表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼は誰からかぐや姫を守ったのか   作者: マイペース狼
3/7

2 出会う二人

 たけはあの後ぐったりと疲れ食事もとらず、すぐに寝てしまった。あれから20日間、この土地に受領はいなくなり負名もおとなしくなった。百姓達にとってこの20日間は穏やかな日々だった。

 だが、今日この地に新しい受領がやって来た。

「おい、新しく来た受領様だけどよ・・・前の受領様より怖くねぇか?」

「う~ん、また受領と負名のけんかが始まるのか~」

 


※         ※         ※   



「おとっつあん、おっかさんただいま」

「たけ、我らはこれからは都に住むことになる」

「えっ・・・?」

「今日、都からの使者が訪ねてきたのだ。それによると摂政様がぜひ都へ上って欲しいとのことだそうだ」

「突然そんなことを言われても、え~っと、こま・・・るえ~」

「もちろんわしもすぎだって、戸惑っている。だが向こうはわしたちが都で住むために位、そしてお前の新しい名前まで決めているそうだ。”なよ竹のかぐや姫”だそうだ」


 ちょっと待って、え~っと摂政さまってだれ?かぐや姫・・・あっいい名前、えっでも都で姫・・・きれいな着物を着てうちはますます綺麗に・・・いや、いや、ちょっと待って、待って!摂政様ってだれえ~


「たけ・・・」

「なあに、おっかさん?」

「このような山の中で百姓として貧しく暮らすよりも、都で裕福になりお前がもっと綺麗になって良い男と結ばれるほうが、あんたの幸せになるやろうと思って・・・」

「わかったわ・・・おとっつあん、おっかさん」

「わかってくれたか!では、明日、お迎えがやって来る。それで我らは都へ行くのだ」




 ・・・寝られない。まさか本当に貴族になるなんて・・・考えたら眠れそうに・・・・なんだか考えるのに疲れたので、とりあえず眠ろう。

 でも、このムシロで寝るのは何とかしたい・・・あっ貴族になれば。



 

 えっ・・・・なに!


 暗い中、突然たけは飛び起きた。目の前に1人の刀を持った甲冑姿の男が背を向けて立っていた。2人の持っている刀は受領がたけに振り下ろした直刀とは違い、反りがあった。前の男は右足を引き体を右斜めに向け刀を右肩に乗せたような状態で両手で持ち、奥にいるもう1人の同じ姿の男を見ている。奥の男も同じ状態で刀を隠すように腰の高さで水平に両手で構えていた。


 ここはどこなの!?おっとうとおっかあは!?


 奥の男が間合いを詰めた。そして奥の男が刀を前の男の、のど目掛けて刀で素早く切り裂こうとしたが、前の男は左足を引いて、それをかわすと肩の位置にあった刀を右斜め下に下ろした。奥の男は空を切った刀を素早く切り返すと再び前の男の喉を狙った。

 だが、前の男が下から振り上げる刀の方が早かった・・・。

 右足を相手に出し、下から振り上げる刀は、奥の男の胴も胸も鎧ごと断ち切った。奥の男は倒れた。前の男は、血だらけになった刀を右腰の方に下ろした。深い暗闇の中、美しく光る刀から血がしたたり落ちていた。


 怖い、この人たちは誰!?なんで、うちの前で殺し合いをしているの?


 男がゆっくりとたけの方に振り返った。

 ・・・顔が見えない。


 眼をさまし、たけは振り向いた。そばでは翁と媼が寝ていた。

 おたけは暗い夜の中1人、起きていた。空がぼんやりと明るくなっていった。翁と媼が起き出した。自分は夢のせいであの後寝られなかった。


 うちはなぜ、あんな夢を見たの?


