月夜4
蓮が大型のポットの底に手を当てると、すぐに湯が沸く。ペーパードリップのコーヒーを8杯入れる。
「ミルクと砂糖は各自でお願いします」
蓮と千堂は配って回った。先輩達は礼を述べて受け取る。温かい飲み物で一息入れた。緑川が提案した。
「もう少し訓練続けますか」
「ああ」
「そうだな」
林と清十郎が賛成する。紙コップをゴミ箱に捨てると、各々スタンバイした。
ペットボトルのミネラルウォーターを右手に持った緑川が、滑る様に蓮に近づく。
「ウォーターソード」
垂らした水が剣になる。下段から切り上げてきた。蓮は体をひねってかわし、距離を取る為に後ろには跳ぶ。しかし、突いてきた剣が伸びた。液体で来た剣だけに伸縮自在の様だ。蓮は刀で払い剣の軌道を変える。
千堂は清十郎に攻め立てられていた。左右の小太刀の連撃をかわすので手一杯だ。雷撃を辛うじて放つが、避けられる。しかし、清十郎に隙が出来た、立て続けに撃ち続ける。攻守が入れ替わった。いけると、千堂が思った時、
「氷月花」
冴子が氷属性の特技を使う。千堂は避けて隙が生まれた。清十郎が再び攻め立てる。
蓮と千堂の攻防は高重力下で行われていた。身体が重い。緑川と清十郎は慣れている様で、よどみない。蓮と千堂はじり貧よりはと、合流を優先させる。緑川と清十郎の二人の剣戟を、蓮1人で受けてかわす。生まれた余裕で千堂は雷撃を放つ。
「重嵐撃舞」
雷の特技嵐撃舞を幾つも重ねて放つ大技だ。さすがにこれは避けようがなく、6人全員が被弾するかに思われた。しかし、ビームを束ねた様な盾を、頭上に掲げた哲人が、
「カバーリング」
一手に引き受ける。雷撃は盾の表面で激しく弾けた。
高重力が普通に戻っている。千堂は間合いを詰め、ジャブ、左ストレート、右アッパー、左フックをリバー、 1 2 3 4のコンビネーションで緑川を攻めた。どの攻撃も雷を纏わせている。リバー、肝臓にパンチが食い込んだ瞬間、緑川がのっぺらぼうに成り液体で出来た人形に変わった。
「ちぃ。水分身か!」
地面に溶け落ちた分身に、目もくれず千堂が叫ぶ。
蓮は抜刀術でけりを着けようと考えた。清十郎の斬撃を大きく後ろに跳んでかわす。体を屈めて、
「風孔閃乱舞!」
蓮得意の鞘も抜刀する二段階抜刀術だ。初手が清十郎の肩を浅く裂く。交差する二の太刀は、逆手に持った清十郎の右手の小太刀に止められた。
とどめを決められず、蓮と千堂の喉元に小太刀とウォーターソードが突き付けられる。
「それまで」
林が相変わらず疲れた様に言う。清十郎の肩の傷治しながらアリスが不平を鳴らす。
「出番なかったね。蓮も千堂も不甲斐ない」
「いや。俺に手傷負わせるとは進歩した。日々を糧にしてる」
珍しく清十郎がご機嫌で褒める。林も疲れた感じだが、同意した。
「良い傾向だ。次の仕事に生かせる」
「次の仕事!?」
「いよいよやな」
蓮と千堂はそれぞれの反応を示す。




