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[〜 ようこそ、カオスあふれる異世界へ 〜]  作者: 十番目の元素
第一章 迷宮編
2/9

遭遇 ─(1)


びゅうっ


底冷えるような風が身体を突き抜ける。

頬に当たる冷たくて少し凸凹でこぼことした地面が俺の意識を徐々に覚醒させていく。


びゅううっ、寒っ!


そこで俺の意識は覚醒した。

「いててっ」

頭痛が走る。くらくらする頭を手で押さえ、何とか持ち上げて頭痛が治まるのを待った。

治んのかこれ・・凄い痛い。

数分掛かったが何とか持ち直し(まだ痛むけどね)、周りの様子を見回す。


「なんだここ……」


正面には真っ直ぐに続く洞窟の通路があった。

先は真っ暗でよく見えない。少し右にれているようにも見えるかな。


「ここはどこだ……?」


そうつぶやいて横を確認する。

俺の横から正面に向けて赤黒くて凸凹でこぼことした壁が続いていて、深い闇のなかに溶け込んでいた。辺りは何だか薄暗くて気味が悪い。

「うっ」

オマケに変な臭いがする。鼻が曲がりそうだ。


そう言えばさっきの底冷えるような風は何処から吹いてきたのだろう。後ろの方から吹いてきたように感じたのだが……。

そう思って後ろを振り返る。


後ろはただの壁だった。ん?どういう事?


今は吹いていないが、確かにさっきは風が吹いていたはず。

一体何処から吹いてきたのか。

そもそもここには正面の通路しかなくて行き止まりだし、どう考えても風なんて吹いてこない。

どうして風が起こった?


もしかして……


……あの風は俺の意識を覚醒させる・・・・・・・・・・ため・・に、俺に向かって・・・・・・吹き付けて来たのだろうか……?


「………………ッ!!」


背筋にゾクッとした悪寒が走った。

気持ち悪い。

突然胃から何かが込み上げてきた。焦りながら部屋の隅へと移動する───。


ヤバいな。思っていた以上に俺の精神はやられているっぽい。

早急に行動を起こすべきか。


一旦、さっき変な方向に行きかけた思考を正常に戻すため、一度深く息を吸い、深く、深く息を吐く。


スーー……ハアァーーーー……〜〜〜ッッッ


「ゲホッおほッ……」

ちょっと息を吐きすぎたせいでせびいてしまった。

だがそうもしないと落ち着けやしない。


少しは気持ちも楽になったかな?だが、深呼吸だけじゃ、ただの気休めにしかならないだろう。


早くこの薄気味悪い洞窟から脱出しなければ。


そう考えて俺は正面の通路を睨み付ける。


「……」


……通路…………真っ暗なんですけど。

……進めなくね?

いやいや落ち着け俺。逆に考えてみるんだ。あの通路は真っ暗なのに何故この部屋は比べて明るいのかと。


俺は右側の壁のある一点を見つめる。高さ的には2メートルくらい?

左後ろの方には少し太さのある丈夫そうな木の枝が転がっている。長さも十分あるし、それを使えば壁にある物も取ることが出来るだろう。


…………。


いや、棒なんて使わなくったって十分届くし?余裕だから!……オイ、今俺の事バカにしただろ!!

手伸ばせば普通に届くし!?見てろよ!!

うおおおおおお………。




とか思っていた時期が俺にもありました。はい。


俺は右手に持っていた木の枝を床に置き、地面に転がった水晶を持ち上げた。意外と重いなこれ。


俺がまだ小さかった頃、初めてするお使いで5キロのお米を買いに行かされるという一大プロジェクトを思い出した。あの頃の俺にとって、5キロのお米は相当重かった。うちの母は何故か弱い息子に米なんぞ買いに行かせたのだろうか。人参とかほうれん草でいいんじゃないかと思う。母は意外と鬼畜きちくだったのかも知れないな。


という訳で俺は拳大くらいの自ら光る水晶を手に入れた。色はシトリン──黄水晶っぽいな。形は階段状に折り重なるように頂点を形作るカテドラル水晶に近い。

この水晶が壁にあと3つ程埋まっているが、ちょっと持ち運べそうに無いので、この一個で我慢する。


とても綺麗な水晶だ。透き通るような淡い輝きを放っていて、この状況の中だともの凄く頼りになる存在だ。

なんと言う名前の水晶なのだろう?

