3話 今日という日が終わる
あの事件の後、俺は家に帰っていつものように自分の部屋でゲームをしていた。しかし、頭の中には彼女の事しかなかった。黒髪ロングの子で大和撫子という言葉が似合う女の子だった。好きになったわけではない、ただ、どこか気になるのだ。
『私の名前は一文字菜月』
そう言って去っていった彼女はとても綺麗で今でも鮮明に覚えている。夕日の光によって輝き、風に乗ってなびく髪。お礼を言うときにしたあの表情。頭から離れない。
「一文字菜月か・・・あの子どこか悲しそうだったり、焦ってるかんじがするだよな~。」
俺は、中学生の頃からチェスや将棋などの心理戦ゲームもやっていたので、相手の心を読むことには自信があった。一文字菜月のあの表情、明るく見えるのだが、心の奥では、何かにおびえ俺に藁にも縋る思いで話しかけてきたように思えた。
「まぁ、ここに行ったら一文字菜月の事が多少なりともわかるか。」
そう呟きながら、もらった紙切れを眺める。そこにはこう書いてあった。
『明日、午後6時にマグフェリアの10番席で』
マグフェリアとは、蒼聖学園から徒歩10分のところにあるファミレスのことだ。少し値段が高いけど味はほかの店より群を抜いておいしい。値段以上のおいしさなので、県外からも人が良く来る。
「ところで、何で10番席なんだ?」
さっきも言った通り、県外からも人が良く来るため指定した席をとれる確率は朝を除いて0に近い。そんなことを考えていると、
「ただいまー」
と、落ち着いた声が聞こえてきた。俺の双子の妹、高峰恵美だ。恵美は茶髪のポニーテールが特徴だ。成績・運動神経ともに完璧で1年生ながら蒼聖学園生徒会会計をつとめている。まさに完璧人間だ。しかし・・・
「兄さ~~~~ん♪」
勢いよくドアを開けると、俺に向かってダイブしてきた。そして、猫が主人にかまってほしいかの如く頭を体に擦り付けてきた。そう、わが妹は超がつくほどのブラコンなのだ。学園では、立場や名誉などがあるので凛とした女の子なのだが、家に帰ると急変し兄である俺に甘えてくるのだ。表と裏の顔の差が激しいが自慢の可愛い妹だ。
・・・あれ?俺もしかしてシスコンなのか?そんなことを考えていると、恵美が
「あ、そうそう兄さん。今日生徒会で聞いた話なんだけどね、明日転校生が来るみたいだよ、兄さんのクラスに。」
「転校生?」
「うん。なんでも有名な定食屋を営業している人の娘さんだそうだよ。」
「へぇ~。それは明日が楽しみだな。」
「むぅ。兄さんは私のものなんだからね!」
「はいはい」
そんなやりとりをしながら、今日という日が終わる。明日に希望を持ちながら俺は、眠りについた。──途中でベットになにか入ってきた気がしたけどあえて気にしなかった。
※
次の日のホームルーム、俺は目の前に広がる光景に自分の目を疑いたくなった。そこには見慣れた黒髪ロングの女の子がいて、黒板には一文字菜月とかかれていた──
読んで頂きありがとうございます!どうも、ひのき棒です。明日が休みということで本日は2本かかせていただきました。あれ?0時超えちゃてる・・・まぁいいよね!6月23日判定で!読んでくれた方感想やポイントを頂けるととてもうれしいです。それでは失礼いたします。