Stage30 私はこれからもずっとアイドル!
「ここな、ゆきね、今までありがとう。君たちと出会えて僕はうれしかったよ。そしてアイデレラが君たちでよかった」
アイデレラのラストライブが終わり、トーンがここなとゆきねに声をかける。
「トーン……ありがとう……。あなたのこと、ずっと忘れないから……」
ここなは、涙を流しながらトーンと抱かれているミュアンの手を握った。
「ここな、これからもあたしのファンでいてね」
「もちろん」
ここなは、国民的アイドルであるゆきねと、思いっきり抱き合った。
「ここな、ゆきね、元気でなー!」
トーン、ミュアン、ミューグダムの住民たちが、ここなとゆきねに手を振った。しばらくしてトーンは、ここなとゆきねにねおん市へ戻る魔法をかける。やがて二人の姿がなくなった。
★
それから二ヶ月後。
夕方になったねおん市で、ここなは帰宅した。
「おかえり、ここな」
母親が、優しくここなを出迎えた。何度も虐待をしていたとは思えないほど、母親の人格は変わっていた。
「ここな、ごめんね。何度もひどいことして……。これからはここなを大事にするから」
母親はここなを抱きしめ、背中を優しく撫でる。
「あとここな、ちょっとこっちに来てほしいの」
母親は、ここなをリビングまで連れていく。テーブルの上には、白い箱がある。それを、母親が開ける。ここなはその中身を見る。
中には、ろうそくの立ったホールケーキが入っていた。
「ここな、お誕生日おめでとう」
ここなは、今日の日付を思い出す。今日は三月十四日。ここなの誕生日だ。
「ママ……」
初めて母親が誕生日を祝ってくれたのだ。その事実に、ここなは涙をこらえきれない。ここなは、母親に泣きつくのだった。
★
四月になり、ここなは進級した。
始業式の日、ここなは、気持ちよく目覚めた。ベッドから自然と出られた。いつものように学校へ行こうと、美味しい朝食を食べて、制服に着替える。
通学途中、ここなは空気の気持ちよさを感じていた。通学路はカラフルに彩られ、思わず口ずさんでしまいたい気分だった。
ここなは、アイデレラの曲を歌いながら、学校に向かうのだった。いじめや虐待のない、平和な日常が始まろうとしていた。
★
それから時が流れ、ここなは高校生となった。学校帰り、ここなは道端を歩いていた。
「すみません、ちょっといいですか?」
一人の女性が、ここなに声をかける。
「はい……」
「あなたが、海風ここなさんですね。私は芸能事務所・ホワイトスノープロダクションの社長、白雪と申します。実はあなたをアイドルとしてスカウトしたく、お声がけさせていただきました」
社長にスカウトされたここなは、芸能事務所に案内される。
そこには、見慣れた人の姿があった。
「トーン、ゆきね、ミュアン……!?」
「久しぶりだね、ここな。実は僕がここなのマネージャーをやることになった」
「おめでとう、ここな。あたしと同じ事務所に入ってくれて、うれしいの」
ここなは、トーンに抱かれているミュアンを撫でる。思わぬ形で、ここなはトーン、ゆきね、ミュアンと再会できたのだった。
★
ここなは、アイドルデビューの記念として、初めて歌番組に出演することとなった。海をイメージした衣装をまとい、ステージに立つ。
「初めまして! 海風ここなです! 今日から私はアイドルになります!」
アイドルになったここなを、テレビの前の母親、カメラ付近にいるトーン、ゆきねたちが温かい目で見守っていた。
ここなはそのとき、これからも自分の歌声でみんなを元気づけることを決意したのだった。
ここなのアイドル人生は、まだ始まったばかりだ。
スーパーアイドル♡アイデレラ・オーシャン~うつ病の少女、悲しみを癒すアイドルになる~ Fin.




