Stage28 オーシャンの願い!アイドルになりたいきっかけ(1)
ここなは、昔の頃の夢を見ていた。小学生のここなは、いじめにあい、泣きながら帰宅した。
「おかえり、ここな」
そんなここなを優しく迎えてくれたのは、心優しい父親だった。
「今、テレビで歌番組をやってるんだ。見たら元気になれると思うよ」
ここながテレビを見てみると、ステージの上で、華やかな衣装を着て歌い踊る少女が飛び込んできた。
「あの子は白銀ゆきねっていうんだ。まだ中学生だけど、世間から大きな注目を浴びている、人気アイドルなんだ」
「アイドルって何?」
「ステージの上で歌って踊って、ファンの人たちといっぱい交流する、みんなに笑顔を届ける人のことだよ」
「わあー、楽しそう! 私もアイドルやりたい! みんなを笑顔にしたい!」
「ふふっそっか。パパもここなを応援するよ」
父親はここなの髪を優しく撫でた。テレビでゆきねのライブを見たことがきっかけで、ここなはアイドルにあこがれを持つようになったのだ。
それ以来、父親はよくゆきねのCDやグッズを買うようになった。毎日いじめられて泣きながら帰ってきたここなにとって、ゆきねは心の支えとなっていった。
しかしここなが中学生になった直後。ここなはあるものを失った。ここなの両親が離婚したのだ。親権は母親がもらうことになった。離婚の原因は、両親のすれ違いやケンカが頻発したことだった。
ここなの幼い頃から母親による虐待はあったのだが、いつも父親がかばってくれた。しかし離婚によって、ここなは母親の虐待から逃げられなくなってしまった。
「ママ……やめて……!」
母親に蹴られたここなは、再び暴力を振るわれようとしていた。その瞬間。
「!」
ここなは勢いよく飛び起きた。その周囲には、ゆきねとミュアンが倒れている。
「目が覚めたか、ここな!?」
「トーン……!」
ここなに、トーンが駆け寄ってくる。少し離れたところでは、サッドンで埋め尽くされた観客席が見える。手元のブライトマイクは色を失っており、アイデレラへの変身はできなくなっていた。ここなはうつむきながら、マイクを強く握る。
「私、世界が悲しみでいっぱいになるのは嫌だ……。私は、みんなを笑顔にしたいから、アイドルをやりたいって思うようになった」
ここなはそう言うと、サッドンのところまで走り始める。
「みんなに届ける〜幸せの歌〜」
ここなは歌いながら、大量のサッドンに飛び込んでいく。
「ここな! 危ないからやめるんだ!」
トーンがここなを止めようと走り出す。そんなここなの姿は、全国のテレビカメラで撮られていた。
「私は〜みんなと〜幸せになりたい〜」
「ここな……!?」
ここなの母親が、テレビ越しにつぶやいた。まさか自分の子供が、怪物に立ち向かっているなんて。
しかし大量のサッドンに対して、変身せずに立ち向かうのは、無謀なことだった。ここなは、次々とサッドンに殴られ、傷を負っていく。
「ここな! ここな!」
トーンが、意識の遠いここなを揺すっている。
「ここな!」
「ゆきね、ミュアンも目が覚めたのか!」
目を覚ましたゆきねとミュアンが駆けつけてくる。
「えっ、ゆきね!?」
テレビから見ていた人たちが、ゆきねを見て動揺する。
「みんなー! 負けないでー!」
そんな声が、サッドンで覆われた観客席から聞こえ始める。そこでは、一本のサイリウムが光を放っていた。その光は、ここなたちに向かってくる。
「うう……」
「ここな!」
傷が少し癒えたここなは、目を開けた。するとサイリウムが次々とサッドンの海から顔を出し始める。サイリウムの光が、どんどんここなたちに力を与えていく。
「ここなー!」
サイリウムを振っている観客席の中には、ここなをいじめていたクラスメイトや、改心したディスコーズのメンバーもいた。
やがてここなたちは、まぶしい光に包まれた。




