Stage23 ここなとゆきねのお泊まり会(1)
握手会を終えた帰り、ここなたちは新幹線でねおん市に向かっていた。
「こんなにいい反応が……!」
トーンは、スマホでSNSを眺めていた。「#アイデレラ」で検索する。
「今日初めてアイデレラの握手会に行った! 憧れのアイドルに会えてテンションMAX!」
「アイデレラのライブは神! 仕事の疲れが吹き飛んじゃった!」
などの投稿が流れていた。また、アイデレラの公式アカウントのフォロワーは、千人を突破していた。そんなトーンのスマホを、ミュアンが興味深そうに見つめていた。
「アイデレラの認知度、急上昇してるみたいでよかった」
とトーンはつぶやいた。
トーンの前の席には、ここなとゆきねが座っている。
「ねえ、ここな」
うとうとしているここなに、ゆきねが声をかける。ここなは、軽く目をこすった。
「今度、あたしの家に来てほしいな」
「わ、私が!? どうして!?」
ここなの眠気が一気に吹き飛ぶ。
「せっかくお友達になれたから、ここなを招待したくなったの」
「えっ……いいの……!?」
ここなは、胸が跳ね上がるのを感じた。ゆきねははっきりとうなずいた。
「それじゃあ、お言葉に甘えて……」
ここながそう言うと、ゆきねはにっこりした。
★
ここながゆきねの家に行く当日、ゆきねがここなの家まで迎えに来てくれた。支度をしたここなは、玄関まで向かう。そんなここなを、ミュアンが追った。
「ミュアン、どうしたの?」
「どうやらここなに着いていきたいみたいだ」
とトーンが言った。ミュアンは鳴き声を上げながらうなずいた。
「よし、一緒に行こうか」
ここなはミュアンを抱えると、玄関を出た。トーンはここなを見送った。
★
ゆきねの家までは、そこまで遠くはなく、バス一本で行ける距離だ。
「わぁ……! 素敵な家……!」
ゆきねの家は、どこか高級感を感じられる白い建物だ。
「ふふっ、遠慮せず上がって」
「おじゃまします……」
ここなはインターホンを押すと、ゆっくり扉を開けた。
「……!」
綺麗な白いタイルの上に、靴が丁寧に並べられている。ここなは、ゆきねの家に対して裕福な印象を受けた。
「あたし、最近家をリフォームしたの」
目を丸くしているここなに、ゆきねが言った。自分とは全然違う、とここなは思った。
「あら、いらっしゃい。あなたが海風ここなちゃんね」
とゆきねの母が玄関に来てくれた。
「よろしくお願いします……」
とここなは軽く礼をする。
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まずここなは、ゆきねの部屋に案内された。散らかっている部分はなく、整頓されている。
「ゆきねの部屋、なんだか輝いて見えるよ……」
「そう言ってくれるなんて……」
照れているのか、ゆきねはうつむいた状態である。それを隠そうとしているのか、
「あっ、お茶持ってくるね」
と言って部屋を後にした。その間、ここなはミュアンを撫で回していた。
「ミュアンもゆきねの部屋が気に入ったみたいだね」
少しすると、二人分のお茶を持ったゆきねが部屋に入ってくる。一つずつ、机の上に置く。ここなはお礼を言うと、半分ほど飲む。
「あたしの家に来てくれたから、ここであたしと一緒に遊ぼう! よかったら、トランプでもしない?」
「やりたい!」
友達のいなかったここなは、こういった遊びをめったにしなかった。引き受けると、ゆきねはトランプの入った箱を取り出す。
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「うぅ……ゆきね強いよ……」
ここなとゆきねは、ババ抜きを数回していた。ここなの手には、ジョーカーが一枚あった。ここなは、一勝もできていない。うなだれるここなを、ミュアンが優しく撫でる。少ししてゆきねもここなを撫でる。
「そうだ。近所にお店たくさんあるんだ。一緒に行かない?」
「ちょうど気分転換したかったから、もちろんいいよ」
ゆきねが、お出かけすることを提案する。悔しさを紛らわしたかったここなは、賛成した。
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サングラスとマスクをしたゆきねは、ここなの手を引きながら歩いていた。人混みのスクランブル交差点を渡っているところだ。ここなは、片方の腕でミュアンを抱いている。
「この店だよ」
タワーのように高い建物へ、ここなたちは入った。
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ここなたちが入った店は、アクセサリーやコスメが売っているところだった。
「あたし、これをよく使ってるの」
ゆきねは、貝殻の形をしたファンデーションを手にとって、ここなに見せる。銀色の蓋に、二人の顔が反射している。
「私にはどんなコスメが合うかな?」
ここなは、ピンク色のチークを試しにつけてみる。
「似合ってるよ、ここな」
「嬉しい……」
ゆきねにそう言われたここなは、そのチークを買うことにした。
それからアクセサリーも見てみた。ここなの目を引いたのは、アクアマリンの宝石つきのネックレスだった。
「これはアクアマリンという宝石だね。ここなにピッタリの色だと思うの」
「これ、なんだか私に力を貸してくれそうな気がする……」
ネックレスを気に入ったここなは、それを購入することにした。
★
買い物を終えたここなたちは、店を出た。
「ここも素敵な都会だね。次はどこに行く?」
ここながそう言ったとき、低く唸るような音が聞こえた。ミュアンは、か細い声で鳴いた。
「?」
「ミュアンは、お腹が空いてるみたいなの。よかったらあたしの家に戻って昼食にしよう」
ここなは、ゆきねの提案に賛成した。それから、人混みの中を家まで歩いていく。
★
その日の昼食は、ゆきねが作ってくれた。
「ちょっとミュアン!? 私の分を取らないで!」
ここなの分まで食べようとするミュアンに、ここなは戸惑っていた。そんな様子を、ゆきねたちが微笑ましそうに見守った。ここなも、美味しさで自然と笑顔になった。




