表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグー神様を道連れにした男ー

これは、神様もの異世界転生というテンプレから斜め上の発送、神様道連れもの異世界転生をテーマにした物語です。少しでも楽しんでいただければ、幸いです。

ーーー人生で一番の喜びとは、一体どのような時なのだろうか。


何かしらの勝負に勝ったとき?自分の告白が成功したとき?長年想い続けていた夢が叶ったとき?


そういったものは全て、個人差。つまり、人それぞれなのだろう。人にはその人独自の考えがあり、感じ方があり、生き方がある。それと同じだ。


では俺こと『藤堂(とうどう)(かおる)』が送る人生で、一番の喜びは?と聞かれれば、いの一番に言う答えは決まっている。



ーーー捨てられているエロ本を見つけたときだ、と。



......まあ、わかっている。俺が変態だということは、他でもない俺自身がとうの昔に知っているし、また、どうしようもない、ということさえもわかっている。


だがしかし俺は男なのだ。男ならば、それも高校二年という、思春期真っ只中であるならば、そんな考えをもっていても仕方ないことであろう。俺は悪くない。悪いのは俺をこんな風にした、思春期という存在そのものだ。


そして男ならば、誰もが感じたことだろう?そう、小学生の時などだ。河川敷や誰も使わないような古いゴミ箱などに捨てられたエロ本を見つけた時の、あの高揚感を。あの躍動感を。あの胸のドキドキを。


そうだ。俺はそれらを忘れられなくて、今もこうして、捨てられたエロ本を見つけてしまうのだ。



ーーーさてここで本題だ。先程は人生で一番の喜びとは、と聞いたが、ならば、そう。その逆。人生で一番不幸だと思ったときは、と聞かれれば、どう答えるであろう。



食べたものが賞味期限切れだったとき?道端でうんこを踏んでしまったとき?好きな女子のリコーダーを吹いてたら、本人に見つかってしまったとき?


これも個人差だろう。人それぞれ。賞味期限切れだったことを一番不幸だと思うやつがいれば、そうは思わないやつがいて。うんこを踏んだことを一番不幸だと思うやつがいれば、そう思わないやつもいる。......リコーダーは、下手すればみんながみんな、一番不幸だと思うかもしれないが。



まあ、少なくとも、俺は。俺の中で、一番不幸だと思ったのは。







「ーーーぐべらっしゃぁぁぁっ!?!?」






道路に捨てられたエロ本を取りに行こうと飛び出た瞬間、トラックにはねられるという、今現在なわけであるが......。












◆ ◇ ◆











「ーーーエロ本!?」


『目が覚めた第一声がそれってどういうことなのっ!?』


意識を取り戻し、起き上がった瞬間に、俺は自分の右手を急いで見る。......しかしそこにはあの時手にしたはずのエロ本はなかった。あるのはただ、俺の右手だけ。


「......この世の終わりだ」


『目が覚めた瞬間変なこと言うしいきなり絶望したような雰囲気になるし一体なんなのよこいつ!?』


あぁ、ちくせう。あの時俺は確かにあのエロ本に触れたはずなんだ。あのトラックの運ちゃんが邪魔しなければ取れたはずなんだ。俺の一番の喜びが、楽しみがぁ。不幸だ。


などと、某不幸少年の口癖を心の中で呟きながら、俺は辺りを見渡した。


「......真っ白だなぁ」


『ねぇ無視なの!?さっきからすごく喋ってる私は無視なの!?ねぇなんで!?私神様だよ!?』


そう。見渡して最初に思ったのが、それ。だがまあそれも仕方ない。だって俺の周りには、それはそれは、どこが行き止まりかもわからないほど広がっている、ただただ真っ白に染まった空間だったのだから。


そして先程から変な声が聞こえるなぁ、と思ってたら、なんのことはない。俺の目の前にいる、『黄色い球体』が喋っているだけだった。


......あれ?球体って喋るっけ?


