表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/14

Stage2 アイデレラ・オーシャンのデビュー(1)

「君、アイドルになりたいんだよね?」


 謎の青年、五線譜(ごせんふ)トーンに声をかけられたここな。自分が密かに持っている気持ちを当てられ、ここなはぽかんとする。


「えっいや……アイドルなんて……」


 ここなは、無意識にアイドルへの憧れを否定しようとする。


「僕には分かるんだ。君がアイドルに憧れているということを」


「……!」


 ここなは、胸に何かが刺さったような感じがした。


「君に協力してほしいことがある。伝説のアイドル『アイデレラ』になってほしいんだ」


「アイデレラ……?」


「最近、この辺りで悲しみをもたらす怪物が現れるようになったんだ。あの怪物は、アイデレラにしか立ち向かえない」


 ここなは、昨日現れた怪物を思い出す。


「でも私……なんの価値もないから……アイドルなんて……なれるわけない……」


「ここななら大丈夫……」


「これ以上話しかけないで!」


 ここなは、トーンから逃げるように走り去った。トーンは呼び止めようとするが、ここなには聞こえていない。


「あんな人……怪しいに決まってるよ……」


 ここなは、ため息をつきながら帰宅した。


 ★


 とある暗い場所にて、怪しい男三人と、女一人が話し合っていた。


「今回も……負けてしまった……」


「どうしたら……アイデレラを……滅ぼせるのだ……」


「次は俺に任せろ。いい作戦があるから」


「助かる、ダーコン」


「俺たちディスコーズなら、アイデレラなんて簡単に倒せるさ」


 悪の組織・ディスコーズの一人、ダーコンはその場から姿を消した。


 ★


「うつ病になったのは、全部ここなのせいだよ!」


 帰宅後ここなは、うつ病の診断を受けたことを母親に話すが、人格を否定されただけだった。


 部屋に戻ったここなは、荒い呼吸を何度もした。泣きたい気分だったが、感情の麻痺で、涙すら流せない。


「はあ……私は……どうして……こんなのばっかり言われるんだろう……」


 しばらくして落ち着いたここなは、昨日ライブをしていた少女のことを思い浮かべる。


「昨日のあの子って……もしかしてアイデレラ……?」


 怪物を撃退した少女は、トップアイドルのように歌が上手だった。


「こんな私が……アイデレラになれるわけないよね……」


 アイデレラを探しているトーンに、声をかけられたここな。しかしここなは、アイデレラになれることは微睡も思っていない。その後、ここなは一睡もできなかった。


 ★


 翌日になった。体が鉛のように重たく、ベッドから離れさせてくれない。その後ここなは母親に無理やり起こされた。朝食を食べる、制服に着替えることを体が拒否してくる。


 乱暴に手伝った母親によってようやく準備ができたここなは、学校に行こうとするが、その足取りはとても重い。いつもの通学路は色を失っており、「消えろ」という幻聴が、周囲を歩いている人たちから聞こえてくる。


 ふらつきながらも学校に到着したが、すでに授業は始まっていた。


「海風、今日も遅刻か! 何度言わせるつもりなんだ!」

 

 と先生に怒鳴られるところから始まり、ここなはいつものようにいじめられたのだった。ここなは既に居場所を失っていた。


 傷ついた机や椅子は、ここなの心と同じ状態だった。


「ここなはダメな人間だねー」


 そんな声がときどき聞こえてくる。その度、ここなの心に1つずつ穴が開いていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