プロローグ「限界社畜は転生する」
初投稿
何十時間……働き続けているだろうか………
今の時刻は深夜3時、この会社にはもう僕しか残っていない……
机の周りには数十本ものエナジードリンクが乱雑に置かれている。
お腹が空いた…しかし、お金がないので、我慢する。
これが僕の日常であり社会という名の牢獄。
この牢獄に閉じ込められた僕は、一生自由というものには辿り着けない……
「まずい……こんなこと考えてないで早く作業を進めないと………」
真っ暗なオフィスでそんなことを呟き、作業を進めようとした…が…その時………
グラっと視界が回転した、目の前のパソコンが90度に曲がったと思うと同時に、床に頭をぶつけ、僕は深い深い地の底に、意識を落とした。
こうして僕こと、高瀬儡人の人生に1枚の幕が落ちるのだった………
何日も寝たような感覚がする……
体が重いし、少し息苦しい……
それに、真っ暗で何もできない……
ぼんやりとした意識の中、事態は急速に進む。
んっなんだ⁉︎ 突然体が引っ張られた……
この事象がなんなのか考える間もなく…
僕は……深海のような場所から引き摺り出された。
そうして、僕は思い知ることになる。
転生をしたという、その事実に……
「生まれました!元気な男の子です!」
産まれた直後、僕の目の前にいる、メイドのような格好をした女の人が、開口一番そう言った。
僕の出産を手伝ったのだろうか。その額には少し、汗が滲んでいる。
また左に視線を寄せると、お母さんらしき人がまたもや、額に汗を滲ませながら微笑んでいる。
この状況はなんだ……考えるが一向に答えは見つからない………
少しでも情報を取ろうと、お母さんらしき人に視線を向けると、送り返してくれた。
僕は、人と見つめ合っているという事象に対して、なんとも言えない幸福感に包まれながら、しばらくお母さんらしき人と見つめ合ってていた。
そこから数秒たっただろうか、廊下を勢いよく走る音ともに、襖からお父さんらしき人が駆け足で寄ってきた。
そうして僕の側までくると、
「よしよーし、お父さんですよー」
と言いながら、笑顔で迫ってきた。絶対に抱き抱えて来る気だ……
僕は危険を感じたため、急いでここから離れようとした……が、生後間もない新生児にそんな芸当はできない為、僕は潔くその身を差し出す他なかった。僕は抵抗せず、お父さんにその身を預けようとした。だが、意外にもお父さんは、僕の柔肌に触れることはなかった。
「天音、とわが嫌がってますよ。距離感は考えてください。」
そう、僕を守ってくれたのはお母さんだったのだ。
少しムスッとしたような顔のお母さんは、僕が見ているのに気づくと、すぐに微笑んでくれる。
僕は次にお父さんを見る。
少しシュンとして、僕の側から少し離れたお父さんは、僕のことを見て、また微笑んでいる。
このお父さんは赤ちゃんが好きなんだな……と思っていると、お母さんが僕に話しかけてきた。
「とわ、お母さんはとわの味方。他の誰よりもあなたを守ってあげる。だから、今日は安心して眠りなさい。」
そう言われた直後、僕はスッと眠りに落ちた。
こうして僕の第二の人生は、幕を迎えるのだった。
登場人物
主人公:転生前 高瀬儡人〈たかせらいと〉
転生後 雪野とわ〈ゆきのとわ〉
お父さん:雪野天音〈ゆきのあまね〉