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鬼は誰からかぐや姫を守ったのか   作者: マイペース狼
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4 姫を欲する者達

義武と猟師の夫婦はお互い離れて場所で目を合わせながら義武はゆっくりと夫婦に近づいていった。


「鬼響 義武だ。名はなんと言う・・・」

「はき、と言います。こっちは妻のふきです」

 はき・・・聞いたこともない名前だ

 攻撃する様子は無いので、義武は油断はしないが、そのまま次の用件を伝えた。

「姫がお前に警護して欲しいと言ってきた」

「姫・・・あぁ、おたけちゃんですか、いいですよ」


 ・・・何か気になるな。姫が頼んだとはいえ、幻助と田兵衛にもあの夫婦をどう思うか聞いてみるか。

「いやぁ~名前もああいう顔つきも探せば見つかりますよ。義武様の鬼響という性もそうじゃないですか」

「悪い奴だったら俺がぶっ飛ばしてやる!」


 姫もあの夫婦が来てから、自分の身の回りの世話をふきに任せている。はきもあまり人と会話をしない田兵衛とも普通に会話をしている。マタギというだけあって弓の腕前もなかなかのものだ・・・ちなみに弓は俺のほうが上だ。

 だが、あの男・・・何かを探っているようにも思える。俺が心配しすぎているのか?


 俺はもう一人、さぬきから姫が会いたがっていた者を屋敷に連れてきた。

 おうめだ・・・。

 俺はあの宴で、姫がおうめという子を口にした時の寂しそうな顔が妙に頭に焼き付いていた。つい俺は村でおうめとやらがいる家を訪れた。そこに一人の幼い女子がまるで大切にしていた何かを無くしてしまったかのような表情で立っていた。

「お前がおうめか?」

「おたけ姉ちゃんに会いたい・・・」

「女童になれば、おたけ姉ちゃんに会える。だが、女童になれば、働かなければならないが・・・それでもよいか?」


 今では2人は屋敷で毎日2人で絵巻物を見たり、双六すごろく貝合かいあわせで遊んだり琴を弾いたりしている。ふきが言うには姫は俺に大変感謝しているそうだ。

 それが、関係しているのかどうか知らんが、ある日、朝から幻助が都からさぬきまで俺に姫の文を届いた。


 義武さん、昨夜おうめちゃんがたえさんという女房に「姫様をおたけお姉ちゃんと呼んでなりません!姫様と呼びなさい!」って叱ったんです。おうめちゃん「どうしておたけお姉ちゃんって言ったら駄目なの?」って泣いてしまって・・・どうしましょう?


 そりゃま、貴族のしきたりでは姫様は姫様と呼ばねばならんが・・・どうしよう?


 義武が悩んでいると、田兵衛がやってきた。

「おまつとかいうよくわからん女が義武様に会いたいとか言ってうるさいんですが?」

「おまつ・・・なんだと、おまつだと!すぐに通せ!」

 田兵衛は義武の反応に驚いたが、すぐにおまつを義武のもとへ連れてきた。あどけないかぐや姫と違い、大人の色気が漂う女性が義武の前に座り、頭を下げた。

「そこもとが姫が言っていたおまつ殿か?姫の文の返事はどう書けばいい!」

「姫というのはおたけちゃんのことですよね?・・・あたし、字は読めません」

 まつは頭を上げると、真っ直ぐな目で義武を見ると冷静に答えた。

「あっ、そうか・・・」

 まつの冷静を見て、義武も自分を落ち着かせるとかぐや姫の文の内容をおまつに伝えた。

 