しばらくの間、我も忘れてそれをじっと見つめていた。


すると、突然、


《スキル【鑑定】を取得しました》


「うおうっ!?」


めっちゃビビった……

え?何、スキルって言った??

何なの?どゆこと??

どこか機械的で抑揚のない女性の声が頭の中に響いてきて……しかし自然と違和感は無く、何処か安心するような声だった……

ってそうじゃなくて!!いきなりはマジ勘弁して。心臓飛び出そうだったよホント。

はあ。


俺は一つ溜め息を付き、未だにバクバクとなり続ける心臓を手で抑える。


まあ文句を言っても仕方が無いか。

気を取り直そう。

えっと、何て言ってたっけ?鑑定スキルだっけ。


鑑定か……悪くないんじゃないか?


よく見るライトノベルの主人公は大抵鑑定スキルを使いこなしている事が多いよな。

敵の能力をスキャンして、「コイツは水属性に弱いのか……フッ」みたいな感じでさ。ちょっと憧れる。

一度このスキルを使って見たい。どうやるんだろ?

念じたりしたら出来るかな?


俺は橙色の水晶を見つめつつ心の中で「鑑定スキル発動」と念じてみる。


……何も起きないよ?

念のためもう1度試してみるがやっぱりスキルは発動しない。

やり方が違うとか?声に出してみたら出来るかも。


そうして次に俺は声に出してのスキル発動を試みる。


「鑑定スキル発動」


ブオンッ


おお!!

突然、水晶の上辺りにAR表示が現れる。そこには「マラカル光水晶」と表示されていた。

やった!発動出来た!俺はしばらく感動を覚える。

発声すればスキルを発動させることが出来るのかな。案外慣れれば念じるだけで使えたりするかも知れない。


AR表示には「マラカル光水晶」としか表示されていない。詳細とかは出ないのか?あれか、熟練度とかが必要なパターンか……。


一度自分にも鑑定スキルを掛けてみる。


「鑑定スキル発動」


ブオンッ

視界の端にAR表示で


───────────────────────


如月稔

【装備】

なし

【スキル】

《鑑定 Lv.1》《unknown》


───────────────────────


と表示されていた。

……Lv.1って事はやはり熟練度とかが必要なんだろうな。

よし。段々冷静になって来たぞ。

今日の俺はなんだか冴えてるな。

《unknown》っていうスキルがとても気になる。なんだろうこれ。どんな効果があるんだろ?気になるけど、情報が足りない。


少しモヤモヤしつつ、鑑定スキルのレベル?を上げていけばやがては表示されるだろうという結論に至る。


「……スキルって何度も使えばそのうちレベルが上がっていくもんだよな。」


無理矢理そう考える事にして、道中拾った物は鑑定して行く方針を心の中で決める。


そう言えばさっきのスキル獲得するまで忘れていたけど、俺はどうやってここにやってきたんだっけ。


確か学校で授業を受けていて、先生が廊下に出ていった後突然地面に謎の光が溢れて……それで今に至るという訳か。なるほどね。

意味分からん。


え、何これ、もしかしなくても最近流行りの異世界転移ってヤツ?マジ?

ほんとにあるんだ……凄い迷惑。個人のプライバシーはガン無視なのね。参ったよ。


そしてこの考えに行き着く前に「スキル」とかいう常識では有り得ないような現象を、当たり前のように受け入れていた俺は……そろそろヤバいんじゃないのか、とか思っていたりする。


もしこれが本当ならば、あの時の状況から察するに、他のクラスのメンバーも転移して来ていると見た。


出来れば皆と会いたいけど……。


まあ、いくら考察しても始まらないか。取り敢えずはここから脱出しないといけない訳で。


……ペチペチッ、と自分の頬を軽く叩く。


「……よし!」


勇気を振り絞って目の前の暗闇の通路に片足を踏み入れる。そして俺は闇の奥へと足を運んだ。





……この時の俺は、その先にかつて無い地獄が待ち受けているということを知る事は出来なかった。



────────────────────────



如月稔 (きさらぎ みのる)


装備

なし


スキル

【鑑定 Lv.1】 【unknown】


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