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一日

東から指す日に僕は目を覚ました。さっきまで見ていた幸せはもう1つの世界僕ということに少し残念がりながら離してくれない布団を力ずくで剥いだ。少し憂鬱で解放をしてくれる学校へ向かう準備をしていく。いつも食べる8枚切りのトーストしイチゴジャムを塗ったパンとミルクも砂糖も入れないインスタントコーヒー。変わらない、全て不変でいてくれないか、そんな叶わない願いを思考しながら準備を済ましていく。いつも通りの制服を着て、いつも通りの時間に家を出る、そしていつも通りの道を歩いて、いつも通りの駅へ向かう。いつも通りの時間の電車に乗る。変わりやしない日々に飽き飽きしたという人がいるがそれは幸せということなのでは無いのだろうか。変わらない日常に満足して生きている。そしていつも通り駅で待ち合わせている彼女と学校へと向かっていく。通学路、徒歩15分、ただ彼女と歩く時だけ約20分かかってしまう。ただ僕らは遅刻したことは無い。たわいの無い会話を僕らはいつも通りする。話している時間はすぐに過ぎ去ってしまうことに有限というものの虚しさを感じてしまう。いつも通りくだらない話、いつも通りの温もりを感じて、いつも通りというものに感謝する。もうすぐ学校に着いてしまう。全てのものは有限である。永遠、無限、それはただの空虚な理想に過ぎない、その事実に目を伏せて使う。アレフゼロの無限に過ぎないものも使えない僕らは思考全て有限だったんだ。枠に囚われた思考、人間に無限の思考を与えたらどうなるのだろうか…。有限の思考の僕にはできなかった。だからこそ有限の中で幸せないつも通りの生活を願っている。噛み締めている。そんな考えをしている登校中、彼女の話は半分片耳から抜け落ちてしまった。クラスが違うため彼女とは途中で別れ、いつも通りの教室に入る。いつも通り一番乗りだ。HRが始まるまで僕はいつも通り勉強をする。

月曜日の時間割通りの教科担当の先生が授業をしに来る。すぎる時間、睡魔も襲ってくる、ただ問題を解く時は覚醒した状態になる。それを7回繰り返し1日が終わってく。すぎてく時間は虚しい、ただ開放感はいつも感じられる。そんな変わり映えしない一日の3分の2が終わった。放課後彼女と帰る約束をしていた。

帰路をたどっている時、彼女が近くにあるショッピングモールに寄りたいと言ってきたので快く承諾した。少しでも彼女との幸せな時間を過ごしたいただその一心だった。彼女と不意に手が触れ合った、その一瞬を逃すことなく僕は彼女の手を握った。そして僕と彼女はそのままお目当てのお店まで一緒に歩いていった。

そのお店で彼女は今日発売された彼女の好きなキャラクターのぬいぐるみを買っていた。僕にはお金を払わせてはくれなかった。

買い物も終わり、僕たちは帰路へと戻った。彼女はとても嬉しそうだった。その時手は離れていた。少し浮かれはしゃいでいる彼女を見て不意にかわいいと言葉が頭をよぎった。しかしその言葉は恥ずかしさからか喉より上に行くことはなかった。交差点の信号が青になる。無邪気な彼女は少し小走りで渡り始めた。刹那、彼女の体は宙を舞った。彼女の下を過ぎ去る何かを見た。気付かなかった。音が無かった。鈍い音だけが聞こえた。浮遊している彼女の顔は呆然、唖然としていた。やがて彼女の体は元いた場所へ降りてきた。左手に持っていた袋に入っていたはずのぬいぐるみは頭から綿を出し、真っ白のはずの布が赤と茶色で覆われていた。赤はよりぬいぐるみを侵食していった。悲鳴を上げる余裕はなかった。ただ呆然と立ち尽くすしかできなかった。誰かが呼んだであろう救急車とパトカーが来た。何も聞こえない。何も感じない。何も分からない。ただ背筋が凍るような、脅されているような、全身を何か突きつけられている感覚だ。そこからの記憶は全て抜け落ち、気付いたら僕は病院の待合室でぬいぐるみをだき抱えながら座っていた。ぬいぐるみは事故直後より酷い状態に見えた。外は寒く、暗く、予報にない雨が降っていた。彼女は常備している折り畳み傘を持っているだろうか。

しばらくして僕は家へ帰された。びしょ濡れになってしまったが、全てがどうでもよかった。何もする気が起きず、その日に終わりを告げるため、僕はもう1つの世界へと身を委ねた。

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