「おうめを慰めてあげてください」

「慰める?どうやって?」

「ん~おうめは榛子はしばみが大好物なので、それを持って行ってあげてください。ついでにおたけは蔔子あけび大好きだからそれも一緒に!」

「そうか・・・おまつ殿、助かりました・・・」

 義武はおまつに頭を下げた。するとおまつは笑った。

「負名が今度の受領は怖いと言っていたから、どんな人かと思ったけど・・・見かけの割にはそうでもないわね」

「そ、そうなのか?(ほめてるのか、馬鹿にしてるのか?)」

「あたし、おたけが都に行ったって聞いて心配になってすぐにでも受領様におたけの様子を聞きたかったんだけど、あの人で結構大変だったのよ・・・。でもようやく聞けるわ・・・ふ~ん、そのたえとかいう女がおうめを泣かしたの・・・ふ~ん」

 まつは声は冷静なまま目を細めた。義武は耳を少々掻くと、落ち着いた声でしゃべった。

「まぁ、姫もおうめちゃんもまだ都生活になじんでいないということで・・・あとは姫が心配しすぎかと」

「おたけは小さい頃からそうだったわ。ひとり者のごさくさんが腰を痛めて寝込んでいたときも、あの子、毎日様子を見にいってたから・・・。受領様、もしおたけで困ったことが起きたらあたしに言ってください」

「・・・かたじけない」

 義武は再びおまつに頭を下げた。再びおまつは笑った。

「受領様ー勝負だー!」

「あの声は・・・ゆうたね」

 門の外で男の子の声がした。義武とおまつが門を見ると、ゆうたが棒を持って仁王立ちしていた。

「ゆうた!あんた、また悪さしてるの!」

「げっ!鬼が何でこんなところにいるんだ!」

 これから義武との勝負に奮い立っていた顔はまつを見るなり、正反対の顔になった。

「誰が、鬼よ!あっ逃げるな待ちなさい!」




 翌日、義武は榛子はしばみ蔔子あけびを持って馬で都へあるところへ寄りその後、姫の屋敷に向かった。屋敷に近づくと綺麗な音色が聞こえてきた。かぐや姫が弾く琴の音色だ。


 俺は琴には興味はない。だが姫の琴は例外だ。何故、惹かれるのだ?


 門に近づくと、門前にいた大勢の男達が義武に走り寄った。

「お願いです!この文をどうか姫に渡してください!」

「立ち去れ!」

 義武の一喝で男達は黙り込んだ。義武は騒がしい門の外から心静まる琴の音色が聞こえる門の内へと入っていった。

「義武様、お疲れ様です!ここに来る前にどこかの女にでも会いに行きましたか?」

「お前は一言多いぞ・・・幻助、あいつら毎日来てるのか?」

 あの宴以来、この屋敷には奇跡の美女がいると聞きつけた男達が姫の琴を聞いて間違いないと確信しやがった。姫を妻にしたいと金銀その他、高価な贈り物が毎日贈られてくる。

 あの宴の時にも一人、泥酔した貴族で俺に姫の事を聞いてきた奴がいて、適当に相手したが・・・いろんな奴が姫に興味を持っていやがる。

 そこで俺は幻助に都に姫のどんな噂が流れているか調べてもらった。


「噂はすぐに都中に広まりましてね・・・。姫は世を悪に陥れる鬼、怨霊をこの世から消し去りってくれる奇跡の美女というのは真である!そして夫となる者は永遠の繁栄が手にはいり、おまけに一生老いることがない・・・という噂を信じる者達が毎日来ております。これも姫の奇跡の力?」

「馬鹿野郎ばかりだな・・・。女達は姫のことをなんて言っている?」

「あの女は物の怪で男をたぶらかしている・・・とくに美人はそういってます」

「姫は貴族の女たちとは仲良くなれんのか・・・」

 義武が幻助と話をしていると、うめが義武のもとへやってきた。

「え~っと、受領様・・・え~・・・」

「おうめちゃん、これをやろう・・・そしてこっちは姫に渡してくれ」

 義武はしかられたせいだろうか、緊張して満足にしゃべれないうめにおまつが言っていた榛子はしばみ蔔子あけびを包んだ二つの布をうめに渡した。まだ中身をしらないうめは言われたとおり、蔔子あけびが入った方をかぐや姫に渡すために屋敷の中へ入っていった。