「......ガ〇ツ?」


『私黄色だし!そもそも喋ってるし!!』


どうやらガン〇ではないらしい。まあ、それもそうか。俺もいい加減現実を見ようじゃないか。さっきまで道路にいて、目が覚めたら果てしなく真っ白い空間。まあ、とどのつまり。


「死んだ、ってわけか......あの時のエロ本を、助けられずに。くそぅ!!」


『なんでそこを悔しがるの!?おかしいよね!?そもそもあれ無機物だから!助けるとかないから!!』


「あのエロ本だって、もっと生きていたかったはずなんだ。それなのに、それなのに......!俺は、助けてやることができなかった!救ってやることが、できなかったんだ!!」


『いやだから無機物だからね!?っていうかいい加減話聞いて!あなたが死んだのは、私のミスのせい!OK!?』


「エロ本が死んだのが、あんたのミスのせい?」


そっちじゃないよ!?などと喚いてる球体の言葉など、俺の耳にはもはや届いてなかった。


この球体のミスのせいで、俺はエロ本を取れなかった?救うことができなかった?この球体は俺の人生で一番の喜びを奪いさり、あろうことか、エロ本の命まで奪ったと、そういうのか......?


「OK。つまり貴様は、エロ本の仇、というわけだな?」


『どういうわけなの!?全然OKじゃないよ!?ええい!いい加減に話を聞きなさい!!』


球体がそう激高した瞬間、真っ白だったはずの空間から、これまた真っ白な蔓みたいなものが出てきて、俺の体を身動きのできないように縛り上げた。


これには流石の俺も驚く。


「んなっ!?」


『はぁ。はぁ。どうして人間相手に説明するだけで、こんなに疲れるのよ......人間ってみんなこうなのかしら』


失敬な。それだとまるで、この俺が常識のない、所謂話の通じないやつみたいじゃないか。


『あんたが正しくそうなんだけど!?ーーーって、そうじゃなくて!いい加減説明させなさい!

一、あなたは死んだの。私のちょっとした手違いのせいでね。

二、それが上の方にバレちゃうと、私の立場的に問題が起きるの。下手すれば死刑。

三、だから証拠隠滅のために、あなたにちょっとした特典あげて、異世界に送るのよ。そうすればあなたは、元からあの世界にはいなかったことになって、最初から異世界にいることになる。ほら、何も不自然なところがないわ。

四、だからとっととそこにあるゲートに飛び込みなさい。あ、特典だけど、異世界に行ってから自動的にわかるようになってるわ』


そうやってひときしり言い終えた球体ーー一応神らしいがーーは、俺の体を縛り上げていた蔓みたいなものを真っ白な空間に仕舞う。


まあ、ご丁寧に説明云々されたが、つまりは、こういうことだろう?



ーーーごめーん私のせいで死んじゃったー。誰にもバレたくないから、とっとと私のために証拠隠滅されちゃって?てへぺろ。




......イラッときた。端的に言えば、俺は怒った。


この球体、神だがなんだかしらないが、あれだろ?今まで世の中自分の思い通りに動いてきたんだろ?だからこいつは、自分こそが正義、だから自分は悪くない、ってな感じで天狗になってんだろ?


いいぜ。てめぇが今の今までを自分の思い通りにできて、これからも思い通りに動かす、そのためならば自分以外のやつなんてどうでもいいって、そう言うのなら。




ーーーまずはその、ふざけた幻想をぶち殺すッ!!




「うおぉぉぉぉりゃぁぁぁぁっ!!」


『え?な、なになに?なんで私掴まれてんの!?』


右手を伸ばして目の前で偉そうにしていた球体を握る。まさかそのようなことをするとは予想もしてなかったのだろう。突然の俺の行動に、慌てたような声を出すしかない球体。もとい、神。いやもう駄神でいいよな、こいつ。うん駄神だ。


とにかく、そんな駄神を右手で握りながら、ズンズンといつの間にか現れていたがあえて何も突っ込まなかったゲートに向かっていく俺。


エロ本の仇を、俺は今ここでとってみせる。


「ヘイユー!そんなに俺を異世界に行かせたいってんなら、いいぜ行ってやんよ!だがなぁ、このままテンプレ通りに行くと思うな!?



ーーーそうさ、てめぇも一緒に来るんだよぉ!!」


『えっ、ちょっ!?はい!?待って待って待って何がどうなっ―――』




そうして俺......否、俺たちはゲートをくぐり抜け―――
















「うおおおおおおおおおおおおおおおーーーー!?!?」


『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!?!?』






ーーー先程までの、どこまでも真っ白の光景が広がっているだけだった空間から一転。どこまでも青く澄んでいる、そんな大空の旅を体験をするのであった。

感想等、心よりお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