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俺、迷子になったよ

香月さん、柊さんが部屋を出ていったので俺はこの簡素な部屋に一人となった。


何が言いたいかというと、暇なのだ。


手持ちにあるのは充電切れ寸前のケータイにスーパー、コンビニのレシート、小銭がひーふーみー、たったの42円あるだけだ。全く…どんだけ貧乏なんだよ俺は。



しかしこれでどう時間を潰せと?



「よし、このレシートで暇でも潰すか…」



そう、何事も挑戦から始まるのだ。

右手にコンビニのレシート、左手にスーパーのコンビニを持って、ベッドに寝転がりながらそれをじっくりと眺める。それはもうじっくりと。






―十数分後―


「無理だ、飽きた」


だいたいレシートを眺めて「あ、コンビニのポイント貯まってる。やったね」くらいしか思わんし、なによりレシートで暇を潰そうという考えが全くわからん。


てか、誰かレシートで5分以上暇を潰した俺を誉めてほしいわ。


どうやら俺の頭は一周回っておかしくなっていたようだ。



だがしかし、この数分間は無駄ではなかった。



「そう、この建物を探索すればいいんだ」



何故俺はこんな初歩的なことをすぐに思いつかなかったんだろうという疑問を浮かべながらベッドから起き上がる。




そして思い立ったらすぐ行動!の精神でこの退屈な部屋からおさらばするため扉に手を掛けようとする。



だがそれは失敗に終わった。なぜならこの扉、自動ドアなのだ。


空振った右手を何事もなかったようにズボンのポケットに入れる。


(よし、何もなかった。決して俺は扉に手を掛けようとしたわけではないんだ。)


自分にそう言い聞かし、自動ドアから部屋を出た。




部屋の外は廊下が続いていた。白っぽい壁に灰色の床、大理石かな?詳しくは知らないけど全体的には高級感や清潔感がある。


―――それにしてもここの設備には圧巻だ。扉のほとんどは自動ドアとなっており、シュッ!て開くのだ。そう、ウィーンではなくシュッ!とだ。


大事ではないが感動したので二回言った。



そしてこの建物、かなり大きい。


香月さんが大規模、と言ったからには大きいんだろうなーと、軽く考えていたのだが実際に歩き回ってみると驚くほどに自分がどこにいるのかわからないくらい大きい。

現に今、俺は絶賛迷子中だ。



しかーし!!俺の好奇心の前には迷ったなどという些細なことは関係無いので臆することなく適当に歩いていく。







「お、なんだあれ?」


ひたすらに歩き続けていると前方に一際大きな窓があった。その大きな窓に近付き中を覗く。


すると中では炎や電撃やらが飛び交っており、剣などの武器を持った人たちが十数人いた。



訓練ぽいことをしているので訓練所とかそんなんだろうと推測する。



俺は付近を見渡して入り口らしき所でプレートを発見。


「ああ、修練場ね…」


そのプレートには 第一修練場 と書かれており、第二修練場 もあるのかな?とどうでもいいことを考えながら再度中を覗く。



人数は二十人程度で男女比は3:1くらい、その大半は俺と歳はそんなに変わらないように見える。



「おおー、すごいな…もう魔術とそんなに変わらんぞ、これ…」



人々が訓練する中、男一人に女四人という構成からなる、とてつもなく目立つ集団がいることに気付いく。



「うわ、強盗の時のハーレム野郎か…」



てか昨日より一人増えてるし。


一日に一人ペースで女の子が増えるなら一年で365人にもなるんだよなーと超当たり前のことを考えていると修練場の方で動きがあった。



見た感じではケンカだ。


赤みがかった茶色の髪を後ろで一本にまとめた髪型、所謂いわゆるポニーテールの女の子がガヤガヤと騒がしいハーレム野郎に引っ付いている女達に向かって何かを言っている。


ポニテ少女は顔をこちらに向けていないのではっきりとは分からないが横顔から察するに美少女。服装は動きやすいシャツにホットパンツ。


そしてその少し後ろには見覚えのある少女、逢坂桜が地面に座り込んでいた。



ケンカの原因はある程度予想できるものの所詮予想なので確認のため、強化系魔術〈感覚強化〉を使いガラス一枚向こうの会話に集中する。




「おい、急になにするんだよ?今わざと桜にぶつかっただろ!?」



ポニーテールの少女は今にも殴りかかりそうな勢いで叫ぶ。



「何って、邪魔だったのよ。だいたい貴女のような野蛮人の分際でこのわたくしに口出しするなんて頭が高いわ。それにそこの貴女、治療しかできないような臆病者がどうしてCランクなのかは理解に苦しみますけど、貴女達のような存在のせいでわたくし達エリートに悪影響がでますわ」



それに対してハーレムの中の一人、青色の瞳、金色の髪を頭の横でドリルのように巻いたような髪型で、いかにも外国の由緒正しいお嬢様といった感じが伺える。

そんな少女が見下した態度で早口に反論、罵る。

これが反論かは怪しいところだが。



そしてもちろん、こんなことを言われてポニテ少女が黙っているわけがない。



「テメェ……おい、オレと勝負しろ。それでオレが勝ったら桜に謝れ」


ポニテ少女、オレっ子だった。俺得。



わたくしが勝負だなんて野蛮な真似をするとでも?」



「もしかしてアンタ、負けるのが怖いのか?それで怖じ気付いたのか?てことはアンタこそ臆病…「いいですわッ!!受けて立ちましょう。勝つのはわたくしで決まっていますが、勝ったら貴女、二度とわたくし達の前に顔を見せないでくださいな。」



あらま…金髪縦ロールは挑発に乗ったのか。まああんな挑発を面と向かってされたら乗るかも、俺。



「ほざけ!その余裕、ぶっ壊して桜に謝らしてやる!!」



やだ、男らしい……と俺の感想を置いといて、二人は益々ヒートアップしていき、周りの人達は避難し終わったので本格的にドンパチやり始めるのだろう。



途中でハーレム野郎が仲裁に入ったが結局、ポニテ少女、周りの人の言葉から察するに名前は神代香美かみしろかみに「女たらしのヘタレはすっこんでろ!!」と言われ撃沈。


ざまーみやがれ、この女たらし。





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