四月一日
「……私立聖徳堂学院の教育理念は……」
「……将来的には生徒たちに……」
……
「生徒会は……」
……
「起きて!起きて!」
目を開けると、地味な顔が太一の視界をすっかり埋め尽くしていた。
太一は体を起こし、左右を見回した。入学式はすでに終わり、広い礼堂にはわずかに数人が残るだけだった。
片付けをしている生徒たちの他に、目の前にいる、巻き毛と少しばかりのそばかすが頬に散らばった、親切な人が太一を揺り起こしてくれたのだった。
「ああ、ありがとう。」太一は心から感謝を述べた。
校長の演説は、妖怪の叫び声よりも恐ろしく、一分と持たなかった。
「よくそんなに寝られたね!」彼は手を振り、気にしないでという仕草をした。
「君も一年生だよね?どこのクラスなの?僕は西山明。君の名前は?」
赤いネクタイを身に着けた生徒が、自分の胸にある名札を指差した。名札の上には「西山明」の三文字と、口に榊の葉を咥えた鳩の紋章が彼の身分を表していた。
「東雲太一、A組だ。」
「君もA組?どうしてクラスの方に行かなかったんだ?」
「遅刻したんだよ。今さら前に出て行くのは目立ちすぎるしさ。」そう言いながら、二人は礼堂を出て行った。
「陸上部新入部員募集中!走るのが好きな人はぜひ参加を!」
「読書や執筆が好きな生徒は文学部へ!部長の著書『青春物語』第一巻、絶賛発売中!」
「力が欲しいか?未来が見えるか?自分の運命を変えたいなら、麻雀部を見逃すな!魔法の世界へようこそ!」
「胸を張って、肘は力を入れすぎないで……」
「ドレミファソラシド〜」
礼堂を出た途端、さまざまな雑多な声が耳に飛び込んできた。
前方の校庭では、部活動の勧誘の声が、隣の音楽部の低音訓練の音を打ち消すほどだった。
「なあ、東雲君、ちょっと案内してくれない?僕は途中から編入してきたから、ここ全然知らなくてさ。」西山は親しげに太一の肘を軽く突いた。
「悪いけど、僕も転校生だよ。君が僕の最初の知り合いだ。」
「ええ〜!」この返答を聞いた瞬間、西山の顔はみるみるしぼんだ。
私立聖徳堂学院は、全国的に名高い私立学校だ。
この学校は、中等部と高等部が一体となった学校で、一般的な学校とは異なる。
その有名さは、高い教育水準だけではなく、厳しい入学基準にもある。
まず、推薦は基本条件だ。推薦状がなければ、入学試験への参加すらできない。
ここに通う生徒の大半は、大企業の後継者、官僚家庭の出身者、または何か特技を持つ者たちだ。つまり、生徒たちは自分の価値を示して初めて、選抜に参加できるのだ。
もちろん、成績が優秀な生徒であれば、学校側が自らオファーを出すこともある。
あるいは、満足のいく額を寄付し、生徒会の承認を得られれば、この学校に入学することができる。
そう、この学校では、生徒会が非常に大きな権力を持っている。
生徒会は、基本的な事務作業だけでなく、来年度の学校資金の使途を決定することにも関わっている。
つまり、生徒会は学校のCEOとして、学校の発展を左右する存在なのだ。
この特殊な運営形態こそが、生徒たちを魅了している。
誰もが、学生のうちにこんな人脈やリソースを手に入れたいと思うだろう。
寄付生の数をコントロールして次年度の活動資金を確保し、さらに学校の発展を決定する権利を得る。
ここから歴代の内閣総理大臣が輩出されたこともある。誰だって、次の総理大臣を夢見ないわけがない。
東雲太一は、期待などしていなかった。
自分がなぜ推薦状を手に入れたのか、あるいは誰がそれを送ってきたのか、まるで分からなかった。
入学試験すら受けていない。ただ、郵便受けに届いたのは面接の招待状だけだった。
面接を通過し、そして今、彼はここにいるのだった。
まだため息をついている西山を気にも留めず、太一は各部活の勧誘ブースを見渡しながら、高等部の校舎の入り口へと歩き始めた。
その時、不意に軽快な足音が聞こえ、次の瞬間、柔らかな体が太一の背中に密着した。
淡い香りを纏った小さな手が、太一の目を覆う。
背後からのその手は、身長差があったせいでつま先立ちして、やっと太一の視界を塞いだ。それがかえって、背中にさらに強く押し付けられる形になった。
「誰だと思う?」ふざけた声が背中越しに聞こえてきた。
太一は仕方なく、そして少し甘やかすような笑みを浮かべ、突然しゃがみ込むと、後ろの人物の足を抱えたまま、そのまま回転し始めた。
「キャッ!」
驚きの声を上げた彼女は、思わず太一にしがみつき、銀鈴のような笑い声が響き渡った。
しばらく遊んだ後、ようやく彼女を下ろした。
小さな顔は薄紅色に染まり、額にはほんの少し汗がにじんでいた。
素顔のままでもその美しさは損なわれず、制服姿が一層の青春を引き立てていた。
「お兄ちゃん、ずっと待ってたんだよ!」
彼女はわざと怒ったように唇を尖らせた。
「ごめん、ごめん。会議中に寝ちゃってさ。」
申し訳なさそうに太一は彼女の前髪をくしゃっと撫でた。
「やめてよ、もう!」
千織は太一を軽く叩こうとしたが、笑みをこらえられず、いたずらっぽい微笑を浮かべた。
一方、その場にいた西山は、突然の光景に完全に呆然としていた。
「No!!!」
突然の叫びに、二人は思わず動きを止めた。
「ど、どうしたの?」太一が問いかけた。
「お兄ちゃん、不良が学校に紛れ込んでるよ!」
千織は目を見開いて言った。
「俺は不良じゃない!」
何かに強く打ちのめされたように、西山は太一にぴたりと張り付き、叫んだ。
「君!君!君!君、さっき自分も転校生だって言ってたじゃないか!?」
「それに、なんでこんなにかわいい妹がいるんだよ!?」
太一は慌てて両手を挙げ、一方の手で妹の目を覆い、もう一方の手で自分の顔を守った。西山の言葉が、まるで口から吹き飛んでくる唾のように感じたのだ。
しばらくの間に西山はなんとか冷静さを取り戻し、ぐしゃぐしゃになった髪を掻きながら、自己紹介を始めた。
「僕は西山明!高校一年A組、君のお兄さんと同じクラスだよ!音楽とゲームが好きなんだ。妹さん、君は名前なんて言うの?」
「…よ…ろしく。」
千織は、まるで脅されているかのように、太一の後ろに隠れながら、小さな声で答えた。
「獅子堂千織です。」