「ところで・・・ここに来る前に左衛門府で将門公にあったんでしょ?どうでした?」

「うむ・・・」

 義武は姫の屋敷の前に大内裏だいだいりの方角へと端には死体が転がっている朱雀大路を馬で駆けていった。近衛大路と堀川小路のところに左衛門府えもんふがあり、その左衛門府の中に検非違使庁があった・・・。


「おぉ、義武!良い目をしておるわ、さすが鬼之弓取りよ・・・」

 義武は左衛門府の門へ近づくと、中へ入ろうとする髭を生やした30を超えた一人の男が威厳に満ちた目で義武を見た。その男こそ、父代わりとなって義武を育てた平将門だった。将門が此度の件で朝廷からの召喚命令により、検非違使庁で尋問を受けることになった。義武は姫の屋敷に赴く前に、将門に会いたかった。

「将門様、将門様に矢を放ったことお許しください」

「謝るな!おまえの弓は俺の夜討ちを見事打ち破った・・・誇りに思え!」

「しかしその後の戦で良兼殿をみごと破り、結局俺が将門様に破れました」

「その時にはお前はもういなかったからだ。あの夜、よくぞ30間先の我らに矢を当てた!お前の鬼の力は恐ろしいものよ、はっはっは!」

 将門は義武の武勇を褒め称え、大いに笑った。将門は自分が大いに期待した義武が見事立派な武士になったことが嬉しかった。

「ところで、なぜ天光を腰に帯びておらん?」

「あれはまだ、ちょっと・・・ところで将門様、坂東の地はどうなりますか?」

「義武、俺が言った言葉を忘れたのか!」

「将門様が帝で、俺が関白・・・将門様の夢のまた夢です」

「確かに我らは帝にも関白にもなれん。だがそれくらいの思いがなければ事を成すことはできんのだ!義武、俺は民のために夢を叶えるのだ!」

「俺も夢は叶えとうございます。ですが将門様・・・朝廷の敵にはならないでください」

「俺は海賊に成り下がった純友すみともではない!そのことを朝廷に分からせてやる!」

 そういうと将門は将門は義武に背を向け、衛門府の中へ入っていった。義武はしばらく見送った後、将門に背を向けると左京側の九条にある姫の屋敷へと向かった。


 夢・・・




「おぉ義武様、待っておりました。私達だけでは、どうかお力を!」

「落ち着いてください翁殿、来るまでにはまだ時間があります」

 義武が幻助との会話を終え、屋敷の中へ入ると翁が不安な表情で義武に助力を頼み、一緒にかぐや姫の部屋の前まで来た。


「たけ・・・いや姫、わし達がこのように貴族として都で暮らせるのは摂政様のおかげ。その摂政の息子であるお二方が姫に求婚を申し込んできたのだ!・・・わしの夢が正に叶ったのだ」

 翁は涙を流しながら喜んだ。

「・・・・・・はい」

 義武は翁よりもかぐや姫が気になっていた。

 どうやら姫は嬉しくないようだ・・・そりゃそうだろうな。

「・・・それがしが、応対しましょうか?」

 姫の声を御簾越しに聞いていた義武が思わずしゃべってしまった。

「おぉ!義武様、何卒、よろしくお願いいたします・・・」

 翁は全てを義武に任せてしまった。

「ははっ!」

 ちなみに2人の男は宴と時に喧嘩した中納言と参議の2人だ。

 図々しい奴らだな・・・。


「あのみ、おっと・・・父上、義武様と2人で話をしたいのですが・・・」

「ん・・・まぁ、それならばわしは先に寝殿で待っていよう」

 翁は1人寝殿に向かうと義武1人とかぐや姫の2人きりになった。

 かぐや姫は翁が消えた後、しばらく黙っていたが怯える声でしゃべり出した。

「義武さん、あの人達の求婚を拒んだら何か悪いことが起きないでしょうか?うちは、あの人達の妻にならなければならないのでしょうか?」

「・・・この平安京はあいつらの世界です。下級貴族はやつらに賄賂を送り、あいつらに目をつけられた者は容赦なく排除される。まぁ富は持っていますから贅沢は出来ると思いますが・・・」

 正直、俺自身が姫があいつらと結ばれて欲しくない。姫が姫で無くなりそうな気がする。

「義武さん、もしうちがあの者達の妻になっても、うちを守ってくれますか?」

「姫の願いとあれば」

 嘘を言ってしまった。俺は摂政の命で姫を守っているに過ぎない。誰が姫を守るかは摂政次第だ。

 しかし姫はいったい何に怯えている?




