第一話「赤ちゃんとしての日常」
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鳥の囀りが聞こえる…心地良い陽気にあおられて、僕は目を覚ます。
これまでにない程の幸福感に包まれながら、瞼を開くとそこには、知らない天井があった。
僕は困惑する……今までは、会社のデスクと睨めっこの状態で朝を迎えていたからだ。
だが、だんだんと思い出していく、どうしてここにいるのかを……
―――――――・・・数日後・・・―――――――
赤ちゃんの朝は早い
お日様が昇ったところで目を覚まし、一生懸命泣く。
何故泣くのかって?
それは、赤ちゃんは泣くのが仕事だからだ!
どうしたってお腹は空くし、肺を強くする為には沢山泣かなくてはならない。
だからこそ、沢山泣く。
赤ちゃんとして生まれた以上、大人としてのプライドなどは一切必要がないのだから。
僕が泣いていると、メイドのナタリーは襖を開け、ゆっくりと近づいてきて、おむつを替えてくれる。
一通りやる事を終えると、ナタリーはお母さんを呼びにいく。
そうして待つこと数分……まだ少し眠たそうな顔をしながら僕の方にによってくるのは、雪野むつき、僕のお母さんだ。
雪のような白い肌に、黒色の髪を靡かせているその姿は、まるで女神のような神々しさすら感じる程に綺麗だった。
僕のお母さんは美人さんだ、我ながら誇らしい。
そんなこんな考えているうちに、僕は差し出されたご飯にありつきつつ、お母さんの腕を掴む。
その腕は、もちもちとしていて…とても気持ちよく……睡眠欲……が……刺激されるもの………だった…………
お母さんという存在が僕を包み込んでくれるおかげで、僕はまたもや深い眠りについた。
目が覚めるとそこには夕焼けが差し込んでいた。
もう夕暮れ時のようだ。
少し目線を右にずらす。
するとそこにはお母さんが眠っていた。
お母さんは幸せそうに眠っている為、笑顔で寝顔を見守っていると、ナタリーが僕の部屋まで入ってきた。
「むつき様、お食事の準備が完了いたしました…おや、お眠りになっておられたのですか」
ナタリーは、そのままお母さんのことを揺すって起こすと、僕を連れてお父さんのところまで案内していく。
正直僕はお父さんが苦手だ…距離感がバグっているからだ……
僕が少しげんなりしていると、僕の気持ちを見透かしたように、お母さんが話しかけてくれた。
「お父さんは親バカだけど、ちゃんと良い人だから、嫌いにならないであげてね」
お母さんにそんなことを言われては、お父さんのことを嫌いにはなれない。
だけどお父さんの鬱陶しさを思い出すと、どうしても口を尖らせてしまう(まだそんな事はできないのだけれど)
こうして少しの会話?をした僕たちは、お父さんのいる部屋で、家族一緒に幸せな時間を過ごすのであった。
登場人物
お母さん:雪野睦月〈ゆきのむつき〉
メイド:ナタリー