光と灯り
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新婚旅行が現実となり、私はとてもテンションが上がっている、二泊三日でリゾートを満喫するぞ。
〈葵〉さん割引券をありがとうございます、ストレスを溜められた時に、夫を少しだけなら叩いても一切文句は言いません。
海水浴をするための水着をデパートで買ったのだが、私のテンションは異常値だったんだろう、夫の勧める際どいビキニを購入してしまった。
私は「こんなの着られないよ」と怖じ気づいたのだが、夫の期待がこもった目に負けてしまったんだ、今着替えてものすごく後悔している。
透けてはいないけど、下着よりも布面積が小だよ、はみ出していないよね。
「若い時しか着られないよ」「〈美幸〉の色っぽい水着姿を見せてくれよ」と言った夫を、今まさに怨んでいる最中だ、夫の勧めに乗った私は大バカだ。
少しは泳げるけど浮き輪で体を隠しておこう、それなのに夫は私の胸やお尻を撫ぜ回してくる、ギラギラと照りつける健康的な太陽の下で、コイツは何を考えていやがるんだ。
日焼け止めのクリームを塗っている時も、ベタベタと触っていたでしょう、それで満足しなさいよ。
私が怒って水かけてやったら、キャッキャッと笑っている、何が孤独に強い人だ、お前は猿か、係長は時期尚早だったのでは。
これが自分の夫だと思うと、涙が出そうになるよ、もう外では触ってくるな。
夫は機嫌が悪くなった私を花火大会に誘ってきた、可愛い柄の浴衣を着せてもらい、私の機嫌はものの見事に良くなってしまう。
だって、打ち上げ花火を間近で見るなんて、生まれて初めての経験だもの、おまけに手を繋いでいるのは愛する夫だもん、しょうがないでしょう。
ひゅるりと上がった花火がドーンと弾け、大輪の菊の花や朝顔へ散っていく、枝垂れ柳が光りを放ちながら海へと落ちていく、スターマインの乱れ咲きはいつまでも記憶に残り続けるはず。
明るい花火からの帰りは、それはそれは暗い道だ。
だから抱きしめられて口づけをされても良いように、私は心の準備をしていたのに、何にもありはしない、ただホテルへ帰るだけだった。
はぁー、何なの。
コイツは灯りが無いとダメなヤツなの。
ホテルへ帰って部屋に入ると、間接照明だけがぼおっと灯っていた。
夫は私を力強く抱きしめて、口づけをしてくれた、待ってたとは言いたくない。
私は「もぉ」とやんわりとした拒絶か、遅いことの文句か、良く分からない言葉を甘く吐いたわ。
夫は私の浴衣の袂を割って、手を差し入れてくる、帯を解かれて、ちょっぴり焼けた素肌を露わにされた、焼けた肌と対比して真っ白に隠されていた部分をどうされるだろう。
私は浴衣を羽織ったまま「あん」と熱い息を吐き、この男が夫であることに喜びを感じるんだな。
だけど夫も私が妻であることに、喜びを感じてもらえるように、決して嘘はつかずより信じてもらえるように、真実を伝えよう。
「いつもちょっと早過ぎるよ。 今日は二回目だから我慢出来るでしょう」
「えぇー、そうだったのか。 が、頑張るよ。 ぜ、善処させていただきます」
ここからは、夫婦の秘め事のため、割愛させていただきます。
新婚旅行は楽しく終わり、私と夫は自宅へ帰るところです。
〈おばあちゃん〉のお土産に〈柔らかスルメ〉を買いましたし、配りやすいお饅頭を職場用に何箱も購入してあります。
自宅へと続く路地にある古ぼけた街灯は、LED照明へと交換されて、今は無機質な明るい光で私達を照らしてくれています。
寄りそって歩いているのですが、お土産を持っているせいなのか、夫は口づけをしてくれそうにないです、明る過ぎるせいかも知れません。
でも夫は係長となり、お土産を職場で配ると言うのですから、以前と比べればすごい進歩です。
私も変わったように、夫も変わっていくのですね。
私は「待って」と夫を呼び止め、少しだけ背伸びをしながら、そっと口づけをしました。
新しい街灯は、その光で私と夫の長い影を作り、その影は長く重なりあっています、その長さは明るい未来へと続いている、きっとそうです。
― 完 ―
読んで頂き、誠にありがとうございました。
この話はこれにて終わりとさせて頂きます。
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