 昼過ぎになり、2台の檳榔毛びろうげの牛車が屋敷の中まで入ると寝殿の前で止まり、二人の貴族がきざはしを上ってきた。翁と媼の緊張が最高潮に達した。その中で義武はただ静かに頭を下げたまま二人の貴族を迎えた。

 寝殿で2人は義武の前に並んで座った。頭を下げている義武の左向こうには翁と媼がひたすら頭を下げていた。かぐや姫はこの場にはいない。寝殿外でで御簾越しに話を聞いていた。


「なんじゃ、あの宴の時の野蛮な武士ではないか・・・」

 中納言が義武を見るやそう言い放った。  

「鬼響 義武と申します。それがしが姫に代わりましてお二人に姫のお言葉をお伝え致します」

「ふん、そうか・・・で、姫は何と申しておるのじゃ?」

「姫はあなた方の妻にはなりません。数え切れない贈り物をしていただき、誠に申し訳ないのですが姫にその気はありません」

 義武がこの言葉をはっきりと言ったとき、ずっと床に顔を伏せていた翁の顔が驚きの表情とともに、義武の方を向いた。


「余は中納言だ。地位もあれば財力もある。姫は余の妻になれば何不自由ない暮らしができる。何でも与えることができる!銀を根とし金を茎とし真珠を実とする木を姫のために取ってきても良い!」

 中納言は絶対の自信に満ちた言葉でそう言った。それをそばで聞いていた弟の参議が薄笑いを浮かべたのち、しゃべりだした。

「女心を知らぬ兄上が姫を幸せにすると?姫を幸せにできるのはまろ以外におらぬ!もし姫が火鼠の皮衣が欲しいと言えば、まろはすぐに姫のもとへ持ってこよう!」


 たしか弟の参議は兄の中納言以上に優れていると聞いている。だから兄が嫌っているらしい。権力争いをしかねない兄弟が姫を妻にしたい・・・?


「姫を幸せにできるのは兄ではなくまろである!逢いたい!我が心の言葉を聞かせたい!」

「参議様の心中お察し致しますが、姫はお会いしたくないと申しております。どうか姫の心中をお察し下さい(心の言葉を聞かせるって何言ってんだこの馬鹿野郎が!)」

「何故、逢いたくないと言うのだ!姫を思ふと、なかなか夜が明けない。朝日が差し込まないのだ!まろが姫を幸せにすると言っておるのだ!」

「申し訳ありませんが、姫は貴方様にはお会いにはなりません。どうか、ご理解のほどを(朝が来れば朝日は差し込むだろ?馬鹿なこと思っていないで、はやく寝ろ!)」

「さっきから聞いておれば心にもない言葉を言いおって、お前の本心が見え見えじゃ」

 兄の中納言が小声でつぶやいたが、弟はそれを聞き逃さなかった。

「融通の利かぬ堅物な兄上に姫が手に入りますか?・・・姫はまろがいただきます」

 一瞬にして、兄の目が変わった。怒りをあらわにしたその目に弟は笑いを持って睨み返した。

「兄上はそのようにすぐに取り乱すから、父上のように大きな器が持てぬのです」

「己こそ父上のようになれると思っておるのか!」


「・・・お宝を持ってくればよいのではないですか?」

 姫を案じる義武が二人にある提案をした。それは義武がこの二人から姫を守るために思いついたことだった。

「中納言様は銀を根とし金を茎とし真珠を実とする木を、参議様は火鼠の皮衣どちらかが本物を持ってこればその者が姫と結ばれることが出来る。

・・・持ってこれなかったならばあきらめる」

「持って参ろう!ある者に頼めば、手に入るぞ!」

「まろがある者に頼んで必ずその宝を姫に与え、妻として姫をお迎えしよう!」

 そういうと2人は立ち上がり、きざはしを降り牛車に乗り込み帰って行った。


 ある者・・・?自信満々だったが、本気で持ってくるのか?


