霧の奥、記すもの
この記録が、誰かに読まれることがあるのかはわからない。
けれど、わたしは今、ここに綴っておこうと思う。
この星で起きた変化のすべてを、観測記録としてまとめるのは難しい。
多くは数値に表れず、説明もつかない。だからこれは、あくまで私的なものだ。
ひとりの人間が、この星の“気配”にふれたというだけの記録。
植物たちが、静かに変わり始めている。
それは突然ではなく、何かを受け取ったような――そう、何かに“共鳴した”ような、静かな反応だった。
最初は異常と思われたその成長も、いまではもう「自然」に見えてきた。
人が星に馴染んだのか、星が人を受け入れたのか……それすら、もうはっきりしない。
でも、確かに感じるのだ。
霧の奥で、誰かがわたしたちを見ていたこと。
言葉にならない想いが、この土地に、草に、空に、宿っていたこと。
それは、“彼女”と、わたしが呼んでいた存在だったのかもしれない。そうでないのかもしれない。
今は、名前よりも、その“感触”のほうが大切に思える。
わたしたちは、まだ何も理解していないのだと思う。
けれど、それでも——触れた。確かにふれたという感覚が残っている。
そしてそれが、この先に続いていくものの最初の一片になるのかもしれない。
この記録には、正確な時系列も、完全なデータもない。
けれど、こうして誰かが“記す”という行為そのものが、
この星にとっての「記憶」になるのなら、それでいいと今は思っている。
植物は語らない。けれど、何かを“残す”ことができる。
もし未来の誰かが、その葉にふれたとき、そこにわたしたちの想いがひと雫でも残っていたら——
それはもう十分すぎる贈り物だ。
霧は、今日も丘を覆っている。
けれどその奥には、確かに光がある。
わたしたちは、まだそのすべてを知らない。
けれど、星と人のあいだにある静かな気配は、これからもきっと、続いていく。
ここまで読んでいただいてありがとうございます
とても嬉しいです
このお話はここで終わりです
次はこのお話の設定で魔法がある学園物書いてみたいと思ってます




