神隠し4 夕方の公園
子供が集団で遊んでいる。
鬼ごっこ?
かくれ鬼?
まあ、そんな遊びだろう。
「いーち、にーい、さーん、しー、ごー、ろーく……じゃあ、行くよー!」
鬼役になった子が、数を数え終わると逃げている子らに向かって走っていく。
あ、こりゃ鬼ごっこか。
「つーかまえた!***子ちゃん、鬼だよー、僕といっしょに皆を捕まえるんだー!」
手をつないだ二人は、キャッキャキャッキャ言いながらも、気のあった風な走りで次々と鬼を増やしていく。
数十分後、残りは三人になっていた。
「囲んでー、一人づつ囲めば大丈夫だよー」
一人、また一人と捕まっていく。
あと一人になったが、その一人はすばしこく、なかなか捕まえられない。
そのうち……
フニャー!
とかいう音で、役所の防災無線設備から、夕方のお知らせと、もう家に帰りましょうという音声が流れる。
かーえろ、帰ろ、という子供らの声で、
さよならー、また明日ね―……
という声と共に、子供らは家に帰っていく。
その場に、たった一人の子供を残して……
「ちぇっ、みーんな帰っちまった。あーあ、これからまだまだ、母さんも父さんも帰ってこないんだよなぁ……どうしよう?家に帰って、独りでゲームでもやるかなぁ……」
そこで、その子に声をかける。
「帰ったほうが良いよ。この頃、帰り道に神隠しに会うって事件が続いてるよ」
びくっとした子供。
しかし、大人に声をかけられただけだと気づき、精一杯の生意気さを見せる。
「おじさん、俺なら大丈夫だ!いつも、暗くなるまで、ここか家で母さんと父さんの帰りを待ってるんだ!神隠し?神様が人間をさらうって?うっそだぁ!」
「注意はしたよ。それでも怖くないって言うなら、そこにある神社へ行ってみるか?あそこには、神隠しの伝説を書いた本が有るはずだ」
ちょっと怖くなったか?
それでも生意気さが勝ったようで……
「うん!向こうに有る神社だろ?あんな小さな神社なんて怖くもなんともなーいよ!」
「それじゃ、行ってみるか?怖くなったら、手をつないでも良いよ。怖いなら、ね」
「俺を子供扱いするな!怖いことなんか、あるかい!」
子供と手をつなぐ。
さて、最後に言っておかないと……
「これで、神隠しの準備がな……」
「あ、Y*君!今日は早めにパパが帰って……え?」
公園を出るところで、夫婦の友人、マンションの隣の部屋住人の奥様が、子供を見つけて声をかける。
神社へ行こうとしていたので、近づこうと角を曲がると、
「あれ?Y*君と手をつないでたのって、旦那さんじゃないような……だいたい、二人はどこ行ったの?!」
二時間後、夫婦同時にマンションへ帰ってくると、子供の姿がない。
友人であるお隣へ?
と思ってお隣を訪ねると……
「暗くなる前に、Y*君と大人の人が手をつないで神社へ行こうとしてたのよ。声をかけたんだけど、あたしが角曲がったときには二人ともいなくなってて……」
すぐさま警察へ連絡し、誘拐も考えられるということで大捜索も行われたが……
二人の姿は、どこにも見つからなかったという。