 義武が少々不安になって立ち上がると、うめが義武のもとへやってきた。

「おたけ姉ちゃんが・・・あっ姫様があたしの部屋まで来て欲しいと言ってます」

「わかった、それとおうめ、俺の前ではおたけ姉ちゃんで良いぞ」

 義武がそういうと、うめは笑った。義武はそんなうめの頭をなでると立ち上がった。


 姫のところへ行く前に・・・

「幻助」

「え・・・あっはい、はい!」

 義武は寝殿の縁側で警護をしていた幻助を近くまで呼ぶと耳元で囁いた。

「あの二人が何をするか調べろ」

「ほぇ・・・わかりやした」

 幻助にそう命じると義武は渡殿を通って対屋たいのやの姫の部屋の御簾の前まで行った。

「義武です」

「入ってください」

「・・・?いや姫、それは無理です!」

「お願いです。入ってください」

「・・・では、失礼します」

 義武は御簾をあげて、かぐや姫の部屋へ入った。青と赤の部屋の端に御張台がありその側に十二単衣を着たかぐや姫が居た。そのさらに端にあの時の大きくなった三毛猫がいた。


 姫が一月ほど前に部屋の模様替えをしたいから、ふきが職人を手配してこのような部屋になったが・・・まるで別世界だな。ん?あの端にある小さな部屋のようなものは?

 しかし姫は貴族でありながら白粉はしていない、眉は天上眉ではない、お歯黒もしていない。だが、姫はそのままで良い。

 しかし不安そうな顔だ。あの2人が気になるのか?

