Stage4 トーンがここなの学校に来た!(2)
帰り道、ここなはトーンと一緒に歩いていた。トーンから一緒に帰ることを提案されたのだ。
「ありがとう、トーン……」
「ここなを守れてよかった」
ここなは、初めて心にぬくもりができたのを感じた。
しばらく歩いていると、何者かがここなたちの前に立ち塞がる。
「あなたは……!?」
「俺はディスコーズの一人、ダーコンだ。世界を悲しみでいっぱいにするため、やってきた」
「ディスコーズって、あの……!?」
「トーン、知ってるの!?」
トーンは、ディスコーズに心当たりがあるようだ。
「僕の故郷である『ミューグダム』を襲った組織だ」
「その通りだ。それとこの前は、よく俺の邪魔をしてくれたな。もう一人のアイデレラ」
「……!」
もう一人のアイデレラという言葉に、ここなは追い詰められたような感覚を覚える。
「早くお前を倒す! 出てこい、サッドン!」
ダーコンが魔法を使うと、ドロドロした怪物、サッドンが出現する。
「¥÷+○・☆¥$$¥%〜!」
サッドンの不協和音によって、周囲の人々が倒れたり、座り込んだりし始める。
「ここな!」
心が悲しみに支配されていく。ここなも座り込んでしまうが、なんとか立ち上がろうとする。トーンが、ここなの手を握る。
「もう、悲しくなりたくない……」
ここなはそう言いながら、カバンをさぐり始める。中から、きらめくマイクを出した。
「このブライトマイクで、変身するんだ!」
ここなはうなずき、マイクを口に近づける。
「アイドルシンデレラ・オン・ステージ!」
するとマイクは光り輝き、ここなを包み込んでいった。
ここなの体は、青い光に包まれた状態となった。
「レッツドレスアップ! 軽やかなシューズ!」
こう唱えると、ここなにブーツが装着される。
「華やかなドレス! きらびやかなアクセ!」
ステップを踏んでいるここなに、衣装やアクセサリーが装着されていく。
「つややかなヘアー!」
そしてここなの青色の短いポニーテールが、水色の長いものに変化する。
変化が完了し、ターンをする。
「きらめく大海原! アイデレラ・オーシャン!」
こう名乗り、ウインクしながら両手を握るポーズをする。
そしてオーシャンは、ステージに降り立った。隣には、アイデレラ・スノーの姿がある。
「オーシャンなら、大丈夫」
トーンの声が、オーシャンのインカムから聞こえた。そして曲が流れ始める。
「Cheer up! みんなの力で〜」
「Cheer up! 元気を出そう〜」
スノー、オーシャンの順に歌う。そして元気いっぱいに踊り始める。
「悲しい一日だった日は〜自分をいたわって〜」
「今日できたことは〜きっと見つかるよ〜」
オーシャンは歌っている間、歌うことの楽しさに気づいていく。
「Cheer up! 自分をほめて〜」
「Cheer up! 元気を出そう〜」
「 「誰にでも〜いいところがあるから〜」 」
悲しんでいた観客たちは、元気を取り戻したことを示すように、サイリウムを高速で振っていく。
「 「みんな元気で〜Cheer up!」 」
歌い終わり、盛大な拍手がわきおこる。
そのとき、オーシャンとスノーの頭上に、ミュージックプリズムが出現する。二人はそれに手をかざし、パワーを得る。
「スノー・ダイヤモンドショット!」
スノーが、たくさんのダイヤモンドを弱ったサッドンに放つ。やられそうだったが、姿は消えていない。
「オーシャン・トロピカルウェイブ!」
サッドンの様子を見て、オーシャンも浄化技を使う。きらめく波がサッドンを襲う。そして溶けていなくなった。
「またサッドンがやられるとは……」
ダーコンはそう言い残し、姿を消した。
「二人とも、歌もダンスもすごく上手だったよ」
トーンが、オーシャンとスノーのところに来る。
「ありがとう、スノー」
オーシャンの言葉に笑みを浮かべたスノーは、姿を消す。
「行っちゃった……」
「いつかスノーとお話できるときが来るよ」
スノーのことが気になっているオーシャンに、トーンが話しかけた。オーシャンは、軽くうなずいた。
★
街を歩く人々は、みんな笑顔であふれている。ここなの視界は、わずかに色がついていた。
「みんなの笑顔、見てると幸せ……」
ここなは、ライブによって笑顔を取り戻せた。その影響で、心の中の悲しみも、ほとんどなくなっているのだった。




