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宵月の世紀  作者: 愛媛のふーさん
25/25

治療5

 コンクリートで、できた的を狼男の拳が打ち砕く

「オーラセーバー!」

体内の気を拳や足から放ちながら突きや蹴りを繰り出す技である。狼男である琢磨が変身して放つと、容易くコンクリート塊をも粉々にしてしまう。このたった半月の訓練で琢磨の格闘術は格段に進歩した。実戦訓練前の肩慣らしで技のデモンストレーションをしたのである。

 蓮は琢磨の実戦訓練の相手として、あの決戦の夜以来初めて向かい合っている。

「始め」

平馬の合図でお互い間合いを詰める。

「〈ワイバーンキック〉」

体内に気を巡らせ脚力を更に高めて放つ飛び蹴りで、琢磨は一気に距離を潰す。蓮は足を止めて横に跳ぶ。蓮の体がさっき迄有った空間を琢磨の蹴りが掠める。

「風孔閃」

「オーラセーバー」

蓮の抜刀術と琢磨の正拳突きがぶつかる。互いに後ろに弾かれた。蓮は炎を放ち目眩ましすると

「爆」

狼男の全身を炎で包み込んだ。琢磨の白銀の毛は体が焼かれるのを防ぐ。しかし、高熱は自由な動きを奪う。そこを筋肉につながる腱を断つ様に刀を振るう。清十郎があの夜、琢磨の動きを封じた技だ。たが蓮の刀運びは清十郎に及ばない。わずかに狙いを外れた箇所がある。琢磨は限られた動きでは有ったが蓮を突き飛ばした。

「ちぃ」

8メートル程飛ばされて強か肩を痛める。琢磨を包んだ炎は消え不完全ながらも身体も動く。琢磨は体を起こした蓮に左後ろ回し蹴りを放つ。刀で受ける。そこから炎を纏った斬撃と正拳突き、蹴りの応酬となった。蓮の突きが喉の前、琢磨の蹴りがみぞおちの前で止まる。

「それまで」

平馬が訓練終了を告げる。お互い納めて礼を交わす。琢磨は狼男から人身に戻り

「ありがとうございました。良い訓練でした」

蓮に声をかけた。蓮はアリスに肩を治療して貰いながら

「こちらこそ。相変わらすタフだね、羨ましい。此方はこの様ですよ」

「琢磨は私の治療必要ないからさみしいわ」

アリスが軽口を挟む。琢磨にも蓮達にもわだかまりはない。死闘を演じた事など忘れたかの様に。蓮の治療が終わった。肩を回し違和感がない事を確認してトレーニングウェアに袖を通す。アリスに礼を言って平馬の下に行く。

「平さん。よく2週間であれだけ迄鍛えましたね」

「元々陸上部のスポーツマンだからな。筋が良いのさ。それよりお前さんの上達ぶり、精進したな」

「未だ未だです。それに基本教えてぐれた師匠がよかったんです」

「口も上手くなったな。初めて会った時はあんなに口数少なかったのに」

平馬が蓮の額を小突く。蓮は照れて頭を掻いた。千堂が声をかけてきた。

「蓮。わいらの訓練再開すんで。こいや」

蓮も相棒に返す。

「わかった。今行く。平さん後でまた」

千堂と先輩達の所へ駆け出した。

 このように戦闘訓練が繰り返されている。蓮にはナイツの目的はわからない。只訓練に汗を流すだけだ。秋も深くなり公園のしげみでは虫の声が響く。虫の声は都心のビルの地下では聴こえない。刀の噛み合う音が響くのみ、その遥頭上には宵月が輝いていた。


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