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宵月の世紀  作者: 愛媛のふーさん
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殺人鬼

 事件のあらましを聞いた遼は考え込む。確かに異常な手口である。異能者が絡んでいるのではないかとも思った。しかし、そんな報告は上がってない。

狼犬おおかみけんは何処から入手可能ですか?」

美佳が訊いてくる。あくまで狼犬の線を追うつもりの様だ。

「狼犬のブリーダーが居るんです。輸入代理店もあります。データをお渡ししますね」

「悪いな。恩にきるよ」

老刑事が礼を述べる。遼はUSBにデータを入れて渡した。その際言い添える。

「訓練師の線も追った方が良いでしょうね。腕が良くて狼犬に仕込む根気から言えば、警察犬の訓練師の経験ある人になるかな」

「元鑑識の警察官だと言うんですか!」

美佳は非難する様に叫んだが、老刑事は落ち着いていた。

「その可能性もあるってだけだ。目くじらたてるな」

「しかし、元でも会社の人間なんて」

「すいません。狼犬の線でいくならその可能性もあるかなって、気に触ったらのなら謝ります」

「遼、違う見立てしてるのか?」

「今のところよく分かりませんが、狼犬の線は薄いかなって。何が目的かはっきりしてませんが、狼犬で襲ったならその手間は大変です。殺すだけなら、もっと簡単な方法が幾らでもあります。何か得体の知れないものを感じますね」

遼は思ったままを告げる。

「狼犬じゃないなら無いで、儂らは潰していくだけだ。とりあえず狼犬の線追うわ」

老刑事片山はそう言って席を立つ。土井美佳巡査長も後に続く。遼はビルの玄関迄見送る。

 遼はさっき聞いた事件のあらましを、報告書にまとめる。何かしらの役に立つ可能性があるからだ。送信をクリックして少しすると、部長から呼び出しがある。

「さっきの報告書の事件追った方が良いと、上が判断した。君が担当してくれたまえ」

「わかりました。まずは被害者からですか?」

「そうだな」

「疾風を連れて出ます」

40分後疾風と本部ビルを出発した遼のFIAT パンダは、最初の事件の被害者二人の通っていた大学に着いた。ここでは、めぼしい収穫はなかった。場所を陽明大学に移して准教授について聞き込む。准教授は、医学部の遺伝子を用いた治療を研究する部署に属していたらしい。評判は極めて悪い。製薬会社との癒着も噂されている。尊大で高飛車な態度なので敵も多い。老刑事から聞いた通り平凡な大学生カップルとの繋がりはない。敵が多かったことから容疑者の絞り込みは、難しかった。

 その中で製薬会社からの治験で、半ば強引に患者に新薬を用いていた件が、遼は引っ掛かった。遺伝子を用いた新薬。きな臭い匂いがぷんぷんする。遺伝子操作に伴う危険性は現在はさほど言われなくなった。しかし、何らかのアクシデントで、とんでもない危険が無いとは言えない。石川准教授の研究についての調査を進めることにして、関係の深い製薬会社を当たる。

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