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[〜 ようこそ、カオスあふれる異世界へ 〜]  作者: 十番目の元素
第一章 迷宮編
3/9

遭遇 ─(2)

サブタイトル間違えていました。すみません!



───少年には一人の幼馴染みがいた。


綺麗なシルバーの髪に緩やかなカールが描かれている。

ふわっとした顔立ちでとても可愛らしい。その子の両親もよく周りの人に自慢の娘だと語っていた。


少女は少年の事が大好きで、少年も少女の事が大好きだった。


少年と少女は毎日のように遊ぶ。


来る日も来る日も。


一度たりとも飽きること無く。


その日も少年はいつものように少女の元を訪れていた。


────────……?


少年は少女の名を呼ぶが返事はない。


─────……ッッ。


裏口の方から声が聞こえた気がした。


少年は少女の身に異変が起きたことを悟る。


少年は駆け出した。


まだ見えぬ裏口が遠く、もどかしさを感じたのだろう。少年は表情を徐々に険しくしてゆく。

やがて裏口へと辿り着いた。


そこには見知らぬ者がいた。

顔は倉庫の壁に隠れていて見えなかったが、見た事の無い背格好をした人物が少女を倉庫の中へと連れ去って行く。


少年はすぐに後を追いかける──


倉庫の中には青白く光る魔法陣が地面の近くを浮かんでいた。

少女と謎の人物はもう既にここにはいない。


少女はきっとこの魔法陣の中へと連れ去られて行ったのだろう。

早く助けに行かねばと陣に近づこうとして──


──突如、少年と魔法陣の間に何かが現れる。


少年は気が付くと見た事もない何匹もの、いや何体もの大きな生き物に囲まれていた。


それらは少年を睨み付け、口からシューシューと音を立てて涎を垂らす。


一言で表すとするなら、怪物だ。その姿を見た者は恐怖におののき、足が竦んで硬直してしまうだろう。

しかし少年は違った。少女を救わなければならないという想いが少年の身体を動かす。

迷いなどない。彼女を助ける為、怪物の包囲から抜け出すべく走り出す─────


───少年は必死に抗った。

できる限りの力を尽くした。

だがこの世にはどう足掻こうとくつがえせない圧倒的な力の差というものが存在する。


少年は満身創痍だった。周りにいる怪物は少年を嘲笑うかのようにゆっくりと近づく。


─────アアソウカ、僕ハ死ヌノカ────


怪物が少年の身体を持ち上げた。


頭の中を走馬灯が駆け巡る。

少女と過ごした日々が、二人のかけがえの無い思い出が、頭の中を駆け巡る。


怪物がゆっくりと腕を持ち上げる。


─────モウアノ子トハ会エナイノカ?────


その瞬間少年の内側に黒い何かが沸々(ふつふつ)と沸き上がる。

……少年の中で確かに何かが変わった。


ついに怪物が持ち上げた腕を振り下ろし、一つの小さな生命体の命が潰える……はずだった。


── ウオオオオオオオオ………!!!


少年は発狂する ─────────────




──── 倉庫が静寂に包まれる。

周りには誰もいない。

あるのは原型を留めていない・・・・・・・・・ぐちゃぐちゃになった肉の一部と──魔法陣だけだ。


少女との日々を思い出す。


少年に迷いはない。


あの輝く日々をもう一度繰り返すべく、少年は魔法陣の中へと足を踏み入れ───


そして


二人は世界から姿を消した。





───────────





通路の壁に光水晶の明かりがぼんやりと映る。大体半径10メートルくらいを照らせる事が出来るようだ。照らせる範囲が小さくて心許こころもとないが、明かりがあるのと無いのでは全然違う。地面は凸凹としていて歩きにくいし、壁も所々せり出していて気を付けていないと危ない。怪我をしないよう、慎重に歩を進める。


通路は緩やかに右に反れ続けているようだが、一体どこへ向かっているのかは分からない。


もうどれぐらい歩いただろうか。


そろそろ少し休もうかと思い始めた頃、前方に淡い明かりが見えた。

右手に持つ光水晶とは違う、久々に見る明かりに微かな興奮を覚え、自然と歩くスピードが上がる。


……あともう少しだ……


出口である事に僅かな希望を懸け、明かりの差す場所を目指して早歩きをする。


……やがてもどかしくなり、走り出した。


そして遂に辿り着く。


その場所は、俺が最初にいた部屋よりもふた回りほど大きい部屋だった。

落胆はしていないけど、出来れば出口であって欲しかったな。


俺は部屋の中へ踏み込むのを一瞬躊躇い、通路の脇に身を潜め、部屋の様子を伺う。

壁はやはり赤黒く染まっていた。前の部屋よりも幾分か明るく感じるな。多分、光水晶があちこちに埋まっているからだろう。


部屋には俺が来た道とは別の通路がニ本繋がっている。

来た通路とは違い、微かに明るい。

どっちの通路に行こうか迷っていると、左の通路の方から、一瞬音が聞こえた。


何だ?誰かいるのか?

俺は右手に持った光水晶を服の中に隠して俺の存在が明かりでバレないようにし、更に身を隠す。


聞こえる音が少しずつ大きくなっていく。足音だ。

こちらに近付いて来ているようだ。


足音がどんどん近付いてくる。俺は目を細め左の通路を睨み付ける。


そして現れたのは……


……嘘だろ?


