Stage14 ここなと迷子の少女(1)
夏が始まった頃のねおん中学校にて、ここなたちは授業を受けている。
「よりによってあの子とペアだなんて……」
国語の教科書をペアで読んでいくワークで、ここなはいじめのグループのリーダーとペアを組むことになった。
「はっ、はじめは今日も……一人でいた……」
ここなは緊張で、読み上げる声に落ち着きがない。
「まじめに読めよ!」
「……っ!」
いじめのリーダーが、すぐここなを怒鳴る。
「ふざけてなんかないのに……」
と俯きながら思った。
「ったく、使えない奴」
とここなに対して舌打ちする声が聞こえた。ここなは次第に涙を溢れさせてしまう。
「どうした、ここな!?」
ここなの泣き声に気づいたトーンが、駆けつける。そして、ここなを教室の外に連れていく。
「大丈夫。ここなは何も悪くないよ」
トーンは、ここなの背中を優しく撫でる。ここなはしばらくの間落ち着けなかった。
★
それからここなは、授業をこれ以上受けられないくらい精神が苦しかったので、早退した。そして、精神科に向かった。カウンセラーに会いたかったのだ。
「すみません……」
と泣きそうな声で受付の人に話しかける。しばらくして、カウンセラーがここなのところに来てくれた。
「ここなさん、どうしましたか?」
ここなたちは、カウンセリングルームに移動する。
「実は、教科書をペアで読み合うというのがあったんですけど……クラスの苦手な人とペアで、緊張して上手く読めなかったんです……そしたら怒鳴られて、使えない奴って言われて……」
ここなはそう言うと、思いっきり泣き出した。
「それはつらかったですね。ここなさんのせいではありません。苦手な人が一緒だと、いつもより緊張するのは自然なことです。そういった方と距離を置くのは、心を保つのに必要ですよ」
カウンセラーはここなを撫でると、学校でのここなの行動を尊重する。
「うわあああっ……」
落ち着かないここなを、カウンセラーは優しく慰め続けた。
★
薬局で抗うつ薬を処方してもらったここなは、家に帰ろうとした。
「ん?」
道路の真ん中に、たった一人で幼い少女がいるのを、ここなは見つけた。小学校低学年くらいだろうか。
近づいてみると、少女は泣いているのが分かった。ここなは、ゆっくり話しかけてみる。
「大丈夫?」
少女はびっくりしたのか、ここなからゆっくり離れようとする。
「私は怪しい人じゃないよ」
少女の表情が和らぎ、ここなに何があったかを伝える。
「お母さんと、はぐれちゃった……」
「そっか……ここにずっといるのも危ないし、私の家に来ない?」
「いいの……?」
「大丈夫。私は悪いことなんて何もしないから」
少女は、ここなの手を握ってくれた。ここなは、家まで歩く。
「着いたよ!」
少し歩くと、ここなの家に到着した。初対面の少女を連れているここなは、インターホンを鳴らす。
しばらくして出てきたのは、トーンだった。ミュアンを抱いている。母親は仕事で家にいない。ミュアン救出後は、トーンがここなの家で暮らしたいと言い、ここなが承諾した。その後母親も受け入れてくれた。
「ただいま。実は迷子の女の子を連れてきたんだ。一人だと危ないと思って」
「そっか。よかったら上がってよ」
トーンは、迷子の少女を出迎えた。それからここなの部屋に向かう。
「君、名前はなんて言うの?」
とトーンが尋ねる。
「ゆうな」
「よろしくね、ゆうなちゃん。私は海風ここな」
「僕は五線譜トーン」
ここなとトーンは、軽く自己紹介をする。
「さて、あなたのママをどうやって探そうかな……」
「僕も協力するよ」
ここなたちは、ゆうなの母親を探し始めることにした。トーンは、ミュアンに留守番を頼んだ。家を出ると、手がかりがないかゆうなに聞いてみる。
「ゆうなちゃんは、何をしに出かけたの?」
「お買い物……。スーパーに行く途中で、可愛いお洋服を見つけて、夢中になってたらはぐれちゃった……」
「もしかしたら、スーパーに行ったら会えるかもしれないよ」
ここなたちは、まず近所のスーパーに行くことを決めた。
「あっあれは……!」
歩いていると、向こうにゆきねの姿があった。ここなたちに向かってくる。
「あっ、ここなにトーン。この子はどうしたの?」
「ゆきねだ!?」
ゆうなは、思わずゆきねに抱きつこうとする。ゆきねは少しパニックになる。
ここなとトーンは、ゆうなをゆきねから離そうとする。
「もしかしてゆうなちゃん、ゆきねのファンなの?」
ここなは、ゆうなから手を離す。ゆうなは大きくうなずく。
「そうだったのか……でもいきなり抱きつかれたら、ゆきねがびっくりしちゃうよ」
「これくらいの年なら、そうなってもいいと思うよ」
とここなが、ゆうなの行動に共感を示す。ゆきねは、既に落ち着いている。
ここなとトーンは、ゆきねが迷子になっていることを説明する。
「それで今、スーパーに向かっているところなんだ。ゆうなちゃんのママに会えると思って」
「あたしのファンに会えるなんて嬉しいし、よかったらあたしも手伝う」
「やったー!」
ゆうなは、母親とはぐれたことを忘れてしまうくらい、テンションが上がっていた。
「それじゃあ、行こうか」
ここなたちは、再びスーパーに向かって歩き始める。
「あそこじゃない?」
歩いていると、スーパーが見えてきた。
「合ってるかは分からないけど、まずは入ってみよう」
ゆうなの母親がいるかもしれないと思い、スーパーに入ろうとした、そのとき。
スーパーの屋根に、デッドエンの姿がある。
「楽しいところなんて、俺はもう見たくない……。出てこい、サッドン!」
デッドエンが魔法を使うと、ここなたちの目の前に怪物サッドンが現れる。
「!?」
異変にすぐ気づいたここなは、「ゆうなちゃん、逃げて!」と叫ぶ。トーンは、ゆうなを連れてサッドンから離れる。
「☆€¥¥€♪¥$#$〜!」
サッドンが不協和音を響かせる。ゆうなは、その場に倒れてしまう。
「ゆうなちゃん!」
ここなとゆきねは、襲ってくる悲しみに耐えながら、ゆうなのところに向かう。
「この世界……嫌だ……」
ゆうなは、無気力になってしまっている。周囲にいる買い物客たちも、座り込んでいる。
「みんなを助けよう!」
ここなとゆきねは、ブライトマイクを握る。




