Stage10 ここな、カウンセリングを受ける(2)
学校に着くと、ここなは教室に入り、トーンを見つける。
「毎日連続で、いじめられる夢を見ちゃった……」
「ここな、ずっとつらかっただろ?」
ここなは悪夢に耐えられず、涙を流している。トーンは、そんなここなを慰める。やがて泣き止んだここなは、保健室に行くことを言った。
トーンに案内されたここなは、保健室に入る。
「どうしましたか?」
「悪い夢を何度も見ちゃってつらい……」
ここなはソファーに座ると、保健室の先生に現状を打ち明ける。
「授業を受けられそうにないほど……」
と付け加える。
「無理をする必要はありません。ここでゆっくり休んでくださいね」
ここなはしばらくの間、ここで休憩した。精神科に行った方がいいと考える。
「今日は授業を受けられそうにないので、早退したいです……」
と保健室の先生に申し出る。それからここなの教室についてきてくれ、帰る準備を手伝ってくれた。
「ここな、今日はゆっくり休めよ」
帰ろうとするここなに、トーンが一言声をかける。ここなはうなずき、教室を出る。ここなはわずかに、胸が温まるのを感じる。
★
帰る途中、ここなは精神科に寄った。
「今はいじめられなくなったんですが、最近毎日いじめられる夢を見てしまって……。たまにその夢のことを強く思い出すこともあるんです……」
とここなは医者にこう話した。
「ここなさんにとって、激しくいじめられたことがトラウマになっているからですね。それによって、悪い出来事を突然はっきり思い出してしまう『フラッシュバック』が引き起こされています」
「フラッシュバック……聞いたことあります」
「ここなさん、悪い夢は何日くらい見ましたか?」
「3日くらい連続です……」
「基本的には、1ヶ月くらいでフラッシュバックは収まると言われています。ですがここなさんにとっては、今すぐにでも悪夢から解放されたい、そんな気持ちではありませんか?」
「はい……」
「そこで考えがあります。ここなさん、カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか?」
「今まで受けたことがないです……小学生のとき、親に反対されたので。でも今は受けたいです」
「カウンセリングのことは、親に一切話しませんので、ご安心ください」
医者との話を終えたここなは診察室を出て、待合室でカウンセラーを待つ。
「お待たせしました」
と一人の女性がここなに話しかけた。案内され、部屋に向かう。
★
「あの……海風ここなと言います……」
「よろしくお願いします、ここなさん」
軽く挨拶をすると、カウンセリングが始まる。
「私はずっといじめられてきました……。母親からも虐待を受けて、毎日がつらかったです……」
「お医者さんから聞きましたよ。つらい中、生きてこられてえらいですよ」
「でも学校で新しい友達ができて、友達のおかげでいじめはなくなったんです。それに私の家まで行ってくれて、母親を説得してくれたんです。それで虐待も起こらなくなったんですが……」
「今でもフラッシュバックが起こるってことで間違いないですか?」
「はい……。毎日いじめられる夢を見てしまって、耐えられなくなったんです。今日は学校を早退してきました」
「それでいいですよ。ここなさんは、自分にとって楽しいことはありますか?」
「私、アイドルが好きで、歌って踊っているところを見てると楽しいです」
「素敵な趣味ですね。たまには自分の好きなことに目を向けてみるのもいいですよ」
「最近、好きなアイドルのことあんまり考えてなかった……」
ここなは、ステージで歌い踊るゆきねを思い浮かべる。ここなは、ゆきねに何度か助けられてきた。ここなに、光が少し届いていく。
「気持ちが少し楽になりました……」
「よかったです。これからも何度かカウンセリングを予定しています。私はここなさんの味方です」
「ありがとうございます」
ここなは、軽く笑顔を浮かべる。カウンセリングを終えたここなは、抗うつ薬を処方してもらった。
「綺麗な空だ……」
薬局を出たここなは、雲ひとつない空を見上げる。太陽の温もりが、ここなの全身に届く。
「私は、一人じゃない……」
ここなは、トーンやゆきね、カウンセラーなどの仲間のことを考え、つぶやいた。




