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宵月の世紀  作者: 愛媛のふーさん
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殺人鬼4

 片山老刑事と堅物の土井女刑事は、訓練師を当たる事になった。郊外の住宅地にある民間の訓練所を訪ねる。若い女性の訓練師が応対した。

「少しお話を伺いたいんですが」

美佳がそう言って警察バッチを見せると、女性は表情を和らげる。警察だと知って愛想よくするのは珍しい。そんな事を思いながら話しを続けた。

「こちらは警察犬の訓練所ですよね。どんな犬種がいますか?」

「シェパードが六頭にレトリバーが三頭ですね。後飼い主さんの依頼で、豆柴なんかも通いで訓練してますが」

「狼犬を訓練している、又は過去にしていたって話を聞いた事はないですか?」

美佳は本題を切り出した。女性は不思議そうに答える。

「狼犬は頭は良いけど性格的に訓練に向かないので、滅多に聞かないですね。祖父の代にチャレンジした方が、八王子にいたとかいないたとか。そんな噂だけですね」

それまで黙ってやりとりを聞いていた 老刑事が口を開く。

「お嬢さん、訓練すれば犬ってのは人間の急所襲う様になるもんなのかい?」

「そんな訓練するの考えられませんけど、訓練次第で可能です。あくまでも出来るか出来ないかで、犬に愛情持ってたらそんな事させられません」

訓練師の女性はきっぱり言い切った。それを聞いて老刑事は呟く。

「犬に愛情持ってなければ、狼犬の訓練なんて到底できないって訳かい?」

女性は頷く。「矛盾するか・・」そう考えてわからなくなった。遼といい、この訓練師の女性といい狼犬で襲う見立ては筋違いだと言っている。理論上は可能だが、理論だけて実行できる物でもない。老刑事は柄にもなく迷った。しかし、すぐに切り替えた。間違いならそう証明するだけだ。

「ありがとうございました。ご協力感謝します」

訓練所を後にする。


 殺人鬼である狼男、添島琢磨は午前中寝て午後生活に必要なことや、自分を変えた新薬の関係者の調査に当てていた。琢磨のノートパソコンには、髪をショートカットにした如何にもキャリアウーマンという感じの女性が映っている。アポロ製薬の二宮絢香だ。次のターゲットという訳なのだろう。アポロ製薬のシステムをハッキングしたのか、自宅の住所も表示されている。今夜は雨の予報だ。とりあえず今夜は餓えに苛まれることはない。

「早く俺を殺してくれ」

血を吐く様な独白は誰にも届かない。餓えは無くとも孤独と絶望がのし掛かっている。

 この何週間かで、頬は痩け目は充血し唇はひび割れていた。鏡でその顔を見て、破産した老人の様だと思った。餓えに耐えるのは、薬物中毒の禁断症状に耐えると同じだ。その精神的肉体的負担は琢磨の心と身体を蝕んでいる。耐えられる間隔は少しずつ短く為りつつある。また、月齢と欲求は関係在るようで新月は餓えは無く逆に満月は餓えはMAXになる。カップルを殺したのが満月だった。それから未だ満月はやって来てない。満月の餓えの渇きを考えると耐える事は不可能に思えた。


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