Stage9 アイデレラ・オーシャンのソロライブ(1)
「はぁ……」
通学途中、ここなはため息をついていた。今朝、悪い夢を見てしまったからだ。
その内容は、クラスメイトからいじめられるものだった。何度も「ここなが全部悪い」と言われ、怖くて何も言い返せなくなっていた。そんな恐怖を起きてからずっと感じている。
「みんなまた、私をいじめるようになってるんじゃないかな……」
そんなことを覚悟しながら、門をくぐり、教室に向かうのだった。
★
教室の扉をゆっくり開けると、音を立てないように素早く自分の席に向かう。机や椅子に傷はなく、少しほっとする。座ると、机に伏せた状態となる。
「ここな、具合でも悪いのか?」
とトーンが話しかける。ここなが顔を上げる。
「悪い夢を見ちゃった……みんなにいじめられた……」
「そっか……大丈夫だよここな。いじめられたとしても僕が守るから」
「トーン……」
トーンの頼もしさを、ここなははっきりと感じるのだった。
★
授業中、先生に当てられたクラスメイトを見て、ここなの胸が一瞬痛くなる。そのクラスメイトは、ここなをいじめていたグループのリーダーであったからだ。
今はここなをいじめることがなくなったとはいえ、ここなにとって嫌な人物であることに変わりはない。
「答えは2.7です」
「正解です」
女子生徒であるが、声が低い。そんな声が、ここなの嫌な記憶をよみがえらせる。ここなは、頭を抱えるような仕草を見せる。
★
休み時間になり、トーンがここなに話しかける。
「大丈夫か?」
「怖いよ……」
ここなが強くトーンに抱きつく。トーンはここなの背中を優しく撫でる。
「つらくなったらいつでも言っていいからな」
トーンの声が、ここなの痛む心に届き、不快感を緩和させていく。
「トーンがいてくれてよかった……」
「僕はここなを幸せにしたいから」
ここなは、しばらくの間トーンに慰めてもらった。
★
「ただいまー」
ここなは、いじめを受けることなく帰宅した。母親はまだ帰ってきていないようだ。ここなはすぐ自分の部屋に入る。
「最近ママと口をきいてないな……」
トーンの説得により、母親からの虐待は受けなくなった。それ以来、母親はここなに話しかけることがない。
「ママにも相談したいけど怖い……」
そう考えていると、母親からの虐待を受けた日々のことを思い出してしまう。特に幼少期は、母親からものをぶつけられたり、人格を否定することを言われたりするなど、激しかった。中学生になった頃、暴力の頻度は減ったが、ここなは毎日否定され続けてきていた。
それを思い出したここなは、再び恐怖が心の中に侵入していくのを感じた。
★
ここなは教室で、クラスメイトたちに囲まれていた。光ったたくさんの目が、ここなに集中する。
「ここながいること自体が間違っているんだよ」
「失敗しかできないやつ」
「ただの荷物同然だよ」
ここなに向かって、次々と罵詈雑言が襲い掛かる。ここなには、対抗できる武器など持っていない。
「……!」
ここなは、恐怖で声を出せないでいた。そのとき、誰かが背後からここなを蹴った。ここなは倒れて悶絶する。
「ここななんか生まれてこなきゃよかった!」
ここなを蹴ったのは、ここなの母親だった。ここなの心に、大きなひびが入る。
「……」
どうして、と心の中で何度も繰り返す。
「っ!」
ここなは、思いっきり飛び起きる。窓の外からは日が差し込んでいる。
「……!」
またあの夢を見てしまった、とここなは思った。そして涙を流し始める。落ち着くと、ここなは学校に向かう準備をした。