「あのみ・・・うちの代わりに2人の相手をしていただき、ありがとうございます」

「いえ、これも務めとあらば」

 十二単を着て百姓のくせの抜けぬしゃべり方でかぐや姫は頭をさげてお礼を言った。うめ同様、貴族としては良くないのだが、義武はそのままで良いと思っていた。

 そしてかぐや姫は強ばっていた顔がほぐすと。

「あの義武さん・・・服、脱いで良いですか?」

「!?いやいや、姫、姫!俺の前で姫が服を脱ぐというのは!?」

「うち、脱ぎます!」

「だから、だめだって!・・・あっ脱いだ・・・」

 かぐや姫は十二単衣を脱いで、小袖と袴だけの状態になった。

「貴族の着物は綺麗なんだけど、ずっと着てたら・・・一枚くらい羽織った方が良い?」

「いや、まぁ、それは姫のお好きなように(やはり姫は百姓だな・・・)」

「あっそうだ!義武さん蔔子あけびとおうめちゃんに榛子はしばみを与えてくれてありがとうございます!」

「いえいえ、俺がおうめちゃんを慰めると言えば、あのくらいしかできないもので・・・」

 義武は少々照れくさくなりながら、かぐや姫の顔を見ず、答えた。

「おうめちゃん、大喜びでした・・・。おうめちゃんが義武さんと一緒に遊びたいと言っていました!」

「え・・・」

 義武はまさか自分が小さな女の子と遊ぶのか?と冷や汗が出てきた。

「一緒に双六とか貝合わせとかやりましょう!」

「は・・・はい(おまつ殿、これで良いのか!?)」

 かぐや姫が満面の笑みに対し、義武は冷や汗をかきながら、完璧な真顔だった。


「・・・おたけ姉ちゃん」

 かぐや姫と義武が話していると御簾越しにうめがおねだりするような声でかぐや姫を呼んだ。


「あっ!おうめちゃん、今いくわ・・・」

「これからおうめちゃんと何かするのですか?」

「はい!一緒にお風呂に入ります!」

「・・・・・・へっ?」

「だって、身体はちゃんと綺麗にしないと、常識でしょ?」

「え・・・貴族は占いで吉兆を決めて、縁起が悪い日に入浴はしないのが常識・・・」

「いやだ!!!そんなの常識じゃない!」

「ですよねぇ・・・」

 義武は自分の頭がこんがらがってしまった。なぜなら確かに貴族が行っている常識よりも、かぐや姫のいっていることの方が正しいと納得してしまったからだ。


 何が常識で何が非常識かわからんな・・・


「というわけで義武さん、うちはこれからおうめちゃんと一緒に風呂に入ります」

「それでは俺もおいとましましょう。さぬきの地で面倒な事を抱えているので」

「まさか・・・義武様も負名と仲が悪いのですか?」

 かぐや姫は心配になった。義武が前の受領のようなことになるのではないかと心配になってきた・・・。

「仲良くなれません。下手すれば、本当に俺と負名で争いが起きるかもしれん・・・」

「そうなのですか・・・あの・・・義武さんは争いはつらくないですか?」

 姫の突然の質問に義武はしばらく沈黙した後、持っている太刀を姫に見せて答えた。

「俺は武士です。その世界で生きている者です」

 義武はそういうと一礼して姫の部屋から出ると寝殿の階段へと姫から遠ざかっていった。かぐや姫は御簾の端から義武の背中をずっと眺めていた。


 義武が階のところまで来ると、はきが座っていた。

「摂政が姫を庇護し、その息子2人が求婚を申し込んできた。摂政はなぜ姫を庇護したのか?なぜ二人の息子は自信満々に宝を持ってくるといったのか・・・。あなたはどこまで姫を守れますか?」

 そう言うとはきは腰を上げ、侍所へと義武から離れていった。義武は、離れていくはきを見ながら確かに心配していた。

 摂政は何を考えているのか?



   ※         ※         ※

 


 それから1年以上が経過し、2月になった。幻助の調べではあの二人は宝を探しに行かず都で政を行い、摂政も何も言ってこない。義武は考えすぎかと、思うようになった。

 

 だが、摂政から理解できない文が届いた・・・。


「義武です!」

「入ってください・・・」

「失礼します」

 義武は部屋に入ると頭を下げたまま顔を上げなかった・・・。

「義武さんうちは・・・坂東の地に行かなければいけないのですか?」

「はい、摂政は姫をあの地に行かせるつもりです。出発は7日後・・・摂政の命です」

「わかりました、行きます・・・」

 かぐや姫は少し震えながら決心した。

「姫・・・それがしが必ず守ります!」

 義武は先ほどまで下げていた顔を上げると姫の顔を見た。

「ありがとう・・・」

 かぐや姫は笑った。


 ・・・それから一瞬で7日が経った。出発の日、あたしは驚いた。

「あーおまつお姉ちゃん!なんでいるの?」

「なんでいるのって・・・冷たいわねぇ」

「いや、だって・・・遠くの郷に行って旦那さんもいるから・・・」

「夫にはちゃんと言い聞かせたから心配ないわ。それよりもあなたが心配、だからあたしも一緒に言ってあんたを守るわ!」

「まさか、義武さんがおまつお姉ちゃんを無理矢理連れてきたの?」

「おたけ、それは違う・・・あたしが自分で決めたの。あたし、受領様にあなたのことを尋ねたの、しつこく。もちろん受領様はあたしを止めたわ。でもあんたが好きだから守る。受領様は頭を下げたわ!あんたも変わり者だけど、あの受領様も変わってるわねぇ・・・」

「そう・・・なの、でもありがとう、おまつお姉ちゃん」

 みんな、ありがとう・・・

 たけは義武、おまつお姉ちゃん、幻助、田兵衛、自分を守ってくれるみんなに感謝した。


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