 まだあたりが薄暗い中、家の外で大勢の足音と馬のひずめの音がした。おたけの家の前に、身の丈5尺7寸の鷹のような鋭い目つきをした男が郎党14人を率いて3頭の馬と馬丁ばてい,仕丁しちょうと女房と共に翁の家の前で立っていた。


 彼が来た・・・。


 まだ若者ながら歴戦の強者を思わせる風貌で太刀と弓を携えて馬にまたがっていた。後ろには義武と同じく直刀と弓を携えた2人の男。その後ろを馬が3頭、それぞれの馬に掻盾を持った者2名が馬の前左右に薙刀を持った者が2名後ろについていた。


 竹から産まれた奇跡の姫・・・おそらく竹に捨てられた赤子を拾って育てたところ、そういう噂ができたのだろう。俺も常人離れした弓のせいでとんでもない噂が流れている。

 俺一騎で千の敵を弓で倒したとか、1里(4㎞)先の敵を矢で仕留めたとか・・・できるか!噂を真に受ける奴は、ばか野郎だ! 


「・・・なぁ田兵衛、竹から人が生まれるのか?」

「そんなの真に受ける奴はばか野郎ですぜ」

「だよなぁ・・・」

 義武は赤くなってしまった。自分の左後ろにいるめんどくさそうな顔をしながら、着物の中に手を入れて胸を掻いてる田兵衛に思わずそう聞くと、田兵衛のその即答に自分が馬鹿になってしまったことが恥ずかしかった。

「だいたいそいつら怪しいんだよ。竹取は高貴な身分でしたか?」

「いや、父親はただの竹取、母親はその妻というだけ・・・娘のみが特別な存在らしい」

「やっぱり解せね・・・幻助、おめぇ何目ぇつむってんだ?」

 義武と田兵衛がしゃべっている間、幻助はずっと目とつむって腕を組んでいた。だが腕組みを止めて目を見開くと笑いながら・・・

「実は・・・その娘は別の世界から来た者・・・」

「・・・おめぇがその世界に行ってこい」

 幻助の顔も見ないで田兵衛がそういうと幻助は笑いから一転、無口無表情になった。田兵衛はこの家族を解せぬと言ったが、義武もずっと解せなかった。


 摂政は何を考えている?俺のようなまだ若いやつを受領にして任地に赴いたら空覚様が俺を推したから俺が”世を救う奇跡の姫”を都まで連れて来いと?


 国を救う?


 百姓は貴族共らに年貢を収めるために、必死になって都まで運んでいる。その道中、海では海賊、陸では盗賊に襲われ、国司と豪族との税や土地の争い、雅な都でそれを貴族どもらが嘆くこの世を変えてくれる人がいる?

 それを鵜呑みにしたのか・・・あの摂政が?

「幻助!」

「あっ!はいはい!」

 義武は考えを止めると幻助、仕丁、女房の3人と共にこの中に奇跡の美女がいるというのふつうの農家の戸口まで歩いた。


「鬼響 義武と申す者です!摂政様の命により、都までお迎えに参りました!」

「はい、今お開けします!」

 老婆の声がした。戸を開けたのはその声の主の老婆だった。その奥には翁と思われる人物が頭を深々と下げていた。


「お迎えにあがりました、鬼響 義武と申す者です。あなたがさかきの造殿ですか?」

 ふつうの老夫婦だ。家だって特別ではない。この者達が奇跡の美女の両親というわけか?

「はっはい、わたくしがさかきの造でございます。こちらは妻のすぎです」

 2人の夫婦は深々と義武に頭を下げた。

「左様ですか、今日より貴殿には従五位の位が授けられ、貴族として都で暮らすことになります。・・・ところで、姫はどちらに?」

「はっはい、すぐにお呼びします!たけー、たけぇー!」

 さっきからずっと緊張している翁が後ろにある戸に振り返ると姫を呼んだ。戸がゆっくりと開いた。そして噂の姫が身体半分を戸から出し、こちらをのぞいたとき、姫と義武の目があった。


「・・・・・・・・・・」

 2人は一言も言わず、ずっとお互いの顔を見ていた。


 綺麗だ・・・。都の貴族の女達とは別世界の美しさだ。まぁ貴族の女は化粧をしているが。だが、この娘には穢れがないのか?

 一番気になるのは目だ。一体、何を見てきた?その遠い瞳の奥で何を隠している?


