穐斗の失踪、そして、祐也の出立。『現世』没ネタ
空港に降り立った二人に緊急の電話が入る。
普段落ち着いた醍醐の珍しい動揺した声である。
『ひな‼祐也くん‼どないしよう‼おらんようなった‼穐斗が!』
「は?どう言うことや?」
『それが、それが……』
言葉を繰り返すだけの醍醐の向こうから、
『醍醐、おかし』
と声がして、
『あてや、紫野や。さっき、あきちゃんがいてへんようになった』
「どう言うことです?穐斗はどっかに行ける子やないでしょう?人見知りやし、方向音痴で……」
日向の声に、
『あても、シィも、醍醐も信じられひんのやけど、あきちゃんが、車のなかで消えたんや。それになぁ、茶色の髪に瞳のくりっとした子やったなぁ?やけどなぁ、瞳があおう……いや、碧になって、髪の毛が延びて金色になってなぁ、その上、透き通るような羽をして、「いってこうわい」言うて消えてしもた』
「と、透明の羽?」
『あぁ、そうやな……fantasy小説の最高傑作というてええやろなぁ、あの、『指輪物語』のエルフ……って感じやなぁ。綺麗な、お人形はんみたいな女の子言う感じの』
『そうそう。もう、べっぴんさんやったで……』
横で、標野の声がする。
『なんかなぁ、風遊はんと醍醐の結婚式と、ぼんと糺はんの式を楽しみにしとる言うて……それとなぁ』
「何ですか?」
『自分も、結婚はできんやろうから、一枚だけ、ドレス着て写真とってみたいなぁ言うてたで、でも、なんかなぁ……風遊はんも動揺しとって、なきよって、ただ言うてたんが、何かなぁ、正式には結婚してないあきちゃんの父親が、元々ランズエンドっちゅう地域を納める領主で、そこは妖精伝説があるんやと。で、風遊はんは、テディベアとかハーブに詳しいんやて?で、ドイツとイングランドに留学してはって、そこに行ってみたら、あきちゃんの父親に取っ捕まった言うてたなぁ。生まれたばかりの息子と、育児放棄のあのMEGをつれて、こっちにもんて、子育てしよったんやろ?』
日向は、祐也を見る。
「戻るか?」
「いえ、ウェインと、そのお母さんであるモルガーナさんに、詳しく話を聞いて、穐斗を取り戻します‼」
「大丈夫か?」
「平気です。体力だけは負けませんよ」
何とか笑顔を向けるのを、頭を叩く。
「そうじゃない。お前のその心や。それに帰りたい。穐斗を探したいって」
「でも、『いってこうわい』言うて……しまったんです。俺は……」
声をつまらせた祐也の頭をなで、
「まぁ、まずは、向こうに行って、話を聞いてみるのもいいやろ。それに、イングランドには、荘園があって、その事も勉強してもええと思う。特にお前は、いろんなことに巻き込まれとる。今はごちゃごちゃかもしれん。でも、絡まった糸も丁寧にほどいていけばきれいに戻るように、それをそれなりに、待ってみいや」
「じいさんになったらどうしましょう?先輩。一応夢は、多分結婚は拒否する穐斗に婚姻届書かせて結婚するんが今んとこ夢なんですが?」
「……穐斗は男だろうが」
「性別を女の子に変えたらええんです‼それにちゃんと白無垢に、ウェディングドレスにカクテルドレスに、色打ち掛けは考えてます‼穐斗は時々うっとり見てるんです」
ふんっと力を込める、祐也に苦笑する。
「ほんなら、いってこうか」
「多分、穐斗は方向音痴やし、途中でべそかいて、山んなかでシクシク泣いとるとは思うんですけど……あんまり山には入れんでしょ……今は狩猟時期やし……」
「やなぁ。政和おじさんや猟友会のおじさんらに連絡して、探してもらう方法をとった方がええとは思うわ。あぁ、さきさん。シィさん」
電話に向かう。
そして、二人に説明し、
「さきさん、シィさんも、醍醐やじいちゃん、集落のおいちゃんらに飛び出すんだけはあかんって言うとってくれんかな?」
『よそもんのあてらでもかめへんやろか?』
「それはかまんとおもう。それとお寺さんの電話番号をじいちゃんから聞いて、お寺さんの住職さんと副住職さんにそうだんしいや。特に副住職さんは、二人とそがいに年が変わらんはずやけん。確か、本山が永平寺の曹洞宗のお寺さんで、修行にもいかれとるはずや。永平寺さんは福井県やし、話もわかると思うわ」
『解ったわ。まずは、風遊はんの家に向かうさかいに、ありがとうさん』
電話が切れて、
「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」




