 はて、なんか聴いたことがあるような名前だ。

 どこかで聴いたような……。

 アルバーン。アルバーン……。

 セシル=アルバーン。カーラ=アルバーン。

 

 そうだ。アルバーンは剣魔の里の村長達一家の名前じゃないか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