 義武がたけにそう感じていると、たけが開けた戸をまた閉めて奥に隠れてしまった。


 俺が怖いのか?小さな子供なんか俺と目が合ったとたんに泣き出す奴もいるくらいだ・・・困ったなぁ。

「申し訳ありません!娘は人見知りなもので、どうかお許しを!」

「ん・・・いえいえ、仕丁と女房が着替えを持っております。それがしは外で待ってますので着替えが済みましたら出てきてください」

 仕丁と女房を残して義武と幻助は外に出た。

「俺好みの女だ!いいなぁ~嫁になってくれないかなぁ~」

 外に出て戸を閉めるとすぐに幻助が小声で義武にしゃべった。

「理解し難い美しさがあるな・・・お前の嫁になったらもっと理解できん」


 しばらくして翁、媼そして最後にかぐや姫が出てきた。かぐや姫は市女笠に垂布で顔を隠し、下向きで出てきた。


 どうやら、俺とは顔を合わせたくないらしい・・・


「義武様、大変長くお待たせしました・・・」

 翁はずっと緊張しているせいか謝るように義武に弱々しくしゃべった。

「では、馬にお乗りください」

 義武がそういうとかぐや姫は早足で先頭の馬に向かって走り出した。


 ドテッ!


 一度こけるが、すぐに起き上がり一番先頭の馬にすぐ乗ってしまった。

「申し訳ありません、本当に娘の無礼をお許しください!」

 すぐに、翁が頭を何回も下げながら義武に謝った。

「いえ翁殿、お気になさらずに・・・それでは、翁殿は真ん中へ、媼様は最後尾へ。幻助、田兵衛お前らは最後尾についていろ!」

 義武達はかぐや姫と翁、媼を馬に乗せると自分も馬に乗り、ずっと下を向いている姫を一瞬見ると先頭に立ち、都目指して歩き出した。



※         ※         ※


 

 蝉だけがうるさく鳴く辺りが木々で生い茂る1丈(3㍍)ほどの山道を皆無言で歩いている中、義武はずっと考えていた。


 このたび、さぬきの地において私腹を肥やそうとした先の受領に代わり空覚殿推薦のそなたを新たなる受領に任じると同時にその土地に住んでいる奇跡の姫を都までお連れするよう摂政様、直々の命である。


 空覚様が俺を推したが決めたのは・・・摂政だ。


 義武に子供の頃の思い出が蘇った。当時は左大臣だったその摂政に初めて出会った時の思い出だ。まだ小さかった義武のそばには屈強な男が反った太刀を帯びていた。

 

 「!?」

 突如、一瞬辺りが暗くなった。義武は空を見た。同時に義武から右斜めから矢が飛び、義武が乗っている馬の頭を貫くと、馬は立った姿勢を維持したまま、真横に倒れ、義武も地面に叩きつけられた。


 盗賊か!?


 落馬の痛みを気にせず、すぐに上体を起こすと同時に太刀を抜いた義武に森の中から飛び出した1人の盗賊と思わしき者が直刀を義武の側頭部目掛けて振り下ろした。

 鮮血と共に動きが止まった、盗賊の右手が刀と共に宙を舞った。義武が相手より早く相手の右腕を切った、鍛錬された義武の強さは盗賊とは桁違いだった。義武の太刀が相手の喉を貫いた。

 盗賊の命は終わった・・・。

 義武は姫の方を振り向いた。           


「!!!」


 衝撃の光景があった。姫を護衛していた者達が矢で皆、絶命していた中、右手に直刀を持ったもう一人の盗賊が姫の左腕をつかんでいた。


 俺が倒れて敵を1人倒した間にか!?

 義武は姫に集中して自分に後ろを見せている盗賊の首筋を太刀で切り裂いた。一瞬の間に2人の盗賊を斬り、返り血で服と顔が赤くなった義武は姫と目があった。

「殺さないで!!!」

「・・・・・・・・・!」

 恐怖に怯え、目に涙をためたかぐや姫が義武に向かって叫んだ。義武は一瞬、躊躇した。だが、それはかぐや姫が怯えているからではなく、姫の涙の奥にある強き瞳を見たからだ。気を取り直した義武はかぐや姫を自分が殺した盗賊のように無理矢理右腕をつかんだ。

 それに合わせたかのように、三人目の盗賊が姫の背後から飛び出した。義武の右目に盗賊の薙刀の切っ先が写った。

 

 シュッ!


