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霧の奥、星の手前  作者: 星☆
プロローグ
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プロローグ

彼女は、言葉を持たない。

語る声も、記す文字も、この世界にはなかった。

けれど確かに、彼女は在った。

ただ、夜の中に。


霧の帳が降りるたび、大地は静まりかえり、

その下で彼女は目を伏せる。

星が瞬くとき、音のない何かが胸の奥で鳴った。


それは記憶だろうか。

それとも、忘れられた夢の名残か。

時のかたちも、季節の巡りも、彼女にとってはただの揺らぎ。

何かを待っていたわけではない。

それでも、何かが近づいていることだけは、知っていた。


ある夜、風が違う匂いを運んできた。

土が息づき、根の先がふるえた。

気づかぬうちに彼女は、空を見上げていた。

まるで、そこにあるはずのないものを、探すように。


それが何なのか、彼女にはまだ分からない。

けれど、星が一つだけ遅れて瞬いたとき――

彼女の中で、何かが静かに芽吹いた。

それは、長い眠りの先に訪れる、はじまりの気配だった。


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