6話 謎の夢、高い代償
ある日の夜、俺は夢を見た。どこか懐かしい感じがした。どんな夢かというと、そこは教室で1人の小学生ぐらいの男の子が泣いている女の子を背に、男の子の群勢と睨みあっていた。そして、少し話したら、一方的な殴り合いが始まっていた。1人の男の子はひたすら、男の子たちを殴り倒していく。怒りの感情をそのままぶつけるように、ただひたすらに殴り続けた。降参した子や気を失っている子にさえ殴り続けた。男の子はなにかを叫びながら殴っていた、上手く聞き取れなかった。気づけば、周りは静寂に満ちていて、聞こえるのは女の子の泣く声だけだった──
チュン チュンチュン
雀の鳴く声で目が覚めると、目の前には見慣れた天井が広がっていた。
「なんだっんだ・・・?あの夢・・・」
「兄さーん、朝ごはん出来てますよー」
俺があの夢について考えていると、下から聞き慣れた妹の声がした。考えるのはあとでいいやと思いつつ、制服に着替え朝ごはんを食べに向かった。
「それじゃあ、いってきます」
「いってくる」
「はい。いってらっしゃい」
朝ごはんを食べ終えた俺と恵美は、母に見送られながら家を出た。俺たちはいつもの通学路を通りながら話していた。
「そういえば恵美、お前生徒会はいいのか?」
「はい。今日は特に会議もないです」
「そうか。毎日大変だな恵美は」
「別そうでもありません。自分が好きでやっていることですから」
「母さんたちに恩返しするためか?」
「兄さん!?なんでそれを!?」
「いや、だってお前この前、俺の膝の上で寝てただろ?その時に寝言で呟いていたんだよ『お母さんたちの為に頑張る』って」
「うぅ///恥ずかしいです・・・」
「別に恥ずかしがることないだろ、立派な事じゃないか。親に感謝の意をしめすのは」
今更ながら、この状態こそ恵美の表の顔だ。言葉遣いや態度も全く違う。恵美は中学生の頃からこんな感じなのだが、以前、いちいち使い分ける必要があるのかと聞いた。そしたら恵美は焦ったように必要なの!と、言った。それからは、気にしないようにした。そんなこんなで学園についた。
「それでは、兄さん。また後で」
「あぁ、勉強頑張れよ。」
「頑張るのは兄さんの方です」
「肝に銘じておくから、友達のところに行ってやれ。さっきから向こうで待ってるぞ」
俺は昇降口でこちらを見ている女子2人を指した。友達の存在に気づいた恵美は一礼し、そちらの方に走っていった。すると、後ろから一文字が声をかけてきた。
「おはよう、高峰君」
「おはよう、菜月お嬢様」
「ちょっとなんなのよ、その呼び方」
「だって、お金持ちなんだろお前の家?だからお嬢様」
「今すぐ、その呼び方やめてくれない?」
「はいはい、おはよう一文字」
「おーす。光樹、一文字さんおはようさん!」
「おはよう、村上君」
「お前、なんなんだよその挨拶」
「近くの爺さんが使ってたから、パクった」
「それ恥ずかしいから絶対俺以外に使うなよ、それとおはよう敏也」
「さぁ、さっさと教室に行きましょう。朝のホームルームに遅れてしまうわ」
一文字のその言葉を合図に俺たち3人は、教室に向かった。今日も俺の平凡な日常が始まった──
「そうだな、この問題を高峰。前に出て答えなさい」
「はい。」
当てられた俺は、黒板に答えを書いていく。ちなみに今は、4時間目で数学の時間だった。ごつい体でいかにも体育系の郷田守先生が授業を行っている。確かラグビー部の顧問をしていたはずだ。
「うむ。正解だ。ちなみにここの数がわからなかったら、どうやってもとめるか、わかるか?」
「はい。」
俺はまた、黒板に答えを書いていく。あらかじめ、どんな質問がきても答えられるようにしてたから、スラスラ解けた。
「よし。正解だ。席に戻っていいぞ」
問題を難なく解いた俺は自分の席に戻った。席につくと、一文字が
「すごいわね、高峰君。あの問題をあっという間に解いてしまうなんて」
「別にすごい事じゃないさ。郷田先生が応用問題を出してくることは、予想できてたし」
「それはそれですごいわよ」
「お褒めいただき光栄です」
キーンコーンカーンコーン
「む。もうこんな時間か。それでは授業を終わる。テストが近づいているから、ちゃんと勉強しろよー」
話していると、終わりのチャイムが鳴っていた。ぞろぞろと、教室からクラスメイトたちが出ていく。皆、食堂に行くのだろう。だけど、今日俺はきちんと弁当持参していたので、皆より一足先に昼食をとる。
「いただきます」
「高峰君、今日はお弁当なのね」
「それがどうかしたのか?」
「いえ、なんというか、困ったというか・・・」
「お前のまさか、一緒に飯食べる人いないのか?」
言葉に少し寂しそうな感じがしたので、素直に思ったことを言ってみる。
「そ、そ、そんな事ないわ。いるわよ、ちゃんと一緒に食べる友達」
どうやら図星だったようだ。
「はぁー、おーい敏也。ちょっと来てくれ」
「なんだよ、光樹。急に」
「お前、今日一文字と一緒に食べてくれないか?どうやら、一緒に食べる友達がいないみたいだから」
「ジュース1本な」
「わかったよ、ちゃんと奢ってやるから頼んだぞ」
「あいあいさー。さ、一文字さん行こうぜ」
「ちょ、ちょっと押さないでよ」
敏也に背中を押されながら、一文字は教室を出ていった。その姿を見届けて俺は、また弁当を食べ始めるのだった。
午後の授業を終えて、放課後、敏也はわざと高いやつを俺に奢らせやがった。今度仕返しをしてやろうと心に誓う俺であった──
読んで頂きありがとうございます!どうも、ひのき棒です。今回は日常パート2です。どうやっても、昼休みの後が書けない(> <)改めて小説を書く難しさを知った今日このごろです。感想やポイント、ブックマークを頂けるととても嬉しいです!