 矢が飛んだ音がした。姿を見せない蝉がひたすら鳴り響く中、3人目の盗賊は表情を何一つ変えることなく、沈黙のまま自然な動きで膝をつき、倒れた・・・。

「義武様ー!」

 盗賊の後ろに弓を構えた田兵衛が薙刀を持った郎党と一緒に走ってきた。

「田兵衛、姫を後ろに避難させる!」

 そういうと義武は自分の弓を拾った。義武の耳の中で蝉の声が鳴き止んだ。

 そのとき戦で研ぎ澄まされた勘が働いた。義武は斜め右6間(10,8㍍)ほど先に矢を放った。


 ダァン!


 義武の強弓から放たれ、森の中へと消えた矢は敵を殺したかどうか見えない。だが、義武は殺したのが分かったのか放ち終わると姫の腕をつかみ、姫の左右を田兵衛と郎党に守らせながら翁、媼がいる後ろの方へ姫を避難した。

「敵の矢を姫達に届かせるな!御三方は伏せて、頭を隠して!」

 三人を真ん中に集め、前面と側面を掻盾で守り、長刀の者達を後ろを見晴らせ、義武、幻助、田兵衛は辺りを見回した。

「幻助、敵は見えるか?」

「どこにいるか全くわかりません!」

「田兵衛は?」

「何も見えね!」

 義武は心を静めて、辺りを見ていた。蝉の声だけが聞こえる森に敵は確かにいる。


 我が友、義武よ。小生がさぬきの地で今の乱れた世を救うためにこの世の悪を全て消し去ってくれる奇跡のお方を見つけた。そのお方の命を守れるのはそなたしかおらぬ!


 摂政の文と同時に届いた、空覚の文を義武は今、思い出した。


 空覚様・・・もし本当にこの姫がそうだったとしたら・・・誰が命を狙っている?

 そう思った刹那、義武は前にいる掻盾の男に向けて弓を構えた。


 バキィヤ!

 突然掻盾が真っ二つに割れると、盾を持っていた男は血を吹きながら絶命した。


 ダァン!

 義武は掻盾を持った男を攻撃した敵がいるであろう方向へ矢を飛ばした。強弓から放たれた矢はまるで隠れている敵が見えているかのようにまっすぐ森の中へ飛んでいった。


 ターン、ターン、ターン!

 義武が矢を放った後、すぐに奇妙な音が3回鳴った。 


「な、何の音ですかね?」

幻助がぎこちなく義武に振り向き、強ばりながら尋ねた。

「わからん、辺りを確認する」

 義武は一人、掻盾の外に出ると周りの木々の中を警戒しながら辺りを確認した。しかし敵は姿はもちろん、一向に矢も放ってこなかった。義武は下に目をやった。


 郎党4人そして全ての馬が一発で射抜かれている。仕丁、女房、馬丁は怖くてみんな逃げたのは仕方ないが、掻盾を殺したのは矢ではない・・・盾が真っ二つに割れた?


 義武は突如、左前方40間ほど先の誰もいない所に弓を構えた。

 

 違うな、誰かが俺を見ていた・・・あの時と同じだ?


 義武は姿無き相手に戦とは違う戦慄が走った。


 ・・・何なのだこの奇妙な感じは?


 義武は仲間へ振り向くと叫んだ。

「幻助、お前は走ってこの事を都の検非違使に伝えろ!残りは姫達を背負って走るぞ!」

「ほぇ!!!」




 かぐや姫、翁、媼の3人を背負った義武達は平安京の羅生門をくぐり抜けると左京側九条のある姫達の屋敷に入った。


 え~襲われてから、うちら3人はこの人たちに交代しながら背負ってもらって無事にここまで来た姿は・・・恥ずかしい。最初自分で走ると言ったら、義武って人から走れないって言われて、1里ほど走ったら死にそうなので・・・結局背負ってもらいました。


 もっと走れるように体力つけよ・・・


物語を書くというのは大変です・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