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宵月の世紀  作者: 愛媛のふーさん
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逃亡

 琢磨は傷ついた脚を庇いつつ必死に逃げた。そのうち脚の傷は癒えている。回復力は半端無い様だ。

「あいつら何者だ?何か超能力みたいなの使ってたし」

しかし、これまで狩人のつもりでいたのが、狩られる側になったのは間違いない。新たな恐怖と安堵が湧き起こる。狩られる恐怖と、自分を止める存在がある安堵、矛盾している様だが偽らざる本心だ。今は恐怖が勝ってる様で逃げることが優先される。アパートに帰るべきか迷ったが、金がなければ身動き取れないので一度は帰らざるを得なかった。慎重に辺りを窺いアパートに帰る。刀に斬り裂かれたパーカーとジーパンを着替えて、簡単に身支度して財布を持って出た。どこか人目の無い所に身を隠さなければ為らない。身体は狼男から人間に戻っている。電車に乗ろうと駅に向かった。朝日が登りつつある。餓えから解放される時間がやって来た。


 捜査本部の調べは行き詰まっていた。狼犬の線も訓練師の線も、治験の失敗例の縁者に繋がるものはなかった。リストはほぼ潰されて、残された中に動きがなければ始めから振り出しという状況に追い詰められている。

「見立てが違っているのかね。甚さん」

管理官が片山老刑事に声を掛ける。老刑事は考えながら答える。

「新薬の関係者二人が同じ手口で殺された。新薬がらみは間違いないんですがね。何か見落としてるのか」

手帳を見返して頭をボールペンで掻く。その様子を見ながら、ショートカットの髪を振り乱して書類と格闘していた土井刑事が、ボソッと言う。

「70例有っても、成功は1例だけなんですよね」

「その成功例の患者はどうしてるんだ」

「退院して社会復帰しています」

「そいつのアリバイは?」

「調べてません。そもそも成功して何で関係者殺さなくちゃ為らないんですか?」

当然の様に美佳は疑問形で返す。

「深刻な副作用で苦しめられているとか」

「そんな話聞いてませんが」

「行ってみるか」

老刑事は上着を掛けると席を立った。

「待って下さい」

美佳も慌てて追いかける。追いつくと訊く。

「狼犬や訓練師当たらなくて良いんですか?」

「行き詰まった時は視点を変えて見るってな」

「それは分かりますが」

「治験が上手くいった患者何て名だ」

「添島琢磨。私立の大学生。都内のアパートに一人暮らしですね」

手続きをして覆面パトカーに乗り込み琢磨のアパートに向かう。運転は美佳だ。

「アリバイなかったとしても、狼犬との繋がり無ければシロですよね」

「分からんぞ。今、突拍子もない事を思いついてる」

「突拍子もない事って何ですか?あれ、一件目の現場ですね、この公園」

「やっぱりな。近所か」

琢磨のアパートの前に着く。階段を上り呼び鈴のブザーを押す。留守の様だ。そこに遼が疾風と蓮と千堂を連れて現れた。

「甚さん、どうして此処に?」

「お前さんこそどうして?ギター持った兄ちゃん達連れて」

「ちょっと添島さんに話伺いに」

「儂らもそうだ」

「留守ですか?」

「知ってて訊くみてえだな」

「甚さんには隠し事出来ないな」

「話す気ですか遼さん!トップシークレットですよ」

蓮が遼に確認する。遼は説得する様に言う。

「ネタ元は甚さんだ。話してくれたから結果がある。話すのが筋だと思う」


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