2話 賭け
「あなた、わたしと結婚しなさい!」
黒髪ロングの敏也と同じくらいの背丈の女の子が発した言葉に俺はただ呆然としていた。だってそうだろう?『付き合って』ならまだしも、『結婚して』と言われたのだ。しかも、赤の他人に。呆然とする以外に反応のしようがない。しかも告白してきた女子は恥ずかしそうな素振りを一切見せない。その気がないのは、彼女いない歴=年齢の俺でもわかる。
「えっと・・・まずお前は誰?」
ひとまず落ち着いて話をしようと思った俺は女の子にそう問いかける。
「そんな事はどうでもいいのよ、それよりも返事はどうなの!yesなの?はい なの?」
「どっちも肯定する選択肢じゃねーか!」
ここまでひどい選択肢があるのか?と思いつつ俺は答えた。
「まず俺はお前が誰か知らない。だから──」
自分の素直な気持ちを述べようとしたらその時、
「おい!坊主そこを動くな!この子がどうなってもいいのか!」
目の前には覆面をかぶった中年男性らしい2人組が中に物が沢山入っているバックを持ちながら、女の子の頭にナイフを突きつけていた。強盗の類だろう。
「てめぇらも全員動くな!動いたら殺すからな!」
さっきまで賑やかだった店内は一瞬の内に静寂に包まれた。どうやら強盗はここで籠城するらしい。店内にいる人を5〜6人のグループにわけ、ロープで縛っていった。
(マズイな・・・このままじゃ全員無力化されるのも、時間の問題だ。ここは早めに決着をつけた方がいいな。けどもう1人はどうすれば?)
そう思い、周りを見渡すとある事にきずいた。そして、俺は女の子にナイフを突き付けている強盗に向かって走った。
「目をつぶっていろ!」
そう叫ぶと同時に俺は強盗の顔面に右ストレートを叩き込んだ。殴った衝撃で強盗は少しよろめいき、女の子から腕を離した。もう1人の強盗はナイフを持ってこっちに向かっていた。
(確か、こういう時は・・・)
俺はナイフを突き出してくるうでをかわし、強盗の鳩尾に肘を思っきり叩き込んだ。外から観たら、流れる様な動作だった。肘を喰らった強盗は気絶していた。ほっと安心していると、
「危ない!」
振り返ると、もう1人の強盗がナイフをこちら突き出しながら走ってきていた。
「この糞ガキが!」
物凄い勢いで強盗が迫ってくる。距離はあと1mもないだろう。だけど、俺は冷静でいれた。なぜなら・・・
「なんじゃこりゃーーーー!?」
突然、店内に大きくそして聞き慣れた声が響きわたる。強盗も女の子もだれもかれもが声をした方向を向いた。もちろん、俺はその隙を見逃さなかった。
(今だ!)
距離が短いおかげで、即座に強盗の背後に周り込めた。そして、力一杯強盗の首を閉めた。
「おちろーーーー!」
最初は抵抗していた強盗も少し経てば気絶していた。店内を支配する静寂はこのタイミングで支配を終えた──
※
「いやーそれにしても、光樹。お前いつあんなの習ったんだ?」
警察に連れて行かれる強盗達をみながら、敏也はそう尋ねた。
「いや、習ってないけど?」
「は?じゃあなんでできたんだよ?」
「うーん、ゲームでやってたのを見様見真似でやったらできた。」
「マジかよ・・・」
敏也は鳩が豆鉄砲を喰らったかのような表情をしてた。俺がなぜ、強盗が目の前にきても冷静でいられたのは、ロープを拘束されている時、敏也の姿がみえなかったからだ。そこで、俺は敏也がトイレに行っているとわかった。おおかた、長くこもっていたのだろう。トイレからでてきたら驚いて大きい声をだしてくれるとふんでいた。もちろん、あの声の主は敏也だ。そのお陰で、俺は強盗達を無力化できた。
(こいつがバカで本当に良かった。バカじゃなかったら、俺今頃あの世だったからなー)
そうしみじみと思いつつ夕日が沈みつつある空を見上げていると、さっきの女の子が声をかけてきた。
「あの・・・その・・・」
「ん?どうしたんだ?」
「あ・・・あり・・・ありがとう」
俺は多分いま顔が赤いだろう。だって素直に可愛いと思ってしまったのだから。心臓がドクンッと強く鼓動した。
「あと、これ。今日のお礼がしたいし、それにあんな事を言った理由も話したい」
そう言いつつ、彼女は俺にひとつの紙切れを渡してきた。近くのファミレスの名前と時間が書いてあった。
「それじゃあ、さようなら」
「ちょっと待ってくれ!」
俺は走り去っていこうとする彼女を呼び止めた。最後に聞きたいことがあったから。
「お前の名前は?」
俺はあの子の名前が聞きたかった。なぜかどうしても、聞いておきたかった。そして、彼女は俺達のほうに振り返ると、
「私の名前は一文字菜月」
と、告げまた走り去っていった。その走る姿は輝いていた──
読んで頂きありがとうございます!どうも、ひのき棒です。最近暑いですよね。私は家じゃ扇風機つけてないとやってられませんwあ、私ただの棒だから家とか扇風機とか関係ないか。それでは皆さん夏の暑さに負けないように頑張ってください!
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・・・なんだかよくわからない後書きでごめんなさい