「うゔぅ……がァ……」


青白く不健康な色をした身体をもち、所々から黒く腐った血を流し、片目は腐ってしまったのかただれてしまっている。

歯の抜け落ちた口をだらしなく開けて、意味不明な奇声を発している、それは正しく……


ゾンビだ。


通路から出てきたゾンビは入り口辺りで一度立ち止まり、しばらくしてから部屋の中を彷徨いだした。


顔が青ざめた気がした。

ばくばくと心臓が鳴り出す。


まじかよ……異世界へやって来て最初に見る魔物がゾンビとか、勘弁して欲しい。


勿論、いくら動いているとはいえ人の死体なんて初めてみたから、吐き気が止まらない。だが、吐いてしまえばあのゾンビに気付かれてしまうかも知れないし。


一度自分を落ち着かせ、息を潜める。


ゾンビはしばらくの間部屋を徘徊した後、右の通路へと消えていった。


「ッ……はあ……はあ………」


もうお家へ帰りたい。

ゾンビは右の通路に消えていったけど、左の通路からやって来たと言う事は通路の奥にはもっと沢山のゾンビがいるのかも知れない。

次にどちらへと進むのかを決めなくちゃならないが、正直全く気が進まないな。


俺は武器になる物は何一つ持ち合わせていないから、ゾンビと出会えば死のリスクが高い。


数分迷った後、俺は左の通路へと進むことにした。幸い、ゾンビの足音は一つも聞こえないし居るかも分からないのにビビってたら駄目だよな。少なくとも右の方にはゾンビが一体確実にいる訳だから、左の方がまだマシだと思う。


俺は隠していた光水晶を持ち直し、気が変わらない内に歩を進めた。




────────────────




俺は致命的なミスを犯したかも知れない。


左の通路は間違いだった。


「うガア"あァ……!!」「イがァ……アァ!!!」


「うわあああああ!!!」


俺は全速力で来た道を引き返す。

その後ろに六体程のゾンビを引き連れて。


ヤバいヤバいヤバい……!!!


ゾンビの速さが予想よりも速い。俺の思っていたゾンビはもっとこうノロマなイメージがあった。やれば出来るじゃん、ゾンビ。感心してる場合じゃねええ!!


やがて俺はあの大きな部屋へと戻ってきた。ゾンビとは距離を少し離したが、もともと一本道だ、すぐに追い付かれるに決まっている。

俺はまだ入っていない右の通路に逃げ込む。


「アガああア……アッ!!」


後ろからゾンビが迫ってきている。

めっちゃ怖い、怖い怖い誰か助けてくれ !! 俺は心の中で助けを求めながら全速力で走る。


目の前に開けた場所が見えた。俺は焦りのあまりに冷静さを失っていて、中の確認もロクにせずにその場所に飛び出してしまった。


そこにいた数十体のゾンビらが一斉にこちらを振り向く。


「あっ……」


俺は恐怖で呆然と立ち尽くした。失敗した。詰んだ。


死人達が俺をターゲットに定め、奇声を発しながら近付いてくる。嫌だ!死にたくない!俺はゾンビらを避けて部屋の奥へと向かおうと考える。奥は上り階段となっているようだ。なんとなくだが上へ上ればゾンビらの襲撃から逃れられる、そんな気がした。


俺は前方にいる血で汚れた金髪の女ゾンビの方に向かって走り出す。

「がァァァ・・!!!」


近寄ってきた俺を攻撃しようと右手で引っ掻かいてくる。俺はそれをかわして女ゾンビの右横をすり抜けて行った。


途中、変な臭いがした。何かが腐りきったような強烈な臭いで思わず鼻を抑えてしまった。それが本日の何度目になるか分からない失敗となった。


「うおっ!? 」


下半身を無くして手だけで身体を引き摺っていたゾンビに左足を掴まれる。俺は引っ張られるようにして思いっきり転んだ。


「ひいいいいいぃぃ!!! 」


怖い怖い!

俺は足首を掴んだまま離そうとしないゾンビごと引っ張って群がるゾンビから離れようと悪足掻わるあがきをする。


嫌だ死にたくない!!

俺はまだやりたい事が沢山あるんだ!


ゾンビらはお構い無しにどんどん近付いてくる。


何で俺がこんな目に遭わなくちゃ行けないんだ!

まだ攻略し終わっていないゲームがあるし、観たい映画も沢山あるんだよ!!


奴らとの距離はもうほとんどない。


彼女だって作った事ないし、童貞だってまだ捨てられて無い!


だが奴らは無慈悲なことに、俺の四肢を掴んで噛み付く。


腹を喰い千切り、腕や脛を齧っては咀嚼を繰り返す。



痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない !!!!!!!!!


俺は声にもならない雄叫びをあげて、絶叫した。


数十のゾンビ達が俺の身体に群がる。身体中を駆け巡る激痛や恐怖、絶望、諦念が俺の意識をぐちゃぐちゃにかき混ぜていく。血の混じった涙を流していた。


もうダメだ。俺に明日はやって来ないだろう。


誰にも知られること無くゾンビに喰われて何も遺さずに生涯を終える。なんて滑稽な死に様だ。


笑えてくるよなあ……。


ああ……。意識が遠のいてゆく……。


「俺はまだ……死にたく……な……い……」




そして、如月稔は死んだ。











《……発芽条件【継続的な精神ダメージ】、【絶望】及び【死亡】の三項目における連続達成を確認》



《種子【黒き支配者(ディザスター)】の発芽を実行中……》



《発芽が完了しました》



《続いて『熾天使の書(アーカイブス)』に基づき蘇生を開始します……エネルギーが不足しています》



《付近におけるエネルギー体の存在を確認。回収を行います》



《回収完了、蘇生開始……》



《蘇生が完了しました》



《エネルギー蓄積完了まで残り80%》



───────────────────────


如月稔 (きさらぎ みのる)


装備:

なし


スキル:

【鑑定 Lv.1】【unknown】


黒き支配者(ディザスター)】:

?????????


ご指摘等あれば修正いたします。

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