Stage12 悲しみのここな、とらわれのトーン(1)
現在は学校の休み時間。ここなは、授業で分からないところを、トーンに質問している。
「ここの計算のしかたは……」
トーンは、教科書に書かれている数字をなぞりながら説明する。
「トーンのおかげで、テストの悪い成績から脱出できそうだよ……」
「ははっ、よかった」
二人は、和やかな休み時間を過ごしたのだった。
★
「ここな、一緒に帰ろうか」
「うん」
一緒に教室を出たここなとトーンは、同じ道を歩いていく。
「今の心の状態はどうだ?」
「よくなってきてるよ。悪い夢も見なくなったから」
ここなは笑顔で答える。トーンは、ここなの家の前までついてきてくれた。
「じゃあ、また明日な」
トーンと別れたここなは、玄関に向かって歩いた。
★
ここはディスコーズのアジトだ。バッダーと、あと二人のメンバーが話し合っている。そのうちの一人である男は、トーンのペット「ミュアン」を抱えている。
「ダーコン、やられてしまったのか……」
「アイデレラ……だんだん強くなってきている。こちらも対抗できる作戦があればいいのだが……」
「俺に考えがあるぞ」
とバッダーが言う。
「アイデレラにはトーンというサポーターがいる。そいつを……」
「おおっ! それならアイデレラを倒せることに間違いない!」
「さすがね、バッダー」
バッダーは、さっそく作戦を実行しようと姿を消す。
★
翌日、ここなは学校まで歩いていく。足取りは軽いほうだ。時間もかからずに、学校に到着する。
「よっ、ここな」
教室に入ってきたここなに、トーンがすぐ話しかけた。ここなの口角が自然と上がる。
「トーンに話しかけられたら、一日がいい感じになりそうだよ」
いじめられてトーンに助けられて以来、学校で笑顔を見せるようになったここな。
「今日も、ここなが分からないところを、僕がいっぱい教えようと思ってる」
「もう少しでテストだもんね〜……」
ここなは、過去のテストで散々な成績しか残してこなかった。いじめの影響で、授業内容が頭に入らなかったからだ。今はトーンが教えてくれるため、授業にはついていけているが。
「大丈夫だってここな。僕がついてるから」
過去のテストのことを思い出してため息をつくここなを、トーンが優しく叩く。
「ちょっと不安がマシになったかも……」
ここなには、トーンに守られているという感覚が表れつつある。
★
「どうだ、ここな? テストは上手くいきそうか?」
トーンに教えられたここなは、小さくうなずく。二人は授業を終え、帰っている途中だ。
「最初トーンに会ったときは、すごく怪しそうな人だと思っていたけど、今はとっても頼もしい味方だよ」
ここなは、トーンと過ごしたときのことを振り返る。
「ここなをいい方向に向けることができたみたいで、よかった」
トーンは、柔らかい笑顔を浮かべる。そのとき、二人の目の前に誰かが立ちふさがる。
「今日こそは、お前を倒すんだ……」
怒りの混ざった声だが、表情はニヤリとしているバッダー。そして、怪物サッドンを呼び出す。いつもと異なり、ここなに向かってビームを出そうとしている。それにトーンが気づく。
「ここな!」
ビームがここなに命中する寸前、トーンがここなの前に立つ。
「トーン……!」
ビームの当たったトーンは、よろめく。後ろにいるここなが、トーンを支える。
「邪魔されたか……でもいい作戦があるぜ、やれサッドン!」
「ここな……逃げるんだ……!」
「そんな……」
とまどいながらも、ここなはゆっくりとトーンから手を離した。そして全力で走り始める。その途中で振り向く。
「!」
ここなが目にしたのは、大口を開けたサッドンにトーンが飲み込まれる瞬間だった。
「トーンっ……!」
思わずサッドンのところに向かおうとするが、自分も巻き込まれると思い、足を動かさなかった。
「どうだ? 大切な仲間を失った感想は」
「……」
ここなは、声を出せなかった。うつむき、握った両手を震わせる。そんなここなに、サッドンの不協和音が襲いかかる。
「♪☆¥$○・¥¥$〜!」
ここなの体から力が抜け、その場に座り込む。体が重たく、立ち上がれない。
「……」
ここなは、涙が出ていることに気づく。アイデレラに変身しようと、重たい手でブライトマイクを出すが。
「……!」
キラキラしているはずのマイクは、光を失っていた。
「アイドルシンデレラ……オン……ステージ……」
呪文を唱えるが、マイクは反応しない。
「どうして……私……アイドルに……向いてないの……?」
ここなは、虚無感で倒れてしまう。
「こんな私……大嫌い……」
ゆっくりと瞼が下りてくる。極度のネガティブさに支配されたここなは、目を閉じると同時に意識を